診療案内

専門としている病気の種類

胃外科

胃癌とは?

人間が食べた物は、食道を通って胃の入り口(噴門)を通り胃に貯えられ、また胃液で食べたものを消化すると胃の出口(幽門)を通り、十二指腸に送られていきます。胃の構造は内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、奬膜となっています。そして胃のもっとも内側にある粘膜から発生した癌が胃癌です。

疫学

胃癌による死亡者数は平成18年、年間約50000人で男女ともに肺癌についで第2位ですが、人口10万人あたりの胃癌による死亡者数は年々減少しています。これは検診により早期の胃癌が多く見つかり、胃癌の死亡率は減少したわけですが、胃癌自体の数は減っていません。

原因は?

胃はさまざまな食べ物や胃液をはじめとする消化液による刺激にたえずさらされています。国別では日本、韓国などアジアに多く、また日本の地域別には日本海側で高く、太平洋側で低いことから、塩分の摂取や喫煙などの食生活との関わりが注目されています。最近では胃癌の発生過程でヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の関与が示唆されており、ヘリコバクターピロリに感染することにより慢性萎縮性胃炎を引き起こし、がん化に関与し、ヘリコバクターピロリを除菌することで胃癌の予防効果になることもわかっています。

症状は?

はじめは上腹部の不快感や膨満感などであることが多いですが、これらの症状は慢性胃炎や胃十二指腸潰瘍などの良性疾患でも認められ胃癌に特異的ではありません。胃癌が進行した場合は食欲不振や全身倦怠感、癌からの出血による黒色便などが認められますが、早期の胃癌の大半は症状がなく、検診で偶然発見されることが多いです。

診断は?

一般にはバリウムを飲んで行うレントゲン検査と胃内視鏡検査で行います。その他、超音波内視鏡検査、腹部超音波検査、CT検査などがありますが、これらは胃癌とわかってからその病気の進行度を調べるためのもので、胃癌を発見するために行うものではありません。したがって胃癌を発見するにはレントゲン検査か胃内視鏡検査になります。

病期(胃癌の進行度)

日本では胃癌取扱い規約による病期分類が広く使用されています。
進行度を決める因子としては
T:粘膜から発生した癌が胃の壁のどこまでひろがっているか
N:どこのリンパ節まで癌が転移しているか
M:どこの臓器まで転移しているか(肺、肝、腹膜など)、によって決まります。

早期胃癌と呼ばれるものは、リンパ節転移の有無にかかわらず、癌が粘膜または粘膜下層にとどまるものをいいます。

これらのTNMの因子に基づいて進行度はstageIV期(リンパ節転移のない早期胃癌)からstageIV期(かなり進行していて手術で切除することが困難)へと分類されます。

治療は?

日本では2001年に日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」が作成され、それぞれのstageに応じた治療法が推奨されています。胃癌治療の基本は開腹手術ですが、開腹手術を必要としない内視鏡的切除から、手術のみでなく化学療法、放射線治療を用いた集学的治療まで病期に応じて異なってきます。

当科における胃癌治療について

 当科の胃癌治療における基本的概念は患者様のニーズに応じ、満足感を与える医療を行うことにあります。具体的には、外来で入院が予定された時点で入院から退院まで、その患者様に要求される治療法を日にち毎に詳細に記した予定表(クリティカルパス)をお渡しすることで、入院中の不安を軽減し、退院後の日常生活の予定が立てやすくなります。
 治療に関しては、当科は診断から治療にいたる全ての過程において、消化器内科、放射線科、化学療法科と密接に連絡を取り合い、胃癌治療ガイドラインに基づいて治療を行っています。進行度に応じて開腹手術を必要としない内視鏡的切除から、早期癌の場合は機能温存術式を、進行癌の場合は、時に周囲の大腸、膵臓、脾臓などを合併切除する拡大手術を行っています。また手術前に化学療法を行うことで癌を縮小させてから手術を行ったり、手術後に化学療法を行ったりと、患者様に応じた治療法を行っています。そして当科で行っている機能温存術式の一つが迷走神経温存術式です。胃の周囲には胆嚢や小腸にいく神経がネットワークのようになっています。胃の手術後の後遺症として以前から言われている胆石の発生、体重減少、下痢症状、ダンピング症状などの原因の1つは、手術の際にこれらの神経が切除されることです。そこでこれらの神経を温存しつつ癌を切除する術式を行っています。実際に大規模な手術後のアンケート調査により、神経を温存する術式を受けた患者様は胆石の発生と下痢の発生の頻度が減少した結果が得られています。また神経温存を温存することで癌の遺残も認めませんでした。以上のように患者様に応じて満足の得られるような医療を心がけています。