新学術領域研究(研究領域提案型) 脳タンパク質老化と認知症制御

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計画研究A01『脳タンパク質老化と神経回路破綻』

<研究代表者>
A01-1 祖父江 元(名古屋大学・教授)、A01-2 谷内 一彦(東北大学・教授)

健常高齢者、認知症発症高リスク症例などを対象に、前方向的に幅広くコネクトーム解析を行うとともに、タウ、Aβ、α-シヌクレインのPETイメージングを行い、コネクトーム解析との関連解析を展開し、老化タンパク質の蓄積と、神経回路破綻および疾患発症との関連を解明する。

A01-1祖父江グループ

研究課題名 『脳タンパク質老化と神経回路破綻の可視化』
研究代表者 祖父江 元(名古屋大学・教授)
分担研究者 渡辺 宏久(名古屋大学・特任教授)
連携研究者 伊藤 健吾(国立長寿医療研究センター・部長)
須原 哲也(放射線医学総合研究所・部長)
田邊 宏樹(名古屋大学・教授)
勝野 雅央(名古屋大学・教授)
熱田 直樹(名古屋大学・講師)
清水重臣(東京医科歯科大学・教授)
坂内博子(JSTさきがけ/理化学研究所・さきがけ専任研究者)

認知症にかかわる重要な脳タンパク質 (TDP-43、タウ、α-シヌクレイン、Aβ)が、健常高齢者や認知症・神経変性疾患のat risk例において、どのように老化変性して認知症に至るのかを病変の可視化に基づいて示し、ヒトタンパク質老化の過程を解析する。
さらに、タンパク質老化に打ち勝つ人々の臨床画像特徴解明に務め、経時的臨床像、各種バイオリソースとの関係も検討する。

1000名規模の健常高齢者に高次脳機能検査、コネクトーム解析(安静時脳機能MRI、安静時MEG、64軸拡散テンソル画像等)、脳容積画像、採血を脳とこころの研究センターにて行う。
default mode networkをはじめとした安静時脳内神経回路破綻例、短期間で認知症やパーキンソン病などへ移行しうる症例には、品質管理とプローブ導入を含めて谷内グループや放射線医学総合研究所と協力の下、タウ、α-シヌクレイン、AβなどのPETイメージングを、名古屋大学、長寿医療研究センターなどで行い、各種タンパク質の分布、それぞれの分布と神経回路破綻・神経所見・高次脳機能・ADLとの関連を多面的に解析する。

さらに縦断的なコネクトーム画像とPET所見の観察から、タンパク質老化の経時的な分布変化と、神経回路、高次脳機能などの変化との関連を解析する。
また、新規開発プローブの臨床応用研究や、PETにおける脳タンパク質蓄積と脳内神経回路破綻との関係を検討可能な次世代型統計画像解析研究を推進する。

そして、次世代シーケンサーを用いて既知の認知症、神経変性疾患関連遺伝子の網羅的シーケンス、エピゲノム解析、遺伝子異常・多型と臨床像や画像との関連解析などを推進し、1) 正常から認知症に至るヒトにおけるタンパク質老化過程の可視化、2) タンパク質老化に打ち勝つ人々の臨床画像特徴の解明、3) 経時的臨床像、各種バイオリソースとリンクを推進する。

脳タンパク質老化と神経回路破綻のヒトでの可視化(祖父江グループ, A01)

A01-2 谷内グループ

研究課題名 『蛋白特異的PETイメージングによる神経回路破綻機序の解明』
研究代表者 谷内 一彦(東北大学・教授)
分担研究者 岡村 信行(東北医科薬科大学・教授)
古本 祥三(東北大学 サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター・教授)

種々の神経変性疾患では、β-アミロイド、タウ、α-シヌクレインなどのタンパク質の脳内濃度が発症前段階から高まり、神経変性やシナプス障害の原因となる(コンフォメーション病)。
これらのタンパク質の蓄積過程を生体で計測するPET分子イメージングは、疾患特異的な病変を発症前段階で検出することを可能にし、また予後を正確に予測する手段として期待されている。
さらにPET分子イメージングは、上記タンパク質を標的とした治療薬開発におけるサロゲートマーカーとしても活用可能である。
したがって将来的には早期治療介入による発症抑止に大きく貢献する技術として強く期待されている。

我々の研究グループは世界に先駆けてタウ選択的PETプローブの開発に着手し、タウ選択的PETプローブ[18F]THK-5105、[18F]THK-5117の開発と実用化に成功している。

本臨床研究で使用する[18F]THK-5117と[11C]PiBは、それぞれタウ、 β-アミロイドに対する高い結合選択性を示し、高いダイナミックレンジでアルツハイマー病の二大病理像の空間分布の可視化を実現する。
両タンパク質の蓄積量とその脳内分布を各個人で計測し、縦断的なPET画像データを解析することによって、各タンパク質蓄積の時間的・空間的進展の違いと蓄積タンパク質同士の相互作用の有無を明らかにすることができる。
同時にMRI画像解析、高次脳機能検査から得られた所見を対比させることにより、タンパク質老化と神経変性、シナプス障害、認知機能障害との関連性を臨床データに基づいて検証することが可能となる。

PET分子イメージングのターゲットはβ-アミロイド、タウだけにとどまらない。 α-シヌクレインやTDP-43を標的としたPETプローブ開発も現在進行中である。

蛋白特異的PETイメージングによる神経回路破綻機序の解明