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2017年3月1日(水)
名古屋大学 脳とこころの研究センター市民公開講座「名古屋大学における脳とこころの病気の研究最前線」(後援:新学術領域研究「脳タンパク質老化と認知症制御」)終了報告
演題 脳の老化と認知症予防
演者 祖父江 元(名古屋大学医学系研究科、脳とこころの研究センター)
演題 最新の低侵襲手術”超音波”でふるえを治す
演者 前澤 聡(名古屋大学脳とこころの研究センター)
演題 氏と育ちはこころの病にどう関係するのか
演者 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野 親と子どもの心療学分野)
司会 若林 俊彦(名古屋大学脳神経外科)
日時 2017年1月29日(金)13:00~15:00
会場 名古屋大学医学部鶴友会館
聴衆 107名(定員90名)
演題:脳の老化と認知症予防 祖父江 元
内容:脳とこころの研究センターで行っているPETによるタウタンパク質およびβアミロイドタンパク質の可視化、さらにはMRIを用いた脳内神経回路の可視化を通じたアルツハイマー病をはじめとする神経変性性認知症の病態機序解明研究について、新学術、融合脳、革新脳に関連している最新の結果をプレゼンした。また、健常者1000名コホート研究から明らかになってきた、認知症発症に打ち勝つ脳のメカニズムについても提示し、脳の老化と認知症予防への現状と今後の展望を示した。
演題:最新の低侵襲手術“超音波”でふるえを治す 前澤 聡
内容:“ふるえ”の中で本態性振戦は、内科的治療が無効もしくは限定的で、子細な画像評価を基にして、小脳の出力経路を選択的に電気凝固や電気刺激で遮断する方法が有効である。これまでは侵襲的治療しか出来なかったが、非侵襲的かつ正確な方法として、超音波を一点に集束する事で同部を熱破壊するMRガイド下超音波集束治療が開発された。この先進的な治療は、頭部に穿頭や切開を入れる事なく施行でき、神経調節治療(ニューロモデュレーション)の新しいモダリティとして注目されている。上記について、市民向けに分りやすく説明した。
演題:氏と育ちはこころの病にどう関係するのか?— 遺伝?、育ち? 尾崎紀夫
内容:精神障害はどうして起こるのか。「遺伝」や「遺伝子」のせいなのか、それとも親の「育て方」や「環境」のせいなのか。当事者や家族からの相談多い、「遺伝か?育ちか?」という疑問に答えるべく、講演を行った。講演では、遺伝や遺伝子に関する教育・報道、精神障害とは何か、精神障害に関する誤解、遺伝カウンセリングとは何か、発症に遺伝と環境が与える影響、精神障害と育ち、等について概説した。精神障害は、遺伝だけ、あるいは環境だけで決まるものではなく、遺伝と環境の双方が関与していることを伝えた。その上で、今後の研究の方向性として、ゲノム解析結果に基づく疾患iPS細胞を用いた病態解明から臨床応用という研究の方向性を提示した。
聴衆の特徴と感想
若者から高齢者まで定員を超える多くの聴衆が参加し、補助椅子を多数出す盛況であり、全ての講演において、熱心にメモを取る姿が多くみられた。会の終了後には、それぞれのテーマに対して、個別相談形式で30分近く質疑応答が行われた。各演者に対して脳とこころの疾患に関する様々な内容について活発な質問があり、将来的な治療の可能性、進行中の研究に関する最新の情報について回答がなされた。また聴衆からはより大きな会場で、多くの参加者が聞けるようにして欲しいとの要望もあり、今後検討していくこととなった。
当日の様子
左上:長縄センター長、中上:祖父江プログラムディレクター、右上:若林教授、左下:尾崎教授、右中:満員の会場の風景、右下:前澤特任准教授