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血液・腫瘍内科学教授 清井 仁

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座
血液・腫瘍内科学 教授 清井 仁

名古屋大学血液・腫瘍内科学教室は、1919年(大正8年)11月勝沼精藏先生の愛知県立医学専門学校教授就任時に設立された103年の歴史と伝統がある教室です。勝沼先生は、同校が昇格した愛知医科大学、官立移管された名古屋医科大学、1939年に創立された名古屋帝国大学、そして新制名古屋大学(内科学第一講座)の教授を務められ、日本血液学会の創立など我が国の血液学の進歩に多大な貢献をされました。まだ抗がん剤が開発されていない当時、勝沼先生は1935年(昭和10年)第32回日本内科学会総会宿題報告の最後に、「白血病の如きは全然治療の根本方針すら指示することを得ず、真性悪性腫瘍よりも更に急激にして残酷なる臨床的転記を診断確定とともに予言しなければならない現今の立場を遺憾この上もないことと思う。」と記されました。この一文は、血液がんの診療に対する当教室の姿勢の礎石となり、一人でも多くの患者さんに治癒をもたらすために、臨床的あるいは基礎的な研究を行うだけでなく、それらを併せ持ったPhysician-Scientistを輩出する気運と伝統が脈々と受け継がれています。

現在、抗がん薬の開発や造血幹細胞移植療法の導入によって、白血病をはじめとする血液がんは不治の病ではなくなりました。また、最近ではゲノム解析技術の進歩による分子層別化や多数の分子標的薬の開発、細胞・免疫療法の実用化など、血液がんの治療は目覚ましく進歩しています。しかし、どんなに新しい薬剤や医療技術が開発されても、それらを適切に患者さんに提供できなければ病気を克服することはできません。ゲノム時代の医療として、Precision medicineの実践が進められています。血液疾患はPrecision medicineの実践に最適の領域であり、既に多くの血液疾患の診断、治療において実用化されていますが、より実践的かつ有用性の高いものにするためには更なる改善が必要です。特に、患者さん、ご家族に寄り添うものでなければ、満足した医療を受けていただくことはできません。そのため、私たちは研究対象とする血液疾患については、その病態解明から新規薬剤開発を含めた新規治療法の確立までを包括したテーマとして研究を進めることを心懸けています。附属病院では、「血液内科」として全ての血液疾患の診療に積極的に取り組んでいます。2020年に改修を終えた血液内科病棟(3W病棟)は無菌病室19床を備え、病気や治療によって免疫力の低下した患者さんにも安心して療養していただける配慮がなされています。全ての患者さん・ご家族に満足して戴ける安全かつ最高レベルの医療を提供することを目標に、スタッフ一同研鑚と改善を行なっています。

血液・腫瘍内科学一同

医師にとっての血液疾患診療の魅力は、診断から治療まで診療の大部分を自分たちで行えることにあります。また、患者さんの病態に応じて、その時点での血液や骨髄細胞を比較的容易に観察することができます。血液疾患に限ることではありませんが、病態解明を行っていく上で最も重要なことは、患者さんの身体の中で起こっている現象を観察・検討することです。患者さんから得られた検体にこそ真実が存在しています。私たちは常に患者さんの病気の状態を理解し改善していくことをモチベーションとして研究を行い、その成果を患者さんに還元することを目指しています。そのために重要なことは患者さんの病気の状態を詳細に把握することです。患者さんの何気ない訴えや診察所見が病態解明の端緒となることもあります。優れた臨床医であることが優れた研究成果を生み出す原点であると思います。患者さん、ご家族から信頼されてこそ、病気の診断、治療、研究に役立つお話を聞くことができます。私たちは病気を治すのではなく、病気の患者さんを治す血液内科医を育てていきたいと思っています。そのことが優れた医師あるいは研究者としてだけでなく良識ある社会人としての成長につながるものと確信しています。

当教室は、多くの関連病院・研究機関および同門の先生方に恵まれ、そして支えられています。名古屋大学だけでなく、関連施設と一体となった卒前・卒後・大学院教育を提供できる環境が整っています。血液・腫瘍学を志す先生方には、卓越した血液臨床医、血液学分野に広く貢献できるPhysician-Scientistとしてだけでなく、臨床腫瘍、輸血・細胞治療、感染・免疫、臨床疫学、トランスレーショナルリサーチなどの分野でも活躍できるように同門会が一体となってサポートいたします。また、医師だけでなく、薬剤師、臨床検査技師、企業研究者も大学院生として研究に励んでいます。製薬企業との共同研究も積極的に進め、新たな治療薬の開発に取り組んでいます。

私たちは一人でも多くの仲間とともに、血液疾患の病態解明と新たな治療法の開発に貢献したいと思っています。教室の研究あるいは臨床の中核となって戴ける博士課程、修士課程大学院生を、出身大学や経験を問わず募集しています。見学はいつでも可能ですのでお気軽にご連絡ください。