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乳腺

治療について

乳癌の治療の究極の目標は体の中から乳癌細胞を消し去ることです。この目的のために昔(といってもほんの20-30年前まで)は手術でしこりを含む乳腺、近辺のリンパ節を大きく切除していました。乳癌を局所の病気として考え、広い範囲を切除すればするほど良く治ると外科医が思いこんでいた時期もありました。しかし、この考えは欧米における臨床試験の結果により否定され、乳癌治療における手術治療は唯一無二の絶対的なものではなくなっています。現在乳癌に対する治療には手術、放射線治療、薬物療法(化学療法やホルモン療法)があり、これらを適宜組み合わせて治すのが普通です。

乳癌の治療が手術しか無かった時代ではもはやありませんが、それでも最も基本となる治療は手術で、原発巣(乳腺内に最初に発生した腫瘍のこと)を体から除去するには一番確実な方法です。手術以外の抗癌剤、放射線治療では今のところ、乳腺内にできた触知できるような乳癌のしこりを消滅させることは困難です。乳癌に対する治療の第一歩はやはり手術と言うことになります。ただし進行度によっては、先に薬物療法等で癌を小さくしてから(術前薬物療法)手術する場合もあります。

手術が治療の基本であることは今のところ認められた考え方ですが、これだけで乳癌は治ると考えてはいけません。乳癌はしこりを触れるような大きさになった時期には原発巣から癌細胞が体の他の部位に流れていって転移巣を形成しつつある可能性があると考えられています。乳癌は比較的早期より全身病であるという考え方です。この考え方は欧米での臨床試験の結果から現在おおむね受け入れられています。種々の検査で検出できないような微細な癌細胞のかたまりは薬剤や放射線で消滅させることが可能なことが多いと考えられ、手術に加えこれらの治療手段を組み合わせることが標準となっています。

癌の治療は治療技術の進歩とともに変化しますが、その時点で得られている科学的な根拠に基づいた最善の治療を「標準的治療」と呼びます。ただし、標準的治療は「完全な治療」ではありません。新しい治療の有用性を科学的に検証する「臨床試験」によって、癌の治療成績を上げる努力が世界の各地で常に行われており、臨床試験によって現在の標準とされる治療、よりよい治療であることが証明されれば新たな標準治療が生まれます。つまり現在の標準治療は臨床試験の積み重ねの中から生まれてきた治療法です。逆に現在行われている臨床試験は将来の標準治療となりうる治療であり、治療の立派な選択肢のひとつであるといえます。