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患者様へ病気と治療

膵内分泌腫瘍

治療について

多くの手術は開腹手術という、おなかを大きく開いて直接手を使って膵臓の腫瘍を摘出する手術を行います。この場合はどのような手術方法を行うか、患者さんの体型により、皮膚切開が異なります。図(膵内分泌4-1)に示すようないろいろな切開方法があります。

図(膵内分泌4-1)

腹腔鏡手術の場合は患者さんの体型や手術方法によって皮膚切開を行う部位が異なってきます。腹腔鏡手術の一般的なことは「副腎腫瘍の治療」のところに詳しく書いてありますのでそちらを参照してください。

手術以外の治療方法について

膵島腫瘍の場合は腫瘍の大きさ、分泌するホルモンの種類によって手術以外の治療法が異なります。インスリノーマの場合は手術治療が一番いい治療法です。手術以外の治療としては低血糖を起こさないように食事や糖分摂取に注意することがありますが、肥満となりいろいろな合併症を引き起こす危険があります。腫瘍に直接効く薬や低血糖と予防する薬は残念ながら満足に使えるものはありません。

ガストリノーマの場合はソマトスタチンアナログという注射薬が有効です。この薬は古くから皮下注射薬はありましたが血液中で8時間しか効かないため1日に2回から3回注射する必要がありました。2004年4月から1回の臀部への筋肉注射で30日間有効な製剤が発売されました。ソマトスタチンアナログは血液中のガストリン値を低下させますが、腫瘍そのものが縮小するかどうかはまだはっきりとわかっていません。ガストリノーマの合併症である消化性潰瘍を予防するためにプロトンポンプ阻害剤という潰瘍の薬を内服することは重要です。さらにH2ブロッカーという潰瘍の薬も同時に内服していただく場合が多くあります。

出血量、手術時間

どのような手術方法を受けるかによって手術時間や出血量は大きく異なります。たとえば膵頭十二指腸切除術では6時間以上かかることが普通です。膵島腫瘍が膵臓の表面にひとつだけあるような場合は2時間以内に終わることもあります。出血も100ml以下のこともあれば、輸血が必要となるくらい出血することもあります。

術後の疼痛

開腹手術の場合は、麻酔の時に背中から硬膜外(脊髄の周りの空間)に細い管をいれます。術後はこの管を通してモルヒネなどの鎮痛剤を使用します。早い方は手術の次の日からは歩くことができます。上腹部の手術は下腹部や胸部の手術後に比べて痛みが強いことが多いですが、特に安静を保たなければいけない状態でなければ手術後3日目にはみなさん歩けるようになることが多いです。

術後経過

手術後は点滴の管とドレーンとバルーンカテーテル(尿を出す管)がつながっています。酸素マスクを顔にあて、心電図のコードが3本胸に貼られます。血圧計を腕に巻いて血液中の酸素飽和度をみる器械を指にはさむこともあります。

手術の翌日には酸素マスク、心電図のコードを多くの場合はずせます。可能であれば離床をすすめ歩いていただきます。腸が動いておなかが張らず、ガスが出たら水分摂取を開始します。鎮痛のための硬膜外カテーテルの薬が手術後3日くらいで終了しますので、バルーンカテーテルもこのころには抜去できます。ドレーンから膵液が出てくるような所見がなく、腹膜炎の症状もなければ食事を開始します。食事がしっかり摂取できれば点滴を抜去します。

退院後の治療、日常生活の注意

退院後の日常生活の注意事項は開腹手術を受けられた患者さんの一般的な注意と特に違いはありません。膵臓をたくさん切除した場合は、膵臓から分泌される消化酵素が減りますので一度にたくさん食べると消化不良をおこすことがあるので注意が必要です。油分の多い食事も控えなければいけないことがあります。ガストリノーマの患者さんは手術後も定期的に血液中のガストリン値を測定して、正常よりも高い場合は消化性潰瘍を予防するプロトンポンプ阻害剤やH2ブロッカーの薬をきちんと内服することが重要です。