経皮穿刺法TAVI(きずのほぼ残らないTAVI)

TAVI施行の際には、外科的に血管(主として大腿動脈)を露出してシース(シースイントロデューサーの略、血管内に留置してカテーテル、ガイドワイヤー、TAVI弁本体などを出血なく挿入するための止血弁付きの筒)を挿入するカットダウン法、血管を露出せずに経皮的にシースを挿入する穿刺法があります。カットダウン法の場合、傷の大きさは3-4㎝です。(患者さんの皮下組織の厚さなどによって傷の大きさは異なります。)
穿刺法の場合、始めは創の大きさは1㎝弱程度の小さなものですが。1週間もするとほぼわからなくなります。我々は経皮穿刺法TAVIを大腿動脈アプローチの大半の例において行っています。

カットダウン法の場合はシースを抜いた後にできる血管の穴は外科的に縫合することで止血しますが、経皮穿刺法の場合は特殊な止血用の道具を使用する必要があります。
当院ではパークローズPROGLIDE(プログライド)🄬という道具を使用しています。


(医療関係者の方へ)
当院でのプログライド使用方法と我々が留意している点(TAVI弁挿入側)(この方法は 経皮穿刺法ステントグラフトにも応用可能です)
(当院ではTAVI弁挿入側のシース抜去部の止血にはプログライドを2本使用しています。)
1. 6Frシース挿入。(エコーガイド下に血管性状のよいところでかつ必ず血管のど真ん中を狙って穿刺する。石灰化の強い部位を穿刺したり、血管の端によった穿刺をしたりすると、プログライドでの止血が困難となる。ここは肝である。)
2. シース周囲をメス(尖刃)、スペンサーもしくは鑷子を使用して剥離。(十分な剥離を行わないとプログライドの機構が十分働かない。ここももう一つのポイントである。)
3. ガイドワイヤー(0.035"、180㎝ラジフォーカス🄬)を挿入。(透視下に先端を腹部大動脈まで進める。)
4. 6Frシース抜去。
5. プログライド挿入。
6. ガイドワイヤー抜去。
7. 側面のマーカーチューブから血液が噴出するところまでプログライドをさらに進める。
8. 一旦血液が噴出しないところまで引く。その後、さらに進めて血液が噴出するところまで進める。
9. 1と書かれたレバーを倒す。
10. マーカーチューブーブから血液が噴出しないところまで慎重に引く。
11. ブランジャーを押して(2の矢印の方向に押す。)、その後引く(3の矢印の方向に引く。)。
12. ブランジャーを引いて本体から引き離す。本体から出てきた糸を切る。
13. レバーをもとの位置に戻す。(4の番号がついている。)
14. 本体全体をゆっくりと引く。
15. 糸を引き出す。結び目をネラトンにて先端を保護したモスキートで把持する。
16. ガイドワイヤーポートが見えたら、本体を引くのをやめ、2本目のプログライド挿入のためのラジフォーカスガイドワイヤーを挿入する。(先端が腹部大動脈内に位置するよう透視で確認する。)
17. 1本目のプログライド本体を抜去する。
18. 2本目のプログライド挿入。
19. 6から15を再び行う。これによりシース挿入部に糸が2本かかった状態が作られる。(シース抜去部に2方向で糸がかかるよう、プログライドを傾けて展開する。)
20. 9Frスーパーシースを挿入
21. 以降、TAVI弁留置用のシースに交換し、手技を進める。TAVI弁留置が無事終了すればスティフワイヤーを残した状態でTAVI弁留置用シース抜去、プログライドを天井方向に引き上げて出血コントロールが行えることを確認しつつ、末梢動脈の拍動を確認。
22. 末梢血流よければ、スティフワイヤー抜去。(ワイヤーが残っていれば動脈損傷に対して血管内治療が可能であるため最後までワイヤーを残しておく。)
23. 二組ある糸の内、一組の糸を天井方向に引き上げながらもう一方の組の糸の結び目を付属のスーチャートリマーを用いてシース抜去部まで進める。これは糸を切らずに保持しておく。
24. 同様の手順によってもう一組の糸も結び目をシース抜去部まで送り、糸を切る。
25. 先に結んだ側の糸も切り、圧迫止血を15分程度行う。

手技上の留意点
A) シース挿入部はエコーで十分に確認し、総大腿動脈の中で石灰化等のない性状良好な部位を選択し血管中央を穿刺する。
B) 2本使用する際は、1本目と2本目でシース抜去部に糸がかかる方向が異なるように、デバイス本体を傾けてからデバイスを展開する。
C) 血管損傷を避けるため、ワイヤー、プログライドの出し入れを行う際は透視下に行う。
D) 結び目が血管穿刺部まで進められるよう、最初に6Frシースを挿入した後の剥離はアクセス血管を損傷しない範囲で十分に行う。
                     (西俊彦)

2018年12月20日|ニュースのカテゴリー:TAVI