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病態外科学心臓外科学

研究室概要

心臓外科学は心臓外科および胸部大血管外科を専門領域としています。教室では冠動脈バイパス術などの虚血性心疾患手術、弁形成術・置換術などの心臓弁膜症に対する手術、大動脈弓部を中心とする胸部大血管手術など、後天性心疾患を中心に年間約300例の心臓・大血管手術を施行しています。新規診療として、植込型補助人工心臓治療、心臓移植治療を開始しています。また、カテーテル式大動脈弁置換術(TAVR)、レーザーによるペースメーカー抜去術を行っています。症例はデータベース化し臨床研究を展開し手術成績の向上に努めています。データベースを基盤とした臨床研究は高い評価を受けています。新しい手術手技の開発に対しても積極的に取り組んでいます。

研究体制

心臓外科学は心臓外科および胸部大血管外科に関する基礎および臨床研究を専門領域としています。
教室には1952年に日本で初めて人工心肺を開発した歴史があり(戸田博教授)、この伝統を受け継ぎ、「臨床に即した研究」をモットーに研究に取り組んでいます。再生医療を用いた大動脈瘤抑制療法の開発、不全心筋再生療法の開発、組織工学技法を用いた小口径人工血管の開発、心筋ネットを用いた心不全治療療法の開発などの臨床に即した基礎研究を行っています。  
教室では冠動脈バイパス術などの虚血性心疾患手術を約100例、弁形成術・置換術などの心臓弁膜症に対する手術を約100例、大動脈弓部を中心とする胸部大血管手術を約100例など、後天性心疾患手術を中心に約300例の開心術を行っています。新規診療として、2013年に植込型補助人工心臓治療を開始し、2017年には心臓移植を開始します。大動脈弁狭窄症に対するカテーテル式大動脈弁置換術(TAVR)を2016年から開始し、レーザーによるペースメーカー抜去術を2012年から行っています。

症例はデータベース化し臨床研究を展開し手術成績の向上に努めています。冠動脈バイパス術、弁膜症手術、大血管手術、不整脈手術は大規模なデータベースを構築し、詳細な臨床研究を推進しており、データベースを基盤とした臨床研究は高い評価を受けています。また、新しい手術手技の開発に対しても積極的に取り組んでいます。

研究プロジェクト

研究プロジェクト①

1. 「重症心不全患者に対するテイラーメイド方式心臓サポートネット開発」

i) ...

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ii) .. 多施設共同の臨床研究.「拡張型心筋症に対するテイラーメイド方式心臓形状矯正ネットの臨床試験(UMIN 000019236) 
参加施設 名古屋大学、大阪大学、東北大学、東京大学、慈恵医科大学

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2.重症心不全における心筋配向変化が心機能増悪をもたらす機序の解明
(科学研究費基盤B)

【研究目的】

重症心不全における心筋配向の変化と乱れが心収縮能と拡張能・心臓リモデリングに及ぼす影響をMicro CTと心機能シミュレーション技術を用いて解析し、心不全悪化のメカニズムを力学的観点から明らかにすること

【研究背景】

心不全が進行した心臓では、心形状が円錐形から球状化し、心筋配向がらせん構造から水平方向に傾き、さらに収縮効率が悪化する(図1)。さらに心筋シート(右図)の傾きは心室壁伸展に伴い、垂直方向に傾く。

【研究内容】

MicroCTを用いて正常心と不全心の心筋配向変化、心筋シートの傾きを評価する(名古屋大学工学部森健策教授研究室)。UT-Heart研究所の心臓シミュレーション技術に上記結果を組み込み、心機能(収縮能&拡張能)に与える影響を検討する。

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図1A. 正常心(上段:60°)と不全心(下段:30°)における心筋配向変化

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図2A.Patrick A. Helm et al. Circulation Research. 2006;98:125-132earch. 2006;98:125-132

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図1B.心筋配向がらせん構造から水平方向になった場合の左室駆出率変化(70%⇒40%)

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図2B

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図9 microCT画像

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図10.心筋配向ベクトル表示

研究プロジェクト②

1. 新しい大動脈瘤治療の開発

i) 間葉系幹細胞を用いた大動脈治療
大動脈瘤の病態生理は、動脈硬化に伴う慢性炎症の成れの果てで、動脈張力・構造を維持する膠原線維の合成・分解のバランス破綻を来した結果、大動脈の組織強度を失い、瘤状に膨らんでしまう病態である。破裂すると救命率の低い、生命に直接関わる疾患である。手術(人工血管置換)が唯一の破裂予防法であるが、手術侵襲が大きく、合併症も多いため、リスクの高い患者では手術が困難な場合もある。従って、底侵襲治療が求められている。一方、間葉系幹細胞は、抗炎症作用、免疫抑制作用、組織修復作用があり、これらの作用を応用した、大動脈治療を考案した。大動脈瘤を局所投与、あるいは静脈投与することで、予防効果に加え、治療効果もあることを見出した。

J Vasc Surg 2011;54:1743, J Transl Med 2013;11:175, Eur J Cardiothorac Surg 2014;45:e156, World J Stem Cells 2014;6:278

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ii) クラリスロマイシンを用いた大動脈瘤治療
クラリスロマイシンは膠原線維を分解する、マトリクスメタロプロテアーゼの分泌を阻害したり、抗炎症作用を有することがわかり、それらを利用した大動脈瘤治療では、大動脈瘤の破裂を抑制することがわかった。

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iii) エクソソームを用いた大動脈瘤治療
エクソソームとはほとんどすべての細胞が分泌する微細顆粒である。様々な蛋白、脂質、RNAを含み、様々な生理活性作用を有している。その生理活性作用は由来細胞に依存することがいわれている。そのエクソソームを間葉系幹細胞から単離し、大動脈瘤治療を行うと、治療効果を発現することを我々は世界で初めて発見した。

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2.再生医療技術を応用した手術材料の開発

i) 再生医療技術を利用した小口径人工血管の開発
市販の小口径人工血管は開存率が低く、現状では、心臓手術(冠動脈バイパス術等)に用いることは困難である。我々は、脱細胞化組織や生体吸収性材料を用いて、組織再生を人工血管自信がはかりながら自己血管のように再生する人工血管を開発している。

J Artif Organs 2012;15:399, Ann Thorac Surg 2012;93:156, J Artif Organs 2008;11:91

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ii) 骨再生を促進する骨髄止血材料(新規骨ろう)の開発
手術等で骨を切開した場合、骨髄からの出血を制御しないと、失血し術野の操作に支障をきたす。この制御にはミツロウ(骨ろう)が使用されてきたが、感染を惹起したり、骨折治癒を抑制することがある。我々は、生体吸収性ポリマーにペプチドを配合し、ミツロウ同等の物性で、骨再生を促す材料を、他施設との共同研究で成功した。

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iii) 組織再生を促す癒着防止膜の開発
心臓手術後の心臓周囲の癒着は、再手術時の剥離を困難にするだけでなく、癒着によって心臓機能も障害する。癒着を抑制する材料はいくつかあるが理想的とは言い難い。我々は、心臓を覆う心膜を再生させることで、癒着を防止するというコンセプトで、生体吸収性材料と心膜中皮細胞親和性の高いペプチドとを組み合わせることで、心膜再生を促す材料を開発している。

教員

構成員名役職所属
碓氷 章彦 教授 心臓外科
秋田 利明 特任教授 心臓外科
大島 英揮 准教授 心臓外科
成田 裕司 講師 心臓外科
阿部 知伸 病院講師 心臓外科
六鹿 雅登 病院講師 心臓外科
藤本 和朗 病院講師 心臓外科
德田 順之 病院講師 心臓外科
寺澤 幸枝 病院講師 心臓外科
山名 孝治 病院講師 心臓外科
伊藤 英樹 病院講師 心臓外科

研究実績

  • 2016年
    1. Suenaga H, Usui A, Mutsuga M, Oshima H, Abe T, Narita Y, Fujimoto K, Tokuda Y. The changes of aortic diameter after aortic repair with aortic tailoring technique for chronic type B aortic dissection. Eur J Cardiothorac Surg. 2016 pii: ezw240. [Epub ahead of print]
    2. Hibino M, Oshima H, Narita Y, Abe T, Mutsuga M, Fujimoto KL, Tokuda Y, Terazawa S, Ito H, Usui A. Early and Late Outcomes of Thoracic Aortic Surgery in Hemodialysis Patients. Ann Thorac Surg. 2016;102(4):1282-8.
    3. Oshima H, Tokuda Y, Araki Y, Ishii H, Murohara T, Ozaki Y, Usui A. Predictors of early graft failure after coronary artery bypass grafting for chronic total occlusion. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016;23(1):142-9.
    4. Tokuda Y, Oshima H, Narita Y, Abe T, Araki Y, Mutsuga M, Fujimoto K, Terazawa S, Yagami K, Ito H, Yamamoto K, Komori K, Usui A. Hybrid versus open repair of aortic arch aneurysms: comparison of postoperative and mid-term outcomes with a propensity score-matching analysis. Eur J Cardiothorac Surg. 2016;49(1):149-56.
  • 2015年
    1. Araki Y, Usui A, Oshima H, Abe T, Fujimoto K, Mutsuga M, Tokuda Y, Terazawa S, Yagami K, Ito H. Impact of the intraoperative use of fibrinogen concentrate for hypofibrinogenemia during thoracic aortic surgery. Nagoya J Med Sci. 2015;77(1-2):265-73.
    2. Okada N, Oshima H, Narita Y, Abe T, Araki Y, Mutsuga M, Fujimoto KL, Tokuda Y, Usui A. Impact of Surgical Stroke on the Early and Late Outcomes After Thoracic Aortic Operations. Ann Thorac Surg. 2015;99(6):2017-23.
    3. Abe T, Oshima H, Narita Y, Araki Y, Mutsuga M, Fujimoto K, Tokuda Y, Terazawa S, Yagami K, Usui A. Influence of the characteristics of Japanese patients on the long-term outcomes after aortic valve replacement: results of a microsimulation. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2015;63(5):260-6.
  • 2013年
    1. Tokuda Y, Oshima H, Araki Y, Narita Y, Mutsuga M, Kato K, Usui A. Detection of thoracic aortic prosthetic graft infection with 18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography/computed tomography. Eur J Cardiothorac Surg. 2013;43(6):1183-7.
    2. Tokuda Y, Miyata H, Motomura N, Araki Y, Oshima H, Usui A, Takamoto S; Japan Adult Cardiovascular Database Organization.. Outcome of pericardiectomy for constrictive pericarditis in Japan: a nationwide outcome study. Ann Thorac Surg. 2013;96(2):571-6.
  • 2012年
    1. Usui A, Miyata H, Ueda Y, Motomura N, Takamoto S. Risk-adjusted and Case-matched Comparative Study Based on the Japan Adult Cardiovascular Surgery Database between Antegrade and Retrograde Cerebral Perfusion in Aortic Arch Surgery. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2012 Mar;60(3):132-9.
  • 2010年
    1. Suzuki S, Usui A, Yoshida K, Matsuura A, Ichihara T, Ueda Y. Effect of cardiopulmonary bypass on cancer prognosis. Asian Cardiovasc Thorac Ann. 2010;18(6):536-40.
    2. Mutsuga M, Narita Y, Araki Y, Maekawa A, Oshima H, Usui A, Ueda Y. Spinal cord protection during a thoracoabdominal aortic repair for a chronic type B aortic dissection using the aortic tailoring strategy. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2010;11(1):15-9.
  • 2009年
    1. Mutsuga M, Narita Y, Yamawaki A, Satake M, Kaneko H, Suematsu Y, Usui A, Ueda Y. A new strategy for prevention of anastomotic stricture using tacrolimus-eluting biodegradable nanofiber. J Thorac Cardiovasc Surg. 2009;137(3):703-9.
  • 2007年
    1. Usui A, Ueda Y. Arch first technique under deep hypothermic circulatory arrest with retrograde cerebral perfusion. Multimed Man Cardiothorac Surg. 2007;2007(102)
  • 2005年
    1. Sasaki M, Usui A, Yoshikawa M, Akita T, Ueda Y. Arch-first technique performed under hypothermic circulatory arrest with retrograde cerebral perfusion improves neurological outcomes for total arch replacement. Eur J Cardiothorac Surg. 2005;27(5):821-5.
    2. Araki Y, Usui A, Kawaguchi O, Saito S, Song MH, Akita T, Ueda Y. Pressure-volume relationship in isolated working heart with crystalloid perfusate in swine and imaging the valve motion. Eur J Cardiothorac Surg. 2005;28(3):435-42.
  • 2002年
    1. Usui A, Fujimoto K, Ishiguchi T, Yoshikawa M, Akita T, Ueda Y. Cerebrospinal dysfunction after endovascular stent-grafting via a median sternotomy: the frozen elephant trunk procedure. Ann Thorac Surg. 2002;74(5):S1821-4
    2. Usui A, Inden Y, Mizutani S, Takagi Y, Akita T, Ueda Y. Repetitive atrial flutter as a complication of the left-sided simple maze procedure. Ann Thorac Surg. 2002;73(5):1457-9.

心臓外科を志す若手医師の先生へ  

名古屋大学では22の関連施設と協力して、心臓外科を志す若手医師の方々に心臓血管外科専門医教育を行っています。心臓血管外科専門医を取得するためには最低50例の術者経験とともに多くの臨床経験を必要とします。名古屋大学には関連施設を含め年間約3000例の心臓・大血管手術総数があり、若手外科医に十分な臨床経験を提供できる基盤があります。  
私たちは卒後約10年間を卒後研究期間と考えています。2年間の初期臨床研修後、心臓外科臨床研修は卒後3年目以降に開始します。卒後4年目までに外科系研修を行い、外科専門医受験資格が得られるように関連施設と協力してカリキュラム調整を行っています。3年目以降の心臓外科修練は初期臨床研修病院で行うことが一般的ですが、経験症例数に応じて複数の施設への異動も考慮しています。  
心臓外科臨床研修は卒後4年次以降に本格化します。この期間は心臓手術数の多い大規模施設で研修を行う事を基本とし、卒後7、8年目までに心臓血管外科専門医取得が可能な手術数を経験できるように指導します。  
私たちは大学院教育を卒後教育期間の一環と位置づけ、心臓血管外科専門医実地修練に準拠した臨床指導およびacademic supportを行っています。原則として卒後6、7年目に社会人大学院生として大学院に入学し、1年間以上の臨床研修を医学部附属病院で行います。附属病院では、補助人工心臓・心臓移植などの重症心不全の外科治療、および大動脈外科治療を中心に研修します。臨床研究、全国学会発表、論文作成を行い、4年間で心臓血管外科専門医取得に必要な業績をあげるとともに、学位論文相応の研究を指導します。  
私たちは卒後約10年間で外科専門医、心臓血管外科専門医、医学博士を取得することを目標とし、心臓血管外科に関する卒後臨床教育を行っています。 また、新専門医制度に対応できるように、柔軟な体制変更を予定しています。

心臓血管外科専門医の詳細は http://cvs.umin.jp/ (日本心臓血管外科専門医認定機構)を参照してください。

外科専門医の詳細は http://www.jssoc.or.jp/procedure/specialist/(日本外科学会ホームページ)を参照してください