心房中隔欠損(ASD)のカテーテル治療

ASDカテーテル治療について

当院では、心臓外科専門医、小児循環器専門医、循環器専門医・カテーテル治療専門医、超音波専門医、心臓麻酔専門医、カテーテル治療専門技師・看護師、心臓リハビリ技師、その他コメディカルが所属を超えて当治療に対する強固なチームを形成しています。
毎月先天性心疾患カンファレンスを行い患者さんの情報を共有し、治療の適応、方法、長期的な管理を含め、様々な視点から詳細な検討を行っています。
大学病院の特徴として、それぞれの部門のスタッフが豊富であるため、層の厚いチームが形成され、より手厚く安全を重視した包括治療が可能となっています。
ASDカテーテル治療を要する患者さんの中には、小児はもちろんのこと、幼少期は治療不要と判断されていたが成人になって治療必要な状況となった方、成人になってからASDを初めて指摘された方もいます。患者さんの中には、心臓以外の併存疾患を有している場合があります。それらは血管疾患、肺疾患、消化器疾患、悪性疾患など多岐にわたり、同時に精査、治療、管理を要することもしばしばあります。当院では、大学病院として、各診療科、どの分野においてもその専門家スタッフが充実しており、心臓に対しての治療だけで無く、各科と連携することで常に患者さんの全体を考えた全人的な治療を提供する事が可能となっています。
当院でのASDカテーテル治療のスケジュールは主に下記のようになっています。カテーテルの挿入は鼠径部から行いますので傷は小さく、ほとんど術後の痛みを感じる事がありません。心臓リハビリ専門の理学療法士とともに病棟歩行を積極的に行っています。2日後に術後の検査を一通り行い、多くの場合は週末に退院をしています。入院期間を短期とする事で、速やかに通常の日常生活に戻る事を目指しています。

ASDカテーテル治療に関する患者さん向けリンク

 

https://www.jll.co.jp/patient/shinbo_1.html

 

https://www.sjm.co.jp/jp/general/amplatzer/chapter_02.html



成人期の動脈管開存症(PDA)のカテーテル治療

成人期の動脈管開存症(PDA)のカテーテル治療について;一般の方へ



 動脈管は大動脈と肺動脈をつなぐ血管で、通常は生後1−2日で閉鎖しますが、それがそのまま残った場合に動脈管開存症(PDA)になります。多くは乳児期から小児期に発見されて治療されますが、症状が比較的乏しく成人期まで放置されたり、成人期に初めて診断される場合もあります。
一般的には動脈管を通して大動脈から肺動脈へ血流が向かうことから(通常は肺から左心室に返ってきた血液は大動脈を介して全て全身に向かいますが、その一部が再び肺に向かう肺動脈に戻ってしまうことになります)、中等度以上の短絡を有するPDAでは、左心室の負担の増加、肺動脈への血流増加による拡張、圧の上昇等が見られる様になります。それらが一定以上になると労作時息切れなどの症状が出てきます。長期的には、うっ血性心不全の増加、肺高血圧の進行が起こります。さらに進行する場合は、長期的な圧・容量の負荷により肺血管の障害が進展し圧が過剰に上昇し、肺動脈から大動脈の向きへ血液が向かうようになり治療困難となる場合もあります。また動脈管を通過する血流は乱流となり、感染性心内膜炎を発症することもあります。

検査
小さなPDAでは、健診で行われるような、聴診、心電図、レントゲンには異常が現れない場合もしばしばです。一定以上のサイズのPDAにおいては、聴診での雑音などから疑うことができます。PDAの存在が疑われる場合は、心臓超音波検査、CTなどを行うことで、比較的容易に診断をすることができます(疑って検査まで進むことが重要になります)。心臓超音波では、動脈管を通過する血流のシグナルやそれに伴う心臓の負荷所見などが観察されます。CT検査では造影剤を使用し撮像することで、動脈管の存在、その形態などがきれいに描出されます(図)。また合併奇形などが無いかを確認することもできます。
さらにカテーテル検査にて、動脈管の短絡量、肺高血圧の程度などを評価します。高度の肺高血圧を有し、肺血管抵抗が高値である場合は、それが可逆的であるかなども評価します。


図:CTでの動脈管の描出(赤い矢印)



治療適応
成人期のPDAの場合は、その閉鎖を行う場合は、基本的には外科手術よりも、まずカテーテル治療が考慮されます。
 一般的には、無症状であっても、心臓への負荷所見(具体的には肺血流増加所見、左心系の容量負荷所見など)が見られる場合は治療適応になります。また心臓に負荷所見が見られなくても、聴診で心雑音が聴取される場合は一定以上の短絡があると判断し、閉鎖治療を考慮します。
高度の肺高血圧を合併する場合は、肺高血圧に対する内科治療を行いながら適切なタイミングでのカテーテル治療を検討する必要があるなど、治療過程が複雑になる場合もあります。当院では、肺高血圧の専門チームと連携することで、そのような患者さんにも対応しています。

カテーテル治療の実際
多くは局所麻酔で行います。ソケイ部の血管からカテーテルを通し、動脈管を通過させ、閉鎖デバイスを用いて動脈管の閉鎖を行います(図)。近年は、その閉鎖するデバイス(器具)の選択肢も増加し(図)、大半の形態のPDAがカテーテルで閉鎖可能となっています。動脈管自体の形態や、大動脈、肺動脈の形態によりその難易度は異なりますが、基本的には1-2時間で治療は終了します。治療当日は、ソケイ部の止血のためベッド上で過ごしていただきますが、翌日からは通常歩行が可能になります。治療前日もしくは当日に入院し、治療後数日で退院となります。
当院では、日本心血管インターベンション治療学会・日本先天性心疾患インターベンション学会認定の治療施設であり、カテーテル治療を行っています。お気軽にご相談ください。

図:治療の実際の写真




図:様々な閉鎖用のデバイス



(Abbottホームページより)

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