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乳癌(乳がん)

ほとんどの乳癌は乳管(乳汁の通り道)の壁の細胞が何らかの原因によって無限に増殖するようになって発生します。増殖のパターンとしては乳管の中を広がる「乳管内進展」と、乳管の壁を破って乳管の外(間質といいます)に広がる「浸潤」という、2つがあります。浸潤の部分は腫瘤(しこり)として触れやすいのですが、乳管内進展は腺葉に沿って進むので、扇形に広がるため触れにくいものが多くなります。乳管内の部分は触診では全く触れない(非触知)かぼんやり硬くふれるだけのことが多く、マンモグラフィや超音波などの画像検査が重要となります。ごく早期の乳癌は乳管内にとどまっていますが(この時期に見つかった乳癌を「非浸潤癌」と呼びます。詳しくはあとで説明があります)、癌細胞にさらに異常が加わると、乳管の壁を破って間質へ進展していくものと考えられています(この時期に見つかった乳癌を「浸潤癌」と呼びます)。間質に進展すると、そこにある血管、リンパ管に癌細胞が侵入するようになります。その時期になると乳腺以外の部位に転移をきたす可能性が出てきます。(乳腺図2)

乳腺図2

乳癌の症状

乳癌の初発症状(発見のきっかけ)は、80~90%が乳房のしこりであり、他に乳房の疼痛が約10%、さらに少数ですが、乳頭分泌(乳首から液体とくに血液などがでる)、腋窩腫瘤(わきの下のリンパ節が腫れる)、乳首のただれ(パジェット病という乳頭に発生する特殊な乳癌)などもあります。乳癌のしこりは通常ごつごつした硬いかたまりとして触れ、乳腺の中でべたっとへばりついたような感じで多くは動きがあまりよくありません。マンモグラフィを使った検診の普及による症状の無い乳癌の早期発見がぜひ必要です。

乳癌は、非浸潤癌、浸潤癌、パジェット病の大きく3つに分けられますが、しこりを触れる乳癌のほとんどは浸潤癌で、さらに細胞の形により硬癌、乳頭腺管癌、充実腺管癌などの一般的な癌と、粘液癌などの特殊型とに分類されます。非浸潤癌は「乳管内」の部分のみから成り立っている癌で、しこりを触れない段階で乳頭分泌や画像検査で見つかった癌が多く含まれます。この非浸潤癌は乳管の中に留まっているので周辺の血管やリンパ管に癌細胞が入り込む可能性は理論的にはありません。よって他の臓器やリンパ節には転移をおこさないごく早期の癌ですが(まれに大きなかたまりを作ることもあります)、残念ながら日本ではとても少なく、1997年の全国統計で乳癌全体の5%程度です。マンモグラフィでの検診が進んだ欧米では非浸潤癌が20%以上を占めており、日本でも、このようなごく早期の乳癌の発見が増えることをめざしています。パジェット病は、乳頭のびらんでみつかり多くはしこりを触れない早期の癌で、全乳癌の1%未満の稀なものです。

乳癌の発生には女性ホルモン(エストロゲン)が関与しているので、ハイ・リスクグループ(高危険度群)としては、初潮が早い、閉経が遅い、初産年齢が遅い、未産など、エストロゲンにさらされる期間が長いことが乳癌にかかりやすい条件として挙げられます。また、高脂肪食、肥満も関与します。これは特に閉経後の女性で、脂肪組織でエストロゲンが作られるからです。もともと欧米に多かった乳癌が日本で増えているのは、女性の社会進出などのライフスタイルの変化や食生活の欧米化が、大きく影響しているからと考えられています。また、血のつながった家族や親戚に乳癌にかかった人が多くいる場合も要注意といわれています。ただし本当の意味での遺伝性の乳癌(乳癌にかかりやすい特定の遺伝子が親から子へ引き継がれるもの)はごくわずかで、多くは体質や食生活などが似ている影響と考えられています。血のつながった方に乳癌の人が多い場合は、若いうちから自分の乳房に注意して乳癌検診を積極的に受けていただくのが良いでしょう。