脳とこころの研究センター・研究開発部門

1000例健常イメージング・ゲノムコホートの構築

 小児から成人の過程で生じる神経回路の発達や変性、また人の心理状態や社会性などの変化を可視化していくことは、健やかな脳を育て、老いる脳を予防し、認知症から脳を守っていく上で極めて重要であり、その推進は21世紀の超高齢化社会を迎えた我が国で大きな役割を有します。また、加齢による変化や個体差を正確に知ることは、神経変性疾患・認知症・てんかん・統合失調症・うつ病・摂食障害・発達障害などの正確な診断・予後・治療効果判定の上でも重要です。

 脳とこころの研究センター研究開発部門は基盤整備部門と密接に連携し、全学的連携、当地区の関連施設との協力を基盤としつつ、得意領域融合型コンソーシアム形成により、1000例健常イメージング・ゲノムコホートを初めとした大規模コホートを構築し、3.0T 頭部MRIや脳磁図を用いて発達や加齢の機序に迫る脳内ネットワークの解明プロジェクトを推進しています。

脳血流動態を探る

 具体的には若年から高齢に至る1000人規模の脳機能画像・生物医学的情報を含む、横断的・縦断的な健常者コホートや、認知症・精神疾患などからなる疾患コホートをベースとして、拡散テンソル画像による脳内微細白質構造描出、安静時機能的MRIや機能的MRIによる脳内ネットワーク構造解析などを中心に脳内コネクトームの解明を進めており、脳神経回路の構造の解明に基づく疾患病態解明、画期的バイオマーカー開発を通じ、基礎研究分野との連携の下、認知症や精神疾患の革新的な超早期診断法・予防法・治療法の開発につながることが期待されます。また、発達と加齢における脳神経回路変化の解明や脳とこころの疾患の脳画像解析・分子標的イメージングとオミックス・臨床情報を融合した個々人の脳神経回路研究の推進は、自閉症、アスペルガー症候群など、発達障害者の新規対応法・治療法への展開や、脳とこころの環境適応の機序解明や環境適応を支える脳と体の機能的関連メカニズムの解明などを通じた社会脳を健やかに育てる新規学習法の提言などにもつながることも期待されます。さらに脳機能や脳神経回路に根ざすブレインマシンインターフェースの開発、運動系・感覚系を含めた身体運動の解明を通した人に優しい身体運動支援機器の開発、超微細構造可視化とマイクロサージェリー技術の融合による超低侵襲手術法開発にも繋げることを目指しています。

脳動脈瘤の血流動態