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多発性内分泌腺腫瘍症(MEN)

症状について

多発性内分泌腺腫瘍症が発症したときにみられる症状

多発性内分泌腺腫瘍症に発生する腫瘍の大きさ、どのようなホルモンを分泌するかによって症状は異なります。おのおのの病気のところで説明がありますが、以下に症状という点で各臓器に発生する腫瘍別にまとめて記載します。

下垂体腫瘍(多発性内分泌腺腫瘍症1型)

下垂体腫瘍は大きくなると視神経という視力の情報が伝わる重要な神経を圧迫するので、視野狭窄などの目の症状がでることがあります。小さい腫瘍では腫瘍そのものによる症状はありません。ホルモンを分泌する腫瘍の場合は分泌されるホルモンによって症状が異なります。プロラクチンを分泌するときは女性の場合は出産後ではないのに乳汁が分泌されることがあります。成長ホルモンを分泌するときは背が高くなる巨人症や手足の先端が太くなる末端巨大症という症状があらわれます。副腎皮質刺激ホルモンを分泌するとクッシング症候群という病気の症状が現れます(副腎の病気に詳しい説明があります)。その他甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体ホルモンなども下垂体から分泌されますが、これらのホルモンを分泌する腫瘍は非常にまれです。

副甲状腺腫瘍(多発性内分泌腺腫瘍症1型、2A型)

副甲状腺に発生する腫瘍はほとんどが副甲状腺ホルモン(パラソルモン、略語でPTHと呼びます)を分泌します。PTHが過剰に分泌されると骨からカルシウムが血液中へ溶け出し、血液中のカルシウムが高くなり、尿中へカルシウムが多く排泄されます。血液中のカルシウムが高いだけでは通常は無症状ですが、非常に高い値になると意識混濁、昏睡などに陥ることがあります。骨が脆くなるため軽い外傷で骨折する(病的骨折)、腎臓や尿管、膀胱に石が発生する尿路結石で痛みが出るという症状がでることもあります。

甲状腺腫瘍(多発性内分泌腺腫瘍症2A、2B型)

甲状腺に発生する腫瘍は髄様癌という腫瘍です。自覚症状としては頚部のしこりがほとんど唯一の症状です。腫瘍が周囲へ浸潤するくらい進行すると、反回神経が麻痺して嗄声(声がかすれること)、誤嚥という症状が出ることもあります。頚部リンパ節へ転移するとくびが太くなる、触るとぐりぐりがある、という症状がでることもあります。

膵島腫瘍(多発性内分泌腺腫瘍症1型)

膵臓のランゲルハンス島から生じる腫瘍を膵島腫瘍と呼びますが、この腫瘍は大きくなるには年月を要すると考えられていますので、腫瘍が大きくなって胃や十二指腸の通過障害をおこし食事が食べられなくなる、吐くという症状が出ることはまれです。肝臓でつくられる胆汁を腸へ排泄する総胆管という管をふさいで黄疸という症状がでることもめずらしいことです。膵島腫瘍から分泌されるホルモンで特有の症状があります。「膵内分泌腫瘍の病気」の項にも詳しく書いてあります。インスリンが過剰に分泌されると低血糖になりますので、意識障害、意識消失という症状が発作的におこります。意識を消失して救急外来へ搬送されてきた患者さんの病気がインスリノーマだったということもあります。ガストリンが過剰に分泌されるときは胃や十二指腸に消化性潰瘍が繰り返し発生します。ガストリン産生膵島腫瘍はむかしは消化性潰瘍による出血や穿孔性腹膜炎が死亡原因のトップでした。グルカゴンを分泌する腫瘍では、特有の皮膚症状、糖尿病、体重減少、口内炎などの症状がでることがあります。VIPオーマでは激しい水様下痢をおこすことがあります。

副腎褐色細胞腫(多発性内分泌腺腫瘍症2A、2B型)

副腎は体の奥深いところにありますので、よほど大きくならないと腫瘍そのものによる圧迫症状などはでません。褐色細胞腫からはカテコラミンという強い作用を持つホルモンが分泌されますので、通常は大きくなる前にカテコラミン過剰による症状がでます。詳しくは「副腎の病気」のところを参照してください。