六鹿雅登心臓外科教授 就任挨拶

 

就任のご挨拶

この度、2022年11月1日をもちまして名古屋大学大学院医学系研究科病態外科学講座心臓外科学の教授を拝命しました六鹿雅登(むつがまさと)と申します。ここに謹んで挨拶を申し上げます。
私は、平成8年(1996年)に名古屋大学医学部を卒業し、岐阜県大垣市民病院で初期研修を行いました。翌年の平成9年(1997年)に名古屋大学心臓外科(故村瀬充也教授)に入局しました。外科系研修の後に、平成10年から心臓外科として玉木修治部長のご指導のもと臨床の研鑽を積むことができました。小児の複雑心奇形および成人の弁膜症、冠動脈、大血管などたくさんの症例を経験でき、日々手術そしてその後の術後重症管理にあけくれていたことを思い出します。現在の働き方改革では問題となるような働きかたではありましたが、これぞ“心臓外科医”の生活だと思っていたので、全く苦ではありませんでした。
平成18年(2006年)4月に、名古屋大学大学院医学研究科心臓外科博士課程(上田裕一教授:当時)に入学し、半年間の社会人大学院生の後に、10年半もの間、お世話になった大垣の地を離れ、名古屋大学心臓外科医員として帰局しました。大学院の研究テーマは、血管吻合後の内膜肥厚防止であり、免疫抑制剤で有名なタクロリムスを使用し、それを綿状(エレクトロスピニング法にて)にし、経時的に薬剤溶出させ、その効果を動物実験で実証し、国際学会で発表することができました。その研究で、上田裕一教授(当時)、成田裕司講師、緒方藍花さんのご指導のもと博士号を取得することができました。
平成21年(2009年)7月、上田裕一教授(当時)のはからいでカナダアルバータ大学小児心臓外科Ivan Rebeyka教授のもとクリニカルフェローとして臨床留学する機会を得ました。毎日のように重症な先天性心疾患の手術を2−3例非常に早い手術時間で終え、術後は小児集中治療専門医が、病棟では小児循環器科医が管理する一連の合理的なシステムを学ぶことができ非常に有意義な臨床留学でありました。その翌年からは、心臓(肺)移植・補助人工心臓部門クリニカルフェローとして、成人および小児の心臓および肺移植のドナー採取、移植手術、植込型補助人工心臓手術を多数経験できました。カナダにいながら、米国にもドナー採取に行く機会もたくさんあり、システムの違い、米国―カナダ間の移植の取り決めなどを学ぶことができました。1週間で最大8例の移植(心臓、肺移植)も経験でき、またそのような多数の移植手術が行われても動じない麻酔科、集中治療体制に感嘆していました。この2年の臨床留学で非常に多くのことを学ぶ機会を得ることができました。
平成23年(2011年)帰国後、名古屋大学心臓外科学教室で上田裕一教授(当時)、碓氷章彦准教授(前教授)のご指導のもと主に成人の心臓疾患、複雑な大動脈疾患で臨床の研鑽を積むことができ、循環器内科の室原豊明教授、平敷安希博先生、奥村貴裕病院講師、精神科尾崎紀夫前教授、木村宏之先生、麻酔科、集中治療室らの先生達の協力を得ることができ、看護師、臨床工学技師、リハビリテーション、栄養士も加わり、重症心不全多職種チームの設立および運営、遠心ポンプを使用した長期体外式補助人工心臓管理およぶ離脱、その経験をもとに植込型補助人工心臓施設認定(平成24年:2012年)を取得できました。心臓移植申請後、植込型補助人工心臓症例も順調に増加し、東海地区初の心臓移植施設認定(平成28年:2016年)に一翼を担うことができ、翌年の東海地区初の心臓移植症例の手術にも携わることができました。心臓移植症例も順調に伸び、2022年に11例に到達しております。
その他に重点的に取り組んできたことは、循環器内科肺高血圧先端医療学寄付講座近藤隆久教授(当時)、足立史郎先生、小児科加藤太一准教授らとともに成人先天性心疾患の症例検討および手術を行ってきました。先天性心疾患手術も再開に向けて、碓氷前教授、病院の強いサポートのおかげで病院教授にJHCO中京病院の櫻井 一先生を迎えることとなり数年後には充実すると思われます。難易度の高い胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤の紹介も増加し、血管外科と共同で手術戦略を協議しております。
弁膜症に至っては、2018年(平成30年)より胸腔鏡下弁形成術(置換術)の保険召喚に伴い、右小切開3D内視鏡補助低侵襲手術(MICS)による僧帽弁形成術を開始し、徐々に症例数も増加し、大動脈弁手術、三尖弁手術、不整脈手術(Maze手術)、心房中隔欠損閉鎖術にも手術適応を拡大しています。手術後の回復が非常に早く、患者さんの社会復帰も早い術式であると考えています。
2023年にはロボット支援下心臓手術(da Vinci手術)の弁形成術を開始予定であります。

名古屋大学心臓外科は先天性心疾患を開始することで心臓大血管全般の診療を行うことができる全国でも数少ない病院となります。大動脈弁においてはカテーテル弁置換、僧帽弁逆流制御をクリップで行いMitraClipによる繊細な血管内治療も行っており、Dynamicな大動脈手術、複雑な心疾患、再手術、重症心不全治療などの侵襲度の高い手術など幅広い領域の手術治療および、またその全身管理を学ぶことができる大変魅力的でExcitingな診療科です。
名古屋大学心臓外科教室は関連病院での症例数もあわせると、全国有数の症例数と診療の質および人材を有していると自負しております。今後も最先端の医療、研究、教育を実践し、将来を担う一流の心臓外科医の育成に励んでいく所存です。
 皆様のご期待、信頼に応えられるよう、魅力ある講座を目指して鋭意努力して参ります。今後とも皆様にはご指導、ご鞭撻賜りますようよろしくお願い申し上げます。

略歴
1996年3月 名古屋大学医学部卒業
1996年5月 大垣市民病院 研修医
1998年4月 大垣市民病院 胸部外科 医員
2006年4月 大垣市民病院 胸部外科 医長
2006年10月 名古屋大学医学部附属病院 心臓外科 医員
2009年3月 名古屋大学大学院病態外科学心臓外科 博士号
2009年7月 カナダアルバータ大学小児心臓外科クリニカルフェロー
2010年7月 カナダアルバータ大学心臓移植・肺移植・補助人工心臓部門クリニカルフェロー
2011年7月 名古屋大学医学部附属病院 心臓外科 特任助教
2014年4月 名古屋大学医学部附属病院心臓外科 病院講師
2016年11月 名古屋大学医学部重症心不全治療センター副センター長 病院講師
2018年10月 名古屋大学心臓外科講師
2020年1月 名古屋大学心臓外科准教授
    名古屋大学医学部重症心不全治療センター副センター長(兼務)
2022年4月 名古屋大学心臓外科准教授
名古屋大学医学部重症心不全治療センターセンター長(兼務)
2022年11月 名古屋大学心臓外科教授

 

 

 

 

 

 

2022年10月24日|ニュースのカテゴリー:news