名大病院の各種心臓手術

心臓病以外の病気(併存疾患)をお持ちの方で、心臓血管の手術治療を必要とされた患者さんは、各臓器すべての分野において最先端の医療で対応できる、当院での治療を特にお勧めします。診療科横断的対応が可能です。

名古屋大学附属病院での心臓手術トピックス

ACHD 成人先天性心疾患の外来について


先天性心疾患の手術ができるようになったのは今から約70年前ですが、治療成績は飛躍的に向上してきました。国内で、すでに成人になった先天性心疾患の人は50万人以上いると言われています。

しかし長い年月が経ってから、以前受けた手術の影響や、元々の病気の悪化で、何らかの症状や問題が出てくることがあります。何らかの症状が出て悪くなる前の段階の適切なタイミングで適切な治療を受けることが、長く元気でいられるためには重要です。
当院では、特に成人先天性心疾患(ACHD:Adult congenital heart disease)の方の診断、治療、手術に取り組んでいます

以下の  成人先天性心疾患(ACHD)の外来を行っております

心臓外科
六鹿 雅登 月曜日
櫻井一  水曜日

循環器内科
森本 竜太 木曜日
古澤 健司 月曜日
田中 哲人 金曜日

原則的にはかかりつけ医さまからの紹介状を頂いた上、病診連携を通じて受診されてください

 

名大病院のMICS

Robot支援下手術のすすめ
低侵襲心臓手術(完全内視鏡下、ロボット支援下)

 

 

 

ロボット手術 術野風景

 

 

ダ・ヴィンチ手術とは?
da Vinci(ダ・ヴィンチ)手術支援ロボットは、1990年代にアメリカで開発され、2002年に僧帽弁手術に対するFDAの承認(米国)を得ています。2004 年には冠動脈バイパス手術でのFDAの承認(米国)を得ています。日本では2015年に心臓外科領域で薬事承認を得て、2018年に弁形成術に対して保険収載され限られた施設のみで手術が可能となっています。
Da Vinciはコンソールで操作したことをロボットアームがリアルタイムに実行するという遠隔操作システムになっています。合計4本のロボットアームがあり、カメラ1本、鉗子3本の構成になっています。カメラには3D内視鏡が取り付けられ、その視野は非常に鮮明であり、3本の鉗子をたくみに操ることで、つまむ、切る、かき出す、縫合するなど、多彩な用途に応じて付け替えられます。
ロボットアームの可動域は人間の手の動きを完全に凌駕しており、鮮やかな手術が可能になります。
1.適応疾患
大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症→大動脈弁置換術
僧帽弁狭窄症→僧帽弁置換術
僧帽弁閉鎖不全症→僧帽弁形成術
三尖弁閉鎖不全症→三尖弁形成術、三尖弁置換術
心房中隔欠損・心室中隔欠損などの先天性心疾患→心房中隔閉鎖術、心室中隔閉鎖術
一部の心臓腫瘍、心房細動・心房粗動などの心房性不整脈
が基本的な適応疾患となります。

現在、弁形成術(僧帽弁、三尖弁)はロボット支援下手術の適応であり、
施設限定で弁置換術(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁)も適応となります。

基本的には大動脈手術や冠動脈バイパス術は適応外となります(冠動脈バイパス術の一部は左小切開で施行することが可能、MICS-CABGの項参照)。

術前検査において、上行大動脈の拡大や石灰化、末梢動静脈の形態異常、肺疾患などを有する場合は、低侵襲手術が不適応となることもあります。

心臓再手術に関しては症例に応じて、低侵襲手術も可能となります。

2.アプローチ
多くの心臓手術は、胸骨正中切開(図1)が心臓への標準的なアプローチですが、本手術では、胸骨を切らずに、右胸部の肋骨の間からアプローチします(図2)。右腋窩(わき)の下に、約3~4cmの皮膚切開を置きます。その他に1cm程度の創を数か所使用し、内視鏡カメラもしくは手術支援ロボットを用いて手術を行います。
鼠径部(足の付け根)から動脈・静脈のカニューレ(人工心肺につなげる管)を挿入します。鼠径部の創部は、2~3cmの皮膚切開で施行する施設もありますが、当施設は穿刺による挿入方法を採用しており、この部位の創部も術後まったく目立たなくなる利点があります。血管性状によっては鎖骨下(肩と首の間辺り)からカニューレを挿入することもあります。
皮膚切開の大きさは、体形などによって変わります。また小切開で手術が安全に進行できない場合は創を大きくすることがあります。

 


(図1、胸骨正中切開)


(図2、低侵襲心臓手術における右小切開)

正中からは創部はめだちません!

3.麻酔
この手術では、左右の肺を個別に換気できる特殊なチューブを使用します。右小切開から心臓が良く見えるようにするため、手術中の一部で左肺のみの換気をおこないます。肺疾患がない方は、片肺でも十分な換気ができます。片肺換気が困難と判断された方には、通常の正中切開アプローチを行います。麻酔薬や人工呼吸器は通常の心臓手術と同じものを使用します。


4.心臓内操作
通常手術と同様の操作をおこないます。低侵襲手術という理由で、必要な操作を省いたりすることはありません。手術器具やデバイス(心臓手術用の医療機器)は低侵襲手術用のものを使用します。手術支援ロボットは、アームの可動域が540度あり、人間の手以上に繊細な作業が可能となります。


(手術支援ロボット、Da Vinci Surgical System)

5.入院から退院までの経過

ロボット心臓手術の経過

約2日前

手術当日

1-2日後 4-5日後 5-6日後 7日以降
入院IC

手術、ICU入室

ICU退室 手術後検査 シャワー 退院

 

胸骨正中切開の経過

約2日前 手術当日 2-4日後

7日後

7-10日後

10-14日以降

入院、
手術説明
手術、ICU入室 ICU退室 シャワー 手術後検査 退院

 

 

低侵襲心臓手術では、基本的に手術後7日での退院を目標としています。経過や体力次第では手術後7日以前の退院も可能です。また、骨を切らない手術となるため、退院後の
労作制限はありません。

(仕事の復帰もかなり早くできます。)

胸骨正中切開は、胸骨を切ってのアプローチとなるため、一般的には術後2カ月間は重いものを持つなどの胸骨に負担のかかる労作を控える必要があります。


6.利点・欠点
低侵襲心臓手術の利点
・創が目立ちません。
・創部の痛みが軽減されます。
・胸骨が感染する恐れがありません。
・術後の回復が早く、早期退院・早期社会復帰が可能です。




低侵襲心臓手術の欠点
・病変によっては手術難易度が高く、手術時間が長くなることがあります。
・鼠径部からのカニューレ挿入による動脈・静脈の損傷が起こる可能性があります。
・片肺換気により、気管損傷・肺水腫などの合併症が起こる可能性があります。



-------------------------------------------------------------------------------------------------------
低侵襲心臓手術、通常の胸骨正中切開、それぞれに利点・欠点があります。我々はあくまで最適と思われる術式を提案いたしますが、それは必ずしも絶対ではなく、最終的な希望は患者さま御本人にしていただく必要があります。しかしながら、適応ではない場合もございます。
ご不明点な点がございましたら、いつでもお問い合わせください。

六鹿雅登心臓外科教授 ご挨拶

 

ご挨拶

2022年11月1日をもちまして名古屋大学大学院医学系研究科病態外科学講座心臓外科学の教授を拝命しました六鹿雅登(むつがまさと)と申します。ここに謹んで挨拶を申し上げます。
私は、平成8年(1996年)に名古屋大学医学部を卒業し、岐阜県大垣市民病院で初期研修を行いました。翌年の平成9年(1997年)に名古屋大学心臓外科(故村瀬充也教授)に入局しました。外科系研修の後に、平成10年から心臓外科として玉木修治部長のご指導のもと臨床の研鑽を積むことができました。小児の複雑心奇形および成人の弁膜症、冠動脈、大血管などたくさんの症例を経験でき、日々手術そしてその後の術後重症管理にあけくれていたことを思い出します。現在の働き方改革では問題となるような働きかたではありましたが、これぞ“心臓外科医”の生活だと思っていたので、全く苦ではありませんでした。
平成18年(2006年)4月に、名古屋大学大学院医学研究科心臓外科博士課程(上田裕一教授:当時)に入学し、半年間の社会人大学院生の後に、10年半もの間、お世話になった大垣の地を離れ、名古屋大学心臓外科医員として帰局しました。大学院の研究テーマは、血管吻合後の内膜肥厚防止であり、免疫抑制剤で有名なタクロリムスを使用し、それを綿状(エレクトロスピニング法にて)にし、経時的に薬剤溶出させ、その効果を動物実験で実証し、国際学会で発表することができました。その研究で、上田裕一教授(当時)、成田裕司講師、緒方藍花さんのご指導のもと博士号を取得することができました。
平成21年(2009年)7月、上田裕一教授(当時)のはからいでカナダアルバータ大学小児心臓外科Ivan Rebeyka教授のもとクリニカルフェローとして臨床留学する機会を得ました。毎日のように重症な先天性心疾患の手術を2−3例非常に早い手術時間で終え、術後は小児集中治療専門医が、病棟では小児循環器科医が管理する一連の合理的なシステムを学ぶことができ非常に有意義な臨床留学でありました。その翌年からは、心臓(肺)移植・補助人工心臓部門クリニカルフェローとして、成人および小児の心臓および肺移植のドナー採取、移植手術、植込型補助人工心臓手術を多数経験できました。カナダにいながら、米国にもドナー採取に行く機会もたくさんあり、システムの違い、米国―カナダ間の移植の取り決めなどを学ぶことができました。1週間で最大8例の移植(心臓、肺移植)も経験でき、またそのような多数の移植手術が行われても動じない麻酔科、集中治療体制に感嘆していました。この2年の臨床留学で非常に多くのことを学ぶ機会を得ることができました。
平成23年(2011年)帰国後、名古屋大学心臓外科学教室で上田裕一教授(当時)、碓氷章彦准教授(前教授)のご指導のもと主に成人の心臓疾患、複雑な大動脈疾患で臨床の研鑽を積むことができ、循環器内科の室原豊明教授、平敷安希博先生、奥村貴裕病院講師、精神科尾崎紀夫前教授、木村宏之先生、麻酔科、集中治療室らの先生達の協力を得ることができ、看護師、臨床工学技師、リハビリテーション、栄養士も加わり、重症心不全多職種チームの設立および運営、遠心ポンプを使用した長期体外式補助人工心臓管理およぶ離脱、その経験をもとに植込型補助人工心臓施設認定(平成24年:2012年)を取得できました。心臓移植申請後、植込型補助人工心臓症例も順調に増加し、東海地区初の心臓移植施設認定(平成28年:2016年)に一翼を担うことができ、翌年の東海地区初の心臓移植症例の手術にも携わることができました。心臓移植症例も順調に伸び、2022年に11例に到達しております。
その他に重点的に取り組んできたことは、循環器内科肺高血圧先端医療学寄付講座近藤隆久教授(当時)、足立史郎先生、小児科加藤太一准教授らとともに成人先天性心疾患の症例検討および手術を行ってきました。先天性心疾患手術も再開に向けて、碓氷前教授、病院の強いサポートのおかげで病院教授にJHCO中京病院の櫻井 一先生を迎えることとなり数年後には充実すると思われます。難易度の高い胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤の紹介も増加し、血管外科と共同で手術戦略を協議しております。
弁膜症に至っては、2018年(平成30年)より胸腔鏡下弁形成術(置換術)の保険召喚に伴い、右小切開3D内視鏡補助低侵襲手術(MICS)による僧帽弁形成術を開始し、徐々に症例数も増加し、大動脈弁手術、三尖弁手術、不整脈手術(Maze手術)、心房中隔欠損閉鎖術にも手術適応を拡大しています。手術後の回復が非常に早く、患者さんの社会復帰も早い術式であると考えています。
2023年にはロボット支援下心臓手術(da Vinci手術)の弁形成術を開始予定であります。

名古屋大学心臓外科は先天性心疾患を開始することで心臓大血管全般の診療を行うことができる全国でも数少ない病院となります。大動脈弁においてはカテーテル弁置換、僧帽弁逆流制御をクリップで行いMitraClipによる繊細な血管内治療も行っており、Dynamicな大動脈手術、複雑な心疾患、再手術、重症心不全治療などの侵襲度の高い手術など幅広い領域の手術治療および、またその全身管理を学ぶことができる大変魅力的でExcitingな診療科です。
名古屋大学心臓外科教室は関連病院での症例数もあわせると、全国有数の症例数と診療の質および人材を有していると自負しております。今後も最先端の医療、研究、教育を実践し、将来を担う一流の心臓外科医の育成に励んでいく所存です。
 皆様のご期待、信頼に応えられるよう、魅力ある講座を目指して鋭意努力して参ります。今後とも皆様にはご指導、ご鞭撻賜りますようよろしくお願い申し上げます。

略歴
1996年3月 名古屋大学医学部卒業
1996年5月 大垣市民病院 研修医
1998年4月 大垣市民病院 胸部外科 医員
2006年4月 大垣市民病院 胸部外科 医長
2006年10月 名古屋大学医学部附属病院 心臓外科 医員
2009年3月 名古屋大学大学院病態外科学心臓外科 博士号
2009年7月 カナダアルバータ大学小児心臓外科クリニカルフェロー
2010年7月 カナダアルバータ大学心臓移植・肺移植・補助人工心臓部門クリニカルフェロー
2011年7月 名古屋大学医学部附属病院 心臓外科 特任助教
2014年4月 名古屋大学医学部附属病院心臓外科 病院講師
2016年11月 名古屋大学医学部重症心不全治療センター副センター長 病院講師
2018年10月 名古屋大学心臓外科講師
2020年1月 名古屋大学心臓外科准教授
    名古屋大学医学部重症心不全治療センター副センター長(兼務)
2022年4月 名古屋大学心臓外科准教授
名古屋大学医学部重症心不全治療センターセンター長(兼務)
2022年11月 名古屋大学心臓外科教授

 

 

 

 

 

 

閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の手術

1.閉塞性肥大型心筋症とは
肥大型心筋症は心臓の筋肉が不適切に肥大する疾患であり、その中でも特に左室流出路(心臓からの血流の出口部)に狭窄が存在するもの(図1)を閉塞性肥大型心筋症と言います。閉塞性肥大型心筋症の症状には、胸痛・呼吸困難・動悸といった胸部症状と立ちくらみや失神といった脳症状があります。

 


2.治療法
治療法は薬物療法と非薬物治療に大別でき、薬物治療のみで改善されない場合に非薬物治療を検討します。薬物治療は姑息的治療であり、症状を改善する場合もありますが、根本治療とはなりません。
非薬物療法には外科的中隔切除術、経皮的中隔心筋焼灼(PTSMA;カテーテル治療) があります。これら非薬物療法は左室流出路狭窄の原因となっている肥大心筋を縮小させることのできる治療です。外科的中隔切除術は合併する心臓の構造異常を同時に治療でき、治療経験が豊富な施設では,90%以上の症例で左室流出路閉塞が解除され,再発はほとんどみられないとされ1)、外科手術を受けることができる全身状態であれば外科的な中隔心筋切除術が第一選択となります。一方で、PTSMAは,肥大心筋の栄養血管である冠動脈からエタノールを注入し,肥大心筋を菲薄化させる治療です。PTSMAが再度必要となる割合は 5-15%と言われていますが1),低侵襲であるというメリットが挙げられます。
中隔心筋切除術か,PTSMA どちらを行うかの選択は,年齢や病態を総合的に加味し、肥大型心筋症の治療に精通した循環器内科医,心臓外科医, 他の多職種からなるチームにより議論し、ご本人やご家族と相談の上決定します。

 


3. 外科的中隔心筋切除術、当院での手術の特徴
 外科的治療は開胸下で肥大心筋を直接切除することで(図2)左室内閉塞を解除する方法で、確実な効果が期待できる治療です。
切除する心筋の近くを刺激電導路(心臓を収縮させる電気刺激の通り道)が走行しているので、完全房室ブロックといった不整脈が出現し術後ペースメーカー治療が必要となる場合があり、高度な技術と経験を要する治療法です。そのため、ガイドライン上も10例以上の治療経験のある術者により施行することを推奨しています。
当院では2000年か50例以上の経験があり、流出路狭窄の指標である左室流出路圧較差の改善を認めています(図3)。

当院では安全で適切な手術を目指す為、術中エコーを使用したNeedle stick法による心筋切除法(図4)を考案し施行しています。

 


また、閉塞性肥大型心筋症ではその多くで左室流出路狭窄に伴って、流出路に隣り合う僧帽弁が引き込まれ(僧帽弁収縮期前方運動:SAM 図5)僧帽弁逆流症を呈する為、当院では僧帽弁前尖に糸をかけ積極的にSAMを防止するfloating stich法(図6)を施行することで良好な術後成績を収めています。




(参考文献)
1)日本循環器学会 心筋症診療ガイドライン (2018年改訂版)
2)Masato Mutsuga, MD, PhD, Yuji Narita, MD, PhD, and Akihiko Usui, MD, PhD
A Floating Stitch on the Anterior Mitral Leaflet Can Eliminate Systolic Anterior Motion in Hypertrophic Obstructive Cardiomyopathy. Semin Thoracic Surg 32:266–268
3)Akihiko Usui, MD, Yoshimori Araki, MD, Hideki Oshima, MD, and Yuichi Ueda, MD
A Needle Stick Technique for Septal Myectomy for Hypertrophic Obstructive Cardiomyopathy. Ann Thorac Surg 2013;95:726–8

 

文責 碓氷礼奈

経静脈的リード抜去術


1. 経静脈的リード抜去術とは
ペースメーカーなどの植込型心臓電気デバイス(CIEDs)による治療中に、細菌感染や余剰リードの存在、リード留置静脈の閉塞など様々な理由でリードを取り除かなければならない事象が発生します。一度体内に埋め込まれたリードは、血管内・心臓内で癒着が起こり、留置後1年程度であれば牽引することで抜去できますが、それ以上の期間になると単純には抜けず、留置期間が長くなればなるほど癒着は強固になり抜去が困難になります。従って、こういった場合、十数年ほど前までは開胸心臓手術を行わないと抜けませんでしたが、最近では様々なデバイスを用いて、経静脈的に鎖骨下の本体植込み部位からのアプローチで、開胸心臓手術を行うことなく低侵襲に抜去できるようになってきました。

2. その適応
この治療の判断基準(手術適応)は日本循環器学会・日本不整脈心電学会合同ガイドライン1に従って適応を判断しています。具体的には、菌血症や敗血症を含めたすべての植込型心臓電気デバイス(CIEDs)関連感染症はその適応になります。リードによる留置静脈のトラブルや、リードによる疼痛、留置リードあるいは残存リードによる様々な不具合も抜去の適応になります。本邦では感染に起因することが多いですが、最近では、治療過程で不要になったリードや無機能リードの抜去等リードマネージメントを考慮した経静脈的リード抜去術がその利益とリスクをよく勘案して施行されています。

3. 手術の実際
 ほとんどの症例は全身麻酔で行なっています。局所麻酔で行うこともありますが、癒着の程度が軽いと判断できる、リスクの低い症例に限定しています。パワードシースと言われるエキシマレーザーシース(図1)、回転式ダイレーターシース(図2)を用いて、リード周囲に取り巻く血管内、心臓内の癒着を剥離し、リードを体外に抜去します。また、足の付根(大腿静脈)などから各種スネアカテーテルを(図3)用いてリードを捉えて牽引する抜去法などの血管内操作を行うこともあります。これらの操作はすべてX線透視下に行われます。経静脈的リード抜去術は様々な血管内カテーテル等の操作技術に習熟する必要があります。剥離操作によって血管や心臓を損傷した場合、生命に関わる合併症を発症する可能性のある手術です。
 リード抜去後は必要に応じて再度ペースメーカー等の植込みを行います。心臓再同期療法など、循環器内科と連携してハートチームで治療を行います。

4. 実施施設について
この手技は上述のように技術的難易度が高く、十分な経験がないと手術死亡率が高くなることがわかっているため、特にパワードシースを用いた経静脈的リード抜去術は、日本不整脈心電学会より厳格な施設要件及び、所定の研修を修了するなど医師にも実施要件が設定されており、その要件を満たさないと手術を行うことはできません。
当院では2011年から東海地区では他施設に先駆けて上記のパワードシースを含めた様々なデバイスを用いた経静脈的リード抜去術を行ってきました。当科の治療成績は、海外の報告と遜色ない高い抜去成功率と低い合併症発症率で行なってきており、現在までに大きな出血性合併症の発症や手術死亡例はありません(表1)。今では多くの病院で同様の手術は行われていますが、ほとんどの施設では循環器内科が主導した治療がなされています。しかし、緊急時の対応や開胸手術が必要になることがあることを考えると、一貫した治療が行える我々のような心臓外科主導でこの手術を行うことの方が望ましいと考えています。
全国のリード抜去可能な施設に関しては下記URLをご参照ください。
(https://procomu.jp/leadmanagement/lead_bakkyo.html)

参考文献
1. 日本循環器学会ガイドラインシリーズ 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)第2章植込み型心臓電気デバイス (CIED) 6. 経皮的リード抜去術 p49-50

エキシマレーザーシース; グライドライト: フィリップス社

回転式第レーターシース; エボリューションRL: クック社

 

.
当院の治療成績と欧米の治療成績の比較

  当院 米国(LExlCon研究) 欧州(ERECTRa研究)
臨床的成功率 97.5% 97.7% 96.7%
主要合併症発症率 1.2% 1.4% 1.7%
手術死亡率 0% 0.5% 0.5%

文責成田裕司



経静脈リード抜去について 診療のお問合せは 心臓外科 成田裕司まで(木曜日外来)

慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する肺動脈血栓内膜摘除術

1. 病気について
 慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、肺動脈に器質化血栓による閉塞や狭窄性病変が形成されて、肺高血圧になる病気です。本症の原因については不明な点が多いのですが、下肢や骨盤内の深部静脈に形成された血栓が反復性に遊離して、肺動脈内で溶解しないで陳旧化することが主な原因と考えられています。

 本症における肺血栓は、急性期にみられる柔らかな赤色血栓と違い、淡白色で肺動脈壁に固く付着し器質化した血栓です。慢性血栓塞栓性肺高血圧症では、このような器質化血栓のために肺血管床(酸素と二酸化炭素を交換できる面積)が著しく減少し、肺動脈平均圧が25mmHg以上となる肺高血圧、右心室の肥大・拡張、右心不全をきたします。

2. 症状・診断
慢性血栓塞栓性肺高血圧症では、労作時の息切れ、疲れ易さが主な症状であり、また胸痛、咳、失神なども見られ、特に肺出血や肺梗塞を合併すると血痰や発熱を来すこともあります。肺高血圧の合併により右心不全症状をきたすと、お腹や下肢のむくみ、体重増加などが見られます。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症の診断には、肺動脈造影検査、肺換気血流シンチグラフィなどの専門的な複数の検査が必要であり、名古屋大学では、循環器内科肺高血圧治療グループとともに精査・治療方針の検討を進めます。

3. 治療
 慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、治療困難な指定難病とされていますが、肺動脈中枢側に病変を認める場合は、第一選択として手術:肺動脈血栓内膜摘除術が推奨されます。一方、病変が肺動脈の細い枝に限局している場合は、バルーンによるカテーテル治療(BPA)を選択しますが、内科的治療では肺動脈血栓内膜摘除術のような根治は難しい現状です。

肺動脈血栓内膜摘除術は、器質化した血栓を肺動脈内膜とともに剥離し、摘除する手術です。手術によって、自覚症状や肺血流を改善する効果は非常に大きく、その後の日常生活改善が期待できます。患者さんそれぞれの体力や併存疾患、病変の形状などにより、手術の効果や危険性等を検討の上、手術適応を判断します。
 
・肺動脈血栓内膜摘除術の手術について
全身麻酔下に、胸の正中で開創し、自分の心臓と肺を代行する人工心肺装置を装着して手術を行います。肺動脈内の無血視野を得るために、人工心肺で体温を下げ低体温間欠的循環停止法を併用します。この循環停止中に肺動脈を切開し、肺動脈内の血栓を区域枝から亜区域枝にかけて、内膜ごと器質化血栓を剥離し摘除します。開通した肺動脈の枝には、肺循環再開後すぐに直接血流が流入し、肺動脈における酸素交換可能な面積の増大が得られます。心臓と肺の血流バランスを調整しながら人工心肺の機械を外し、胸の創を縫合して終了します。

治療経過の目安として、術前は2週間ほど前に入院し、術直前の検査や薬剤調整を行います。手術後は、数日間集中治療室で加療し、一般病棟に移動後3-4週間積極的にリハビリ等を行いつつ、術後のエコー検査やカテーテル検査で改善効果を判定します。
術後は、多くの方において、酸素療法や肺高血圧治療薬からの離脱が可能となり、積極的な日常生活を送って頂けるようになっています。

国内でも限られた施設で施行可能な手術ですので、治療を必要とされる方は当科まで御連絡ください。

・肺動脈造影検査:【術前】矢印:主な狭窄や閉塞病変部位

 

 

 

 


【術後】矢印部分の血流改善を認める

 

 

摘出した肺動脈血栓内膜

文責 寺澤幸枝 (診療のお問合せは寺澤まで)

sutureless AVR

縫合結紮が少ない 外科的大動脈弁置換術 sutureless AVR

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)用生体弁の技術とこれまで使用されてきた生体弁技術の融合により誕生したINTUITY Elite(エドワーズライフサイエンス株式会社)の施設認定を受けており、解剖学的に条件を満たしている患者様に対してはより低侵襲に大動脈弁置換が施行できるようになりました。

提供:エドワーズライフサイエンス(株)

名大病院での僧帽弁手術

僧帽弁手術
僧帽弁形成術は僧帽弁置換術と比較して弁下の構造を保てることなどから術後の合併症発生率を軽減でき左室機能も維持されると考えられています。当科では形成術を第一選択とし、形成が困難な場合のみ僧帽弁置換術を選択しています。
形成の手技に関しては余剰弁尖を切除し再縫合を行う方法と、人工腱索を再建する方法が主流でありますが、当科では「respect rather than resect」のコンセプトをもとに、人工腱索再建の方法を積極的に施行しています。弁輪拡大予防目的にほぼ全例に人工弁輪を使用しています。
日本循環器学会から弁膜症治療のガイドラインが発行されており、ガイドラインに基づいた治療を提供しています。
http://j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf

 

文責 柚原 悟史

心臓移植

心臓移植は、薬物療法(ACE阻害薬・β遮断薬など)・非薬物療法(手術治療・心臓再同期療法など)の治療にもかかわらず、重症の末期心不全状態の方が対象となります。心臓移植は、心臓移植を受ける患者様(レシピエント)に対し、脳死状態の臓器提供者(ドナー)から提供された心臓を移植する手術です。
日本では特定の実施施設でのみ心臓移植は行われており、2021年4月時点で日本には計11施設の心臓移植実施施設があります。当院は、2016年12月に東海北陸地区で唯一の心臓移植実施施設として認められ、以後心臓移植手術を行っております。
心臓移植の手技に関しては、下記のリンク
https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/surgery/5_3_syujutu_sinzou_sinzouisyoku/

現在日本では、心臓移植を希望される患者様(レシピエント)に対し、ドナーの方が少ないために、心臓移植を受けるために5年以上待機が必要になることが多いです。その間、心不全の症状を改善し、ご自宅からの就労・就学を実現するために、植込み型補助人工心臓を装着していただくことが通常の治療の流れになっています。

 

植込み型補助人工心臓を装着したうえで、適合するドナーが見つかった際に、心臓移植手術を受けていただいております。心臓移植後は、植込み型補助人工心臓の管理は必要なくなりますが、移植したドナーの心臓を患者様(レシピエント)の免疫細胞が攻撃してしまう拒絶反応を予防するために、免疫抑制薬の服用が必要です。また、拒絶反応の有無を確認するために、定期的にカテーテルで心筋生検の検査を受けていただく必要があります。

当院では心臓移植・植込型左室補助人工心臓を行うための最新の設備を整え、心臓外科・循環器内科・集中治療医をはじめとした医師や移植コーディネーター・看護師・薬剤師・理学療法士・管理栄養士などのコメディカルスタッフによるチーム医療によって高い医療レベルを維持するだけでなく、患者さん本人や家族と寄り添うことを大切に治療にあってっています。

心臓移植手術を受けるためには、心不全が重症であるだけでなく、癌や重度の肝疾患・腎疾患など他の病気が無いかを確認する精査を受けていただく必要があります。また、ご本人様・ご家族に、心臓移植は植込み型補助人工心臓について、十分に理解いただいた上で治療の体制を整えていただく必要があります。植え込み型補助人工心臓また心臓移植は、通常の内服治療や手術治療とは異なり、患者様ご自身でしっかりと自己管理を行うことがカギとなる治療となります。そのために、心臓移植または植込み型補助人工心臓について、病気が進行する前にあらかじめ十分に知っておき、検討しておく必要があります。治療に関するちょっとした疑問でも問題ございませんので、いつでもお気軽に当院にご相談ください。(文責 近藤徹)

劇症型心筋炎

劇症型心筋炎

心筋炎は、ウイルスや自己免疫、薬剤への過敏症などが原因で、心臓に炎症が生じる病気です。発熱や倦怠感など、心筋炎だと疑うのが難しい症状で発症することが多いため、受診が遅れたり診断するのが難しい病気です。病院を受診した時や、診断された時にはすでに重篤になっていることも多い病気です。

炎症が強い場合に心臓の機能が強く障害されると、各臓器に十分な血液が行き届かなくなってしまう(多臓器不全)ために、心臓の働きを強める薬や、心臓の働きをサポートもしくは代わりをする補助循環といわれる機械が必要になることがあります。このような重篤な心筋炎を、劇症型心筋炎といいます。残念ながら、現在でも劇症型心筋炎は20-60%程度と死亡率が高い病気です。

劇症型心筋炎は、心臓の炎症自体を抑えることと、心臓の機能が障害されている間に機械的補助循環を用いて多臓器不全を予防することが治療の柱となります。心臓の炎症自体を抑えるには、一部の心筋炎に免疫抑制薬が有効であることが知られています。機械的補助循環には、IABP・VA-ECMO・Impellaといった経皮的に用いる機械から、体外式LVAD・Central ECMOといった手術で用いる機械があります。劇症型心筋炎では、病気の状態に応じてこれらの機械を使い分け、適宜変更しながら治療を行います。

当院は、機械的補助循環のあらゆる選択肢を持ち合わせており、どのような内科的治療・外科的治療が最適かを心臓外科・循環器内科で相談し協力しながら、集中治療室で集学的に治療を行っています。劇症型心筋炎について、全国有数の治療経験があります。

劇症型心筋炎の患者様を救命するには、心筋炎の、より早期の状態からのどのような治療を行うかが重要となります。そのため、劇症型心筋炎だけでなく、心筋炎が重篤化する前の状態であっても、いつでもお気軽にご相談ください。 

(文責 近藤徹)


名大病院でのCABG


【はじめに】
当院は心臓外科医が24時間常駐しており、冠動脈疾患に関わらず弁膜症や大動脈疾患の緊急手術を受け入れる体制が充実しています。治療方針の決定に際しては心臓外科、循環器内科などの多職種から構成されるハートチームでの協議によって、患者様の状態に合った最適な治療法を提供させていただいております。

【冠動脈バイパス術 CABG:coronary artery bypass grafting】
CABGは冠動脈の狭窄や閉塞により引き起こされる狭心症や心筋梗塞に対して行われる手術です。また当院は、冠動脈瘤や冠動脈起始異常に対する外科治療の経験もあります。
冠動脈疾患や、その一般的な治療法の詳細に関しては、日本胸部外科学会ホームページに記載されておりますので、ご参照ください。
http://www.jpats.org/modules/general/index.php?content_id=12#3

【カテーテル治療とCABG】
 冠動脈疾患の侵襲的治療にはカテーテル治療とCABGがあります。それぞれの治療を受けることによる利益とリスクを考慮し、患者さまの状態に合わせた治療選択が必要です。治療指針の基盤となる現在の日本のガイドラインは、冠動脈病変の重症度と糖尿病の合併の有無により層別化して推奨クラスが決定されています。
 カテーテル治療は冠動脈狭窄部位にステントを留置する治療ですが、治療後の再狭窄が問題になっていました。特に左冠動脈主幹部や近位部の場合、CABGの方がカテーテル治療より生命予後は良好で、術後心筋梗塞発症率が低いことが報告されていました。近年ではステントの改良などにより、適切に適応を決定すれば術後5年間に限ってはCABGとPCIの成績は同等であるとの報告もあります。しかし糖尿病を罹患されている、または冠動脈多枝病変や複雑病変を伴う患者さまでは、いまだにCABGの方が術後の成績に優れているのが現状です。2012年に天皇陛下(現上皇)が二枝病変であり、PCIの適応でもありましたが、CABGを受けられたことの理由の一つに「公務に早く復帰するため」と報道されていたことには、こういった背景があります。
 治療の目標、治療が含有する潜在的なリスク、患者さまの状態やご意向などから総合的に判断してハートチームの協議により治療方針を決定しております。
【当院のCABGの特徴】
①人工心肺の使用について
 CABGは人工心肺という装置を使用して心臓を停止させて吻合する方法が一般的でしたが、外科医の技術や手術器具の改良に伴い、1990年台後半から人工心肺を使用せず心臓を拍動させたまま吻合する手術(オフポンプCABG)が普及しています。心臓を拍動させたまま吻合するため手術の技術的難易度は上がり、オフポンプCABGは欧州や北米ではCABG全体の約20%程度にとどまりまる一方、日本では約60%に行われている現状は、日本の心臓外科の技術力の高さを裏付けています。
 人工心肺の使用により、全身に炎症が生じることによる体内の臓器機能の低下や免疫力の低下、上行大動脈の操作に伴う脳梗塞、凝固因子の消費による出血傾向などの合併症が懸念されます。よってハイリスク症例と呼ばれる上行大動脈や頸動脈に高度粥状硬化病変を有し脳梗塞の危険の高い症例(図1)、低肺機能(図2)、腎機能不全、80歳以上の超高齢者などにはオフポンプCABGが良い適応とされます。実際オフポンプCABGでは、このようなハイリスク症例の早期死亡リスクが低く、脳梗塞や術後腎機能障害を減少させることが確認されています。
 その一方で、冠動脈の直径が著しく細い場合には吻合の精度が低下し、心表面の脂肪の深い部分や心筋内に走行している冠動脈は拍動したまま探すことが困難であり、低心機能や高度弁膜症を有する場合には、吻合のために心臓を脱転することで全身の循環が維持できなくなる危険があります。つまり手術方法には一長一短があり、患者さまの状態に合わせて適切な方法を選択することが重要です。
 当院では、術前に全身精査を厳格に行い、人工心肺を使用することに問題のない患者さまには、吻合の精度高めるため人工心肺を使用して吻合する方法を第一選択としています。また上述したように、人工心肺を使用することで危険性が増加する患者さまにはオフポンプCABGを積極的に行っております。
②グラフトの選択について
 冠動脈に吻合する血管のことをグラフトといいます。一般に動脈グラフトの方が静脈グラフトに比べて、長期開存性に優れているとされます。使用可能なグラフトとして、内胸動脈、橈骨動脈、右胃大網動脈、大伏在静脈があります。
 どのグラフトを冠動脈のどの部位に吻合するかは、施設により治療方針は様々です。または冠動脈の狭窄度の度合は、術後のグラフト開存性に影響を与えます。
 この中で左前下行枝に対する左内胸動脈の使用は、15年を超える超長期にわたる経過観察期間でも開存率が90%以上と安定した成績が世界各施設から報告され、当院でも第一選択としています。左回旋枝領域には、右内胸動脈を積極的に使用する方針としています。左心系のバイパスに長期開存性が期待できる内胸動脈を使用することで生命予後が改善すること、中枢吻合が不要であることから上行大動脈操作に伴う脳梗塞の危険を減ずることができることが利点としてあげられます。特に若年者には積極的に動脈グラフトを使用し、長期開存性を期待しています。(図3)その一方で両側内胸動脈の使用は胸骨への血流を低下させ、術後胸骨創感染のリスクを増加させるとされています。内胸動脈の採取には胸骨感染が比較的少ないskeletonized法を用いていますが、糖尿病、女性、BMI(ボディマス指数)が高い患者さまでは、特にそのリスクが高いとされ適応に留意しています。右冠動脈領域のバイパスには、動脈グラフトとして右胃大網動脈を用いています。ただし大動脈と比較してグラフト内圧が20%低いとされる右大網動脈は、冠動脈の狭窄度が低いと血流が競合して閉塞のリスクがあります。よって狭窄度が比較的強い冠動脈に右胃大網動脈を使用しています。動脈グラフトが使用困難な部位には大伏在静脈を使用しています。採取や使用する長さの調節が容易であることからCABGにおいて重宝するグラフトです。一般的に長期開存性が問題とされますが、近年静脈周囲の組織をつけたまま採取する方法や、採取後に静脈を拡張しないことで長期開存性が改善しているとの報告もあり、当院でも採取法には留意しながら使用しています

文責 伊藤英樹

» 続きを読む