「リウマチのケと言う物の怪」
(医)慈和会 吉田整形外科病院 南場 宏通
リウマチという病気の初発症状は不確かで、極く初期には診断する事に躊躇することが多々あります。
「朝、起きたとき何か指が強ばっている」、「PIP関節が何となく痛む」「手の掌が腫れぼったい」、「あちこちの関節が痛む」、「疲れやすい」等の症状は、私のような老齢者には日常茶飯事の事ですが、未だ若いと思っていらっしゃるご婦人には「あってはならぬ」症状の様でして、家庭医学書によれば間違いなく関節リウマチだと自己診断され、受診される方がいらっしゃいます。
以前、ある高名な先生が「リウマチではない」と診断された患者さんが、6ヶ月後に立派なリウマチで受診されたことがあり、私はこのように自己診断された方には、多分リウマチではないと思っても、はっきり大丈夫だと言わない時があります。ある一定の時間、不幸になられる事となり、大変申し訳なく思っています。
さて、このような症状がある方に「リウマチ反応はマイナスだけど、症状からすると、リウマチのケがあるようだ」と診断される先生が結構いらっしゃいます。
数ヶ月に渡りリウマチ関連の色々な検査がなされ、診断が不確定のまま、私どもの病院に受診されることがあります。
「リウマチのケ」とは何なんでしょうか?患者さんにとっては「物の怪」に憑かれたようなものでして、これほど不幸な事はありません。病気の説明には色々な言葉が使われます。私も「生きているという事は、将来、あらゆる病気になる可能性があるという事ではないでしょうか」とやんわり逃げる事がありますが、「リウマチのケ」という言葉は患者さんを悩ませるだけで医師が使う言葉ではないように思います。