1. 臨床研究

寺倉精太郎講師、石川裕一講師、島田和之講師、牛島洋子病院講師、葉名尻良助教、古川勝也病院助教(卒後臨床研修・キャリア形成支援センター)、佐藤貴彦助教、西脇聡史講師(先端医療開発部)、鍬塚八千代病院講師(先端医療開発部)

当教室では臨床治験、JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)などの多施設共同臨床研究に積極的に参加するとともに、独自の臨床研究も立案・実施し、造血器疾患における治療法の確立に取り組んでいます。

白血病、骨髄異形成症候群に関する臨床研究

JALSGの事務局機能を担うとともに、急性骨髄性白血病(AML209GS, CBF-AML209-KIT、AML209-FLT3-SCT試験:清井仁)、急性リンパ性白血病(ALL202-U、ALL202-O試験:早川文彦)などにおいて当教室のメンバーが研究代表を務め、またそれらの臨床研究の成果を元に、日本医療開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業の代表を務めています(「急性骨髄性白血病におけるPDXモデルで意義づけられた分子層別化システムの確立と臨床的実効性と有用性の検証」H29-31年度 代表:清井仁、「PDX治療モデルを併用した治療抵抗性急性骨髄性白血病クローンの成立過程に生じる分子病態に基づく分子層別化システムの確立と標的治療薬開発に関する研究」R2-4年度 代表:清井仁、「PDX治療モデルと継時的臨床検体の統合的マルチオミックス解析に基づく急性骨髄性白血病の分子層別化と難治性クローンの克服に向けた治療戦略の構築に関する研究」R5-7年度 代表:清井仁、「AYA世代における急性リンパ性白血病の生物学的特性と小児型治療法に関する研究」H26-28年度 代表:早川文彦「AYA世代急性リンパ性白血病の小児型治療法および遺伝子パネル診断による層別化治療に関する研究」H29-R1年度 代表:早川文彦、「AYA世代および成人T細胞性急性リンパ性白血病の小児型治療適用における限界年齢と新規バイオマーカー探索に関する研究」R2-4年度 代表:早川文彦)。適格症例は全例をJALSG試験に登録するとともに、JALSG研究以外にもFLT3阻害剤の感受性、耐性化に関わる分子異常の解明を目的とした多施設共同臨床研究を実施しています。これら研究を通じて、白血病の予後の改善を目指しています。

悪性リンパ腫、多発性骨髄腫に関する臨床研究

悪性リンパ腫や多発性骨髄腫など成熟リンパ球系腫瘍に対しては、JCOGリンパ腫グループが行う臨床試験に参加しています。JCOGリンパ腫グループでは、現在、JCOG1411(未治療低腫瘍量進行期濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブ療法早期介入に関するランダム化比較第Ⅲ相試験)、JCOG1911(高齢者または移植拒否若年者の未治療多発性骨髄腫患者に対するダラツムマブ+メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ(D-MPB)導入療法後のダラツムマブ単独療法とダラツムマブ+ボルテゾミブ併用維持療法のランダム化第Ⅲ相試験)、JCOG2008(未治療高腫瘍量濾胞性リンパ腫に対するオビヌツズマブ+ベンダムスチン療法後のオビヌツズマブ維持療法の省略に関するランダム化第Ⅲ相試験)などの各試験が進行中であり、これらの試験に積極的に参加しています。また、JCOG以外の濾胞性リンパ腫やホジキンリンパ腫などの各病型を対象に行われている多施設共同研究に積極的に参加し、血管内大細胞型B細胞リンパ腫に対する臨床第Ⅱ相試験(PRIMEUR-IVL試験)(日本医療開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業「未治療血管内大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療研究」R1-3年度 代表:山口素子)の研究事務局を担当することを通じて、治療成績の向上を目指しています。

造血幹細胞移植に関する臨床研究

臍帯血移植は、骨髄移植や末梢血幹細胞移植と比べて生着率が低く、かつ生着までの期間が長いという課題を抱えています。また骨髄移植や末梢血幹細胞移植と同様、GVHDを合併することもあります。そこで私たちは、生着促進とGVHD予防の2つの効果を期待して、骨髄内で造血細胞の増殖や分化を支持する働きをもつ間葉系幹細胞を、院内の細胞増幅施設で作製し、臍帯血移植の直前に骨髄内に輸注する臨床試験を実施してきました。この試験は、日本医療開発機構(AMED)の免疫アレルギー疾患等実用化研究事業「間葉系幹細胞を利用する新しいGVHD予防法の開発と次世代シークエンサーによる遺伝子情報に基づく新しいドナー選択法の開発に関する研究」班(H29-31年度 代表:村田 誠)におけるプロジェクトの一つとして実施され、最近その結果をまとめて報告しました。現在は、その研究成果を広く一般化できるよう、企業との共同研究の可能性について検討しています。また、名古屋BMTグループの各施設とともに多施設共同研究を行ったり、日本造血・免疫細胞療法学会による全国規模の後方視的研究を行ったりしています。

臍帯血移植における骨髄破壊的移植前治療に白血球を増やす薬であるG-CSFを併用することによって、骨髄内に残存する白血病幹細胞を末梢血に動員して化学療法を効きやすくさせ、ひいては生着を早め、同時に再発率を抑えるとする後方視的データが報告されています。この後方視的データを確認するために、私たちは、「成人骨髄性血液悪性腫瘍に対する臍帯血移植におけるG-CSF priming 骨髄破壊的前治療の有効性に関するランダム化比較試験臨床第Ⅲ相試験」を計画、多施設共同研究として実施しています(AMED「臍帯血移植後の造血・免疫再構築を促進する新規治療法の開発研究」班 H29-31年度)。