核医学 (アイソトープ)

核医学検査にはin vivo検査とin vitro検査の2種類があります。

in vivo検査
放射性同位元素(ラジオアイソトープ)と呼ばれる放射線(γ線)が放出される物質で標識した薬剤を体内に投与し、体内から放出される微量な放射線を画像化する検査です。
検査内容により使用される薬剤(放射性医薬品)が異なり、当院では、約40種類ほど取り扱っています。

in vitro検査
被験者から採取した血液や尿などを試験管内で体外診断用放射性医薬品と混合し反応させることで、試料中の微量物質を測定する検査です。
内分泌器官から放出されるホルモン量を測定することで病気の早期発見に貢献ができ、また腫瘍マーカーの測定によってがん診断や治療後の経過観察を行うことも可能となります。このように体内にごく僅かしか存在しない物質の測定に適した検査になります。

PET/CT検査

PETとは、Positron Emission Tomography (陽電子放出断層撮影) の略で、核医学検査の一つになります。
CTなどの画像検査では、目的部位に対して検査を行うことが通例ですが、PET検査では、全身検査を行うことが可能となっています。現在ブドウ糖代謝の指標となる18F-FDGという薬剤を使用したFDG-PET検査が主流となります。
また、CT検査では、形態情報から診断を行うのに対し、PET検査では、機能情報から診断を行う検査になります。当院では、PETとCTの両方が備わっている装置が導入されており、形態情報と機能情報の双方を用いた診断を行うことで、診断能を向上します。

当院では世界初のソフトウェアを搭載した装置を2台導入しており、より高精度な検査が可能となりました。CTは診断でも使用される16列マルチスライスCTを搭載し各種技術により被曝線量を低減し、高画質な画像を得ることが可能となっています。

当院はサイクロトロンを所有しているため、PET/CT検査で使用する薬剤はすべて院内での生成が可能となっています。当院で生成しているPET/CT用薬剤は約10種類です。このうち、腫瘍や炎症部位を特定する18F-FDGを用いたPET/CT検査が一般的に知られています。その他11C-メチオニンを用いた頭部PET/CT検査や、18F-NaFを用いた前立腺癌骨転移検査等も行われております。(詳細は“特殊検査”を参照)
また、サイクロトロンのメンテナンス等の際には18F-FDGのデリバリーも年に数回行っています。

特殊検査
当院はサイクロトロンを所有しているため、18F-FDGを用いたPET検査以外にも半減期が短い11C を使用した11C-メチオニンや、18F-NaFなど特殊な薬剤(いずれも保険適用外)を使用した検査も行っています。11C-メチオニンは、18F-FDGの生理的集積により観察しにくい脳腫瘍の患者さんに対して、頭部PET/CT検査を行っています。薬剤投与から20分後に撮像しています。18F-NaFは全身の骨転移の診断に有用です。PET/CTはガンマカメラより高い空間分解能を有するため、骨シンチグラフィよりも骨の描出がきれいであることが特徴です。薬剤投与から40分後に30分近くかけて全身を撮像してます。

 

18F-FDG PET/CT検査をご予定の患者様へ

18F-FDG PET/CT検査は糖代謝を利用した検査なため、血糖値が重要になります。そのため、検査前に食事を摂取された場合や高血糖の場合は検査不可となる場合もあるためご注意ください。

そのため当院では、下記注意事項の徹底をお願いしております
検査結果に非常に多大なる影響がありますので、本検査を受ける際はご注意ください。

・全身PET/CT検査:6時間絶食(糖分が含まれる飲料含む)
・心臓PET/CT検査:18時間絶食(糖分が含まれる飲料含む)+検査前1週間の高タンパク質低糖食

SPECT/CT・ガンマカメラ

ガンマカメラ装置は体内から放出されたγ線を信号として受け止め、コンピュータ処理し画像化する装置です。
一方、SPECT/CT装置は、ガンマカメラ装置のうち、スペクト(SPECT:Single Photon Emission Computed Tomography)撮影法と呼ばれる、体の断層像も撮影可能な装置で、当院ではCTを搭載した装置を2台導入しています。

核種のエネルギーごとに対応したコリメータを用いることで、適切な画像を取得することができます。また、画質向上のために近接軌道収集が必要となるため、狭いところが苦手な方は担当技師の方にお申し出ください。

SPECT/CT検査:
主に、SPECT/CT装置では、心筋シンチグラフィ、脳血流シンチグラフィ、ガリウムシンチグラフィ、センチネルリンパ節シンチグラフィなどの検査を行います。SPECT画像とCT画像を融合させるため、従来の核医学検査で得られる機能画像に形態情報も得られるため1度の検査で得られる情報が多いのが特徴です。また、当院では、小児がんの一つである神経芽腫の治療を積極的に行っているため、その診断に有用である123I-MIBGを用いた副腎髄質シンチグラフィの件数が他院と比較すると多くなっています。

ガンマカメラ検査:
主にCT撮影が不要なシンチグラフィ検査である腎動態シンチグラフィ、骨シンチグラフィ、心筋交感神経シンチグラフィなどの検査を主に行っています

当院の核医学治療(内用療法)

α線やβ線を放出する放射性同位元素(ラジオアイソトープ)で標識した薬剤を体内に投与し、目的部位を内側から治療する放射線治療の一つで、核医学治療(内用療法)と呼ばれています。
腫瘍細胞や甲状腺細胞を選択的に照射する治療で主に使用されており、当院では131Iを用いた甲状腺がんの残存腫瘍に対するアブレーション治療やバセドウ病やプランマー病の内用療法及び、α線放出核種である223Raを用いた去勢抵抗性前立腺癌の骨転移に対する治療も行っています。
バセドウ病やプランマー病の内用療法においては、使用する治療薬の投与量を決定するために甲状腺摂取率の測定も行っており、131I-NaIの摂取率から有効な半減期を測定し患者ごとに適した線量を用いて治療の方を行っています。

α線、β線とは?
核医学検査で使用される薬剤は主にγ線と呼ばれる放射線を放出する核種で、飛行距離が長いため検出器で捉えることが可能となります。一方β線やα線と呼ばれる放射線は飛行距離が短く、大半が体外に放出されることがありません。α線に関してはさらに飛行距離が短いため、取り込まれた細胞外へ放出されることがほとんどないことがわかっています。この特徴を利用して目的部位に薬剤を取り込まして体内から放射線を放出することで、周囲への被ばくはほとんどなく、目的部位に限局した治療が可能となります。

 

 

撮影室 装置名 特徴
検査室1 biograph Horizon (SIEMENS) 陽電子断層撮影(PET/CT)
検査室2 Biograph Horizon Flow VJ30 (SIEMENS) 陽電子断層撮影(PET/CT)
検査室3 Symbia Pro.specta (SIEMENS) アイソトープ検査(SPECT/CT)
検査室4 Symbia T6 (SIEMENS) アイソトープ検査(SPECT/CT)
検査室5 Symbia Evo Excel (SIEMENS) アイソトープ検査(ガンマカメラ)
検査室7 AZ800-CZT, AZ800 (安西メディカル) 甲状腺摂取率測定
  ガンマシステム ARC7001 (日立) アイソトープ検査(試料測定)