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副腎

手術後の合併症について

腹腔鏡手術では、トロッカー(おなかの外と内側をつなぐ細い管)を入れるときにおなかの中の内臓や血管を傷つける合併症が報告されています。おなかをふくらませる炭酸ガスが血液中に入るガス塞栓症という合併症も報告されています。炭酸ガスは空気と比べて血液に溶けやすく、血液の中に入ってもガス塞栓による障害は発生しにくくなっていますが、ガス塞栓をおこした臓器の障害がおこることが報告されています。
手術中は副腎以外の臓器を傷つけた合併症が報告されています。特に肝臓、腎臓、脾臓、下大静脈などが傷ついた場合は出血が問題となります。たくさん出血したときは輸血が必要になります。膵臓の損傷、特に膵管を傷つけた場合は、手術後の膵液がお腹の中に漏れることがあります。膵液は刺激性がありますので腹膜炎を起こす危険があります。この場合は、絶飲食だけで治ることも多いのですが、改善しない場合は再手術が必要になることがあります。
炭酸ガスでおなかをふくらませると心臓に負担がかかっているので、不整脈、心筋梗塞などの予期しない合併症がおこることもあります。
手術を終えるときは血が止まっている状態で終わりますが、手術終了のときには出血していなかったものの傷を閉じて病室に帰ったあとから出血しだすこともあります(後出血と呼びます)。後出血の程度がひどければ手術室に戻り再度全身麻酔をかけ傷をもう一度開き止血術をおこなわなければいけないことがあります。
手術した部位に感染がおこりキズを開いて膿みを出す処置を要することがあります。これらはすべてをあわせても数%以下程度で、多くの場合はこのような合併症なく手術可能です。

腹腔鏡を使った手術、開胸開腹による手術ともに、命に関わるような危険性はきわめて低いと言っていいと思われます。しかし上でも述べたように手術に伴う合併症の可能性はあります。腹腔鏡を使った手術では、手術中の所見(出血が多くて止血できない、腫瘍が周囲の臓器にくっついていてはがれない、浸潤していて腹腔鏡では切除できないなど)によっては、安全のため開放手術に切り替える必要があります。開放手術は腹腔鏡が開発される以前に普通に行っていた手術方法に変更することで、大きく皮膚切開を行って腫瘍を摘出する手術のことです。皮膚切開は手術内容によって異なりますが、腹腔鏡の手術創を連続させるだけ(下図のA)で済みますが、Aだけでは手術ができないときは図のBも切開を追加することがあります。

図(開放手術移行時の皮膚切開)

2005年日本全国のアンケート調査では、4883例の腹腔鏡下副腎摘出術が集計され、開放手術への移行が159例(3.3%)と報告されています。わたしどもの経験では2008年12月までに346例の腹腔鏡下副腎摘出術を行い、開放手術に移行したのは5例(1.5%)でした。