心の発達支援研究実践センター

母親から乳児への情緒的絆

心の発達支援研究実践センター 教授 金子 一史

 母親から乳児への情緒的絆は,乳児が生命を維持し,その後の良好な発達には必要不可欠であることが知られています。しかし,およそ10%の母親に,情緒的な絆の形成不全が認められるという報告があります。これらの母親から子どもへの情緒的絆の形成不全に関しては,実態の解明と支援方法の確立が望まれています。そこで,母親から乳児への情緒的な絆の形成不全をボンディング障害として捉え,その実態を明らかにすることを目指しています。また,ボンディング障害に陥っている養育者に対して,有効な支援方法のあり方を検討しています。

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ボンディング障害の関連要因に関するロジスティック回帰分析の結果。諸要因を統制しても,妊娠を知ったときに喜べなかった母親は,産後3ヶ月時での乳児への情緒的絆が低くなっていた(Nakano, Kaneko et al., 2019)。

児童青年期のメンタルヘルスに関する国際比較共同研究

心の発達支援研究実践センター 教授 金子 一史

 児童青年期のメンタルヘルスに介入することは,成人期以降における精神障害を未然に防ぐ視点からも,非常に重要です。児童青年期の心理的問題のあり方には,子ども達を取り巻く社会や文化などの影響を強く受けていると考えられますが,文化の違いが心理的問題のあり方にどのような影響を与えているのかは,これまで明確には判っていません。そのため,自傷行為やいじめ,摂食障害傾向などの児童青年期の心理的問題とその関連要因について,世界17ヶ国の研究者とのグループ The Euroasian Child and Adolescent Mental Health Study (ECAMHS)を結成し,国際比較共同研究を実施して明らかにすることを目指しています。

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 日本人青年とフィンランド人青年の自己の体型への不満度。日本とフィンランド共に,女子が男子に比べて自己への体型に不満を感じている。特に,日本の女子はフィンランドの女子に比べても,自己への体型について自信が持てていない(Maezono, Kaneko et al., 2018)。