胸部大動脈瘤とハイブリッド手術

胸部大動脈瘤の治療方法は 開胸型手術(open repair) とステントグラフト内挿術(TEVAR)に大別されます。TEVARは低侵襲(切開範囲が小さい)という点でメリットを持ちますが、枝のある場所(弓部大動脈など)での対応に限界があります。両者を組み合わせるハイブリッド治療という方法も注目されています。
図は比較的広い範囲の弓部動脈瘤に対して 心臓側は人工血管を用いた弓部大動脈の分枝再建で対応し 心臓より遠い側(下行大動脈側)は ステントグラフト(TEVAR)で対応するという組み合わせのハイブリッド治療の例です。(Bavaria分類のtype III hybrid arch repair)

 

 

胸部大動脈瘤や大動脈解離の治療は、進歩の速度が急激な分野です。個々の患者さんの動脈瘤の場所や形態などによっても大きく治療方針は異なります。お悩みの方は外来までお越し下りご相談ください。https://www.med.nagoya-u.ac.jp/hospital/departments/cardiac-s/
名古屋大学附属病院は、胸部大動脈瘤について、3次医療機関の大学病院として周辺の病院より多くの治療紹介をいただいており、心臓外科と血管外科で協力してハイブリッド胸部大動脈治療を行っています。
大動脈瘤の患者さんは動脈硬化による他の併存疾患をお持ちの方も多いです。全身状態を把握した上でのきめ細やかな治療と周術期管理が必要と考えられます。名古屋大学附属病院は、循環器疾患だけを扱う単科病院ではありませんので、関連診療科のバックアップ体制は万全で、併存疾患を数多く抱えた患者さんでもその方にとって最適の状態で治療を受けることができます。術後回復を補助するため心臓大血管術後のリハビリテーションについても力をいれており、多くのスタッフを投入しています。これらについてはリハビリテーション領域でも高い評価を受けています。 (文責 徳田順之)

 

 

 

 

 

 

胸部大動脈瘤ステントグラフト手術のメリット デメリット

TEVAR手術の メリット
TEVAR手術の最大のメリットは、身体的負担の少なさです。
創部も小さいため術後の疼痛も少なく、早期から通常の日常生活に戻ることが可能です。

TEVAR手術の デメリット
TEVAR手術のデメリットは、大動脈の形状(解剖学的理由)により手術ができないことがあることです。特に分枝を巻き込む弓部大動脈や胸腹部大動脈で問題となります。また、大動脈瘤が体内には残ることになりますので、定期的な検査が必要です。場合により追加治療が必要になる可能性があります。

2021年04月30日|ニュースのカテゴリー:TAA