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(順不同、以下原文まま)

Johns Hopkins 大学留学報告

奥野 泰史

私は2011年3月から約3ヶ月間、Johns Hopkins Hospitalにて実習をさせて頂きました。今、帰国の飛行機の中でこうやって体験記を書き始めると、ようやくこの長くて、思い出深い経験が終わろうとしているのだなあと、しみじみ感じます。この留学のために努力してきた日々を思い出し、少し寂しいような気分にもなります。この飛行機を降りた時には、しっかり心を切り替え、次の目標に向かえるよう、ここでこの報告書を書き終えようと思います。

振り返れば、出発までの英語や医学との戦い、実習中の様々な困難や壁、それを乗り越える中で味わった達成感、留学のおかげで出会えた多くの人たち、仲間との楽しい思い出、挙げればキリがないほどに色んなことが頭をよぎります。まさに自分の大学生活の集大成とも言えるような、素晴らしい時間を過ごせたことに、今とても大きな達成感と感謝の気持ちを感じています。

1ヶ月目の実習は麻酔科で実習を行いました。麻酔科では、1人のResidentの下について、そのResidentの仕事を手伝いながら、学んでいきます。基本的には見学がメインで、あとは雑用といった感じでしたが、オペでは、日本のポリクリ同様、IV、A-line、気管挿管から、Ventilationの管理や血圧管理まで、様々な手技を実際にやらせてもらえました。初めは、指示がうまく聞き取れず、薬剤や機材の調達でさえ手間取ってしまったりしていましたが、次第に仕事の流れを覚えていき、徐々にスタッフとして機能できるようになってきている気がして、とても楽しかったです。そのほかに、当直を2度経験させて頂いたり、オペで一緒になった教授のラボを2日にわたって見学させて頂いたりと本当に充実した実習を行うことが出来ました。また、毎日様々な分野の最先端の手術を見学することができ、そういった面でもとても良かったと思います。

2ヶ月目は血液内科で実習を行いました。血液内科では毎朝の病棟回診に始まり、昼はカンファレンスとコンサルト、夕方はコンサルトの回診とAttendingによるショートレクチャーというスケジュールでした。血液内科の実習では、言語面でも知識面でもかなり苦労しました。最初は中々仕事も与えられず、見学ばかりになっていましたが、一緒に実習を始めた現地学生の協力もあって、徐々にコンサルトや病棟患者さんを割り当ててもらえるようになりました。カンファやレクチャーを通して多くの知識を培い、また実践的な経験も積むことが出来た実習でしたが、なによりも、この学生と1ヶ月間共に実習できたことは、自分にとって非常に大きな刺激となりました。

3ヶ月目の最後の実習は救命救急で行いました。 日々のシフトでは、平均して2,3人の患者さんを任せて頂き、問診と診察をして、アセスメントプランを考え、担当のResidentにプレゼンし、フィードバックを受け、再びResidentと一緒に患者さんの診察に向かいました。知識も用いる英語も、経験がそのまま実力に繋がっていくため、毎日成長を感じながら実習を行うことが出来ました。 それ以外にも現地学生と共に講義や実習を受けたり、救急車に乗ったりしました。実習の最後には、パワーポイントを使って症例発表も行わせて頂きました。また、数自体は多くないものの、IVや血ガス、縫合などの手技も経験させて頂き、本当に多くのことを学べた一ヶ月間でした。

実習以外の時間には、アメリカでご活躍されている先生方のもとを訪れ、色んなお話を聞かせて頂いたり、留学の仲間とアメリカ中を旅行したり、仲間の留学先を訪問したり、他の留学生と遊んだりと、充実していない日がありませんでした。

3ヶ月間という短い期間ではありましたが、本当に濃密で、Challengingで、充実した経験になりました。共に留学した仲間をはじめ、留学先や日本で出会った多くの友人達、先生方、そして国際交流室の先生方やスタッフの皆さん、私のこの留学を支えてくれた全ての人に、心からお礼を言いたいです。そして、今後多くの後輩が、この素晴らしい経験にチャレンジしてくれることを祈りながら、この報告書を締めさせて頂きたいと思います。

Johns Hopkins 大学留学報告

加藤 友大

この度、2010年3月末から6月末までの3ヶ月間、アメリカ合衆国Johns Hopkins 大学(JHU)に留学する機会をいただき、血液内科、一般外科、救急部で実習をさせていただきました。アメリカの医療・文化に触れ、多くの方々との出会いに恵まれた今回の留学は私の人生の中でかけがえのない3ヶ月となりました。

1つ目の実習科である血液内科では午前中が入院患者、午後がコンサルトの業務を行うスケジュールで、数回外来でも実習をさせていただきました。初めての実習科であったこの科ではすべてのことが新鮮であり、病室の患者さんに軽食として配られるチップスとジンジャエールや大きな車いすなど、たくさんの文化の違いに触れることができました。鎌状赤血球症をはじめとした日本ではあまり出会わない疾患にたくさん触れることができ、週一回開かれるグランドラウンドや、毎日お昼ご飯を食べながら行われるカンファレンス、勉強会などもとても興味深かったです。

一般外科では毎日、5時前から学生が行う回診、5時半頃からの回診、その後に講義、カンファレンスなどを行い、7時半には手術が始まります。どの手術、外来に入りたいかは、人手の足りないところがない限り学生同士で話し合って自分たちで選択でき、自分がどの症例を経験したいかを毎回考えることで主体的に学ぶことができました。土曜日は手術がないため、病棟に行くのも7時頃からでしたが、全体的に忙しい科でした。当直明けにもかかわらず元気に実習を行っている学生にすごいねと声をかけると、みんなやっているわ、と平然と返され、自分もモチベーションが上がったことを覚えています。現地の学生には何度もお世話になり、医師、患者との接し方などの病院での振る舞い方やカルテの書き方をはじめ、本当に多くのことを教えてもらいましたが、一番驚かされたのは彼らの勤勉さです。ご飯の時間を惜しんで実習に取り組む彼らとともに学ぶ中で、私も白衣のポケットにプロテインバーを入れておくことを覚えました。

救急部ではシフト、講義、カンファレンス、シミュレーション実習、症例発表などがあり、とても充実した実習となりました。ERではレジデントの方につき、患者の問診、身体診察を行った後、レジデントの方にプレゼンを聞いていただき、治療方針を議論し、一緒に診察をしてフィードバックをいただきました。先生方は忙しい合間をぬって検査や治療を決定するためのクライテリア、鑑別など多くのことを教えて下さいました。縫合や直腸診などいろいろなことをさせていただくこともでき、銃創、ナイフによる外傷性気胸や薬物乱用などをよく目にしたことも大変貴重な経験となりました。 以上のような実習のみならず、今回の留学中には多くの方とお会いする機会に恵まれました。毎週のように第一線で活躍されている医師、研究者の方のお話をお聞きすることができ、視野が大きく広がりました。また、UCLAの教授のご厚意によりUCLAの循環器内科でも3日間病院見学をさせていただくことができ、貴重な経験となりました。海外からの留学生や、日本から同じようにポリクリでアメリカに実習に来ているたくさんの医学生とニューヨーク、ロサンゼルスなどで何度も交流の機会を持てたことも忘れられない大切な思い出です。

アメリカではよくDo you know what you wanna do?と聞かれました。その度に、私は毎回頭の中で直訳してしまい、自分が何をしたいのだろうかと考えました。日本でも何科に行きたいの?とよく会話をしますが、改めて自分が何をしたいかを考えるよい機会となりました。今回の留学中には自分の将来についてしっかりと考える時間を持てたと思います。

このような素晴らしい機会を与えてくださった国際交流室の先生方、学務の方々、現地の先生方、事前研修で指導していただいた先生や先輩方、そして、同級生のみんなに心から感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

Pennsylvania大学留学報告

金井 美緒

私は2011年の3月より2ヶ月間アメリカのPhiladelphiaにあるPennsylvania大学のChildren’s Hospital of Philadelphia (CHOP)で実習をさせて頂きました。

CHOPは全米No.1の小児病院で、小児神経、血液、感染、循環器、CICU、NICU、PICUなどと細分化されており、小児科の施設が整っている病院でした。また、Pennsylvania大学は教育大学としての誇りを持っている大学で非常に教育熱心な先生ばかりでした。

実習は1ヶ月目に小児血液、2ヶ月目に小児循環器を回らせて頂きました。 最初の小児血液では、学生は基本的にコンサルトチームに所属し自分の担当患者さんの身体診察や問診を行いカルテの情報をもとに、プレゼンをしました。 プレゼンはAssesment/Planまでまずはfellowにし、午後にはattendingにするということを行っていました。Fellowの先生方は忙しいはずなのですが、丁寧に私のプレゼンをチェックして下さいました。また同じ時期にペンシルバニア大学の女学生が一緒に実習をしていたのですが、非常に優秀でモチベーションも高かったので刺激的でした。実習の終わりには症例発表を30人程の先生の前で行いました。非常に興味深い症例でしたので、PubMedなどで論文を検索していくつか読みまとめました。緊張はしましたが、非常に勉強になりました。

二つ目の実習は小児循環器で、一週目は外来、二週目はコンサルト、三週目四週目は病棟というカリキュラムでした。外来では心雑音、小児の心電図、チアノーゼなどの講義をして頂きながら身体診察を先生と一緒に行いました。非常に教育熱心な先生が多く、私がすべてを理解するまで徹底的に教え込むという先生もいらっしゃいました。熱心に教えて下さる先生の期待に答えたいと思う反面、自分の知識の無さ、理解力の無さに悔しい思いをする毎日でした。コンサルトでは小児血液の時と同じように患者さんを診てプレゼンをattendingの先生にするということを繰り返しました。三、四週目の病棟では自分の担当患者さんの所へ朝の回診の前に行き、毎朝回診でプレゼンしました。朝の回診には病棟担当の医師5、6人に加え看護士が2、3人、患者さんの親も参加していましたので、間違ったことは絶対に言えないですし堂々とプレゼンしないといけないと思ったので非常に緊張しました。プレゼンの際attendingに課題を与えられ、明日までに調べてきてという言われることもしばしばありました。またこれらとは別に、心疾患をひとつ選び、発生学から治療法までと現在論文などで議論されている内容について調べ45分のプレゼンをせよという課題を与えられていたので、最後の2週間半はその準備に追われて必死でした。このプレゼンは黒板に書きながら先生や学生に講義をするという形式でしたので話すことを丸暗記せねばならず、45分の長さということもあり、とても不安で準備期間中は常に緊張していました。なんとか無事発表し終わり、先生にexcellentと言われた時は、飛び上がるほど嬉しかったのを覚えています。

実習以外ではペンシルバニア大学の学生達や寮の友達と飲んだり踊ったり食べに行き、非常に楽しかったです。寮に帰ると一階で皆が踊っていた時は驚きましたが、アメリカらしいなと感じながら私も参加しました。またCHOPで働いてらっしゃる西崎先生やNYで働いてらっしゃる兼井先生のホームパーティにも参加させて頂きました。アメリカで働かれている日本人の先生のお話が直接聞けて大変貴重な体験となりました。

このような貴重な経験を医学生としてさせて頂いたことに大変感謝しています。この経験で感じたこと、学んだことはすべて私の人生の宝となると思います。この場をお借りして、国際交流室の皆様、名古屋大学の先生方、Pennsylvania大学の先生方、様々な情報を教えて下さった先輩方、そして精神面で支えてくれた共に留学した同級生、両親に心から感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

Duke大学留学報告

吉田 達矢

私は3月末から3ヶ月間、アメリカ・ノースカロライナ州にあるDuke大学医学部で学ばせていただきました。この大学がある街、ダーラム市は一言でいうと田舎の町。そこら中をリスが走り回り、小鳥のさえずりが響きわたり、夏の夜にはホタルまでもが身近で見ることができる、時間の流れがゆったりとした町でもあります。Duke大学はアメリカでは有名な私立大学で、医療に関してはノースカロライナ州の中心を担っている大きな大学です。また凄く教育熱心な病院でもあり、レジデンシーの病院ランキングでもトップクラスの人気があり、全米から優秀な医師が集まってきています。

私はここDuke大学病院で循環器内科・呼吸器内科・内分泌内科を回らせていただきました。こちらの病院は医学生もチームの一員なので仕事をどんどんと任せてくれます。

1ヶ月目の循環器内科はコンサルトチームに所属しました。この最初の1ヶ月は私にとって非常に大変でした。まずこちらの医師が今までに聞いたことがないスピードで話す上に、初めてのシステム、一緒に回っている留学生のレベルの高さなど一度に大きな壁が自分の目の前に立ちはだかりました。特に留学生とのパフォーマンスの違いに苦しみました。色々と悩みましたが、自分が出した結論は自分が出来る小さなことをコツコツとやっていく事でした。次第に色々な事に慣れ始めて、最後にはしっかりとしたパフォーマンスをする事が出来、しっかりチームに貢献することが出来たのではないかなと自分では思います。私がいた時期は非常に忙しい時で多くの患者さんがいたので非常に多くの症例を見ることが出来た事は循環器内科志望の僕にとっては非常にためになりました。大変仕事が忙しい中でも先生方は教育熱心で自分が質問する前にどんどん教えてくださり、時には明日この疾患について簡単な講義をするから勉強してくるようにという事もありました。非常に大変な1ヶ月でしたが、やはり何かが出来るようになるというのは楽しく忙しい中でも毎日自分で小さいながら成長を感じていたので充実した日々でした。

2ヶ月目の呼吸器内科はコンサルトチームに所属という形になり、空いている時間は気管支鏡や胸腔穿刺などの手技も見ることが出来ました。循環器内科は毎週違ったattendingだったのですが、この呼吸器内科は1ヶ月間同じattendingだったのでその先生の分野を深く知ることが出来たのが凄く良かったです。一つのコンサルトでもただ解決するだけではなく、その先生の分野を交えて教えてくださるのでとても楽しかったです。こっちに来て思った事は、こちらの先生方は何か一つ誰にも負けないスペシャリティーを持っていてコンサルトとは別でその先生に相談される事もしばしばあったので自分も将来この分野ならこの先生と任されるような専門を何か身に付けたいと強く思うようになりました。呼吸器内科では週に一度、ケースカンファレンス・fellowの発表・attendingの講義があるなど病棟業務だけでなく色々な場所で様々な事を学べて有意義な時間を過ごせました。

3ヶ月目は代謝・内分泌内科を取りました。カリキュラムとしては2週間はinpatient(病棟)、残りの2週間はoutpatient(外来)というスケジュールでした。病棟ではコンサルトチームに所属して糖尿病のコントロールが主な仕事でした。毎日患者さんをfollow upしていくのですが、なかにはコントロールが難しい患者さんもいらして先生方と議論したりしたのが今では懐かしいです。代謝・内分泌内科が先の2つの科と違っていたのは、Physician AssistantやNurse Specialistなど医師以外の方も多くいらして彼らの視点でも患者さんを見ることが出来たのは、日本とは異なるシステムなので良い経験でした。こっちに来てからずっとコンサルトチームに所属していたので、outpatientの2週間は新しくとても楽しかったです。基本的にoutpatientの患者さんは退院された方のfollow upであり、当たり前ですが入院されている患者よりもはるかに元気なのでとにかく良く喋ります。そして3ヶ月目に入ってから意識をしなくても英語が自然と耳に入ってくるようになり、患者さんも私に対してたくさん話しかけてくださり多くの人と色々な話をすることが出来て非常に楽しむことが出来ました。先生によっては自分の専門分野のクリニックを持っているので、その症例を集中的に出来て勉強になりました。

今回の留学中ではこのシステムを使って以前留学され、今アメリカでご活躍されているOB・OGの先生にもお会いすることが出来、その他臨床や研究でこっちにこられている多くの医師の方々ともお会い出来るとても貴重な機会があり将来に向けてのアドバイスを頂いたりと実習以外でも充実した日々を過ごせました。最初に来たときは初めてで慣れない事ばかりで大変でしたが、それを一つずつ乗り越えた事で精神的にも成長できたと自分で信じています。今回このような貴重な経験をすることができ、国際交流室の先生・事務の方々には本当に感謝しています。そして、お互い励ましあり切磋琢磨した同級生のみんな、事前研修会で教えてくださった先生方、両親にも感謝しています。

Duke大学留学研修報告

寺崎 史浩

2010年秋、僕は晴れて留学することが決まりました。留学が決まってからというもの、僕は手続きや勉強に追われ、あっという間に2010年の冬は過ぎていきました。そして2011年3月28日、僕はついにDuke大学のあるRaleigh-Durhamに降り立ちました。

さて、僕の第1科目はGeneral Surgeryでした。僕の毎日は午前3時からスタートします。まず僕は3時に起きてひたすらひたすら朝食を食べます。朝食を一気に流し込んだら、スーツに着替えて自転車に乗ります。まだ真っ暗で誰も通らない車道を走り抜けて病院に着くと3時50分から一人で病棟回診をスタートさせます。まずカルテを見てvital signをチェック。何か特別なovernight eventsはないか看護記録をざっと眺め、それらと患者さんの術式など必要事項をprogress noteに書き込んで病室へ行きます。病室へ行ったら、患者さんを起こして問診し、physical examinationを済ませてnoteに記入。受け持ちの患者さんは常時3~4人なので診察して書類の記入を済ませるとだいたい5時半だったり6時だったりします。この時間にchief resident(つまり僕の直属のボス)が来るのでそれまでに担当患者さんの状態を把握し、プレゼンできるようにして置かなくてはなりません。プレゼンはSOAPのPも含んでいて、治療は学生が決定しなければならなかったのですが、これは本当に厳しかったです。日本では起こり得ないことだからです。Duke大学では学生は常に先生の仕事仲間であり、労働力であり、決してshadowではありません。学生が先生に信頼されればされるほど先生の診察時間は短くなります。働けない学生はここでは必要ないということを知りました。さて、回診が終わると7時半から朝のカンファレンスや小児外科の症例発表があり、8時半から5時間から10時間のオペを2件します。術中記録を書くのも学生で、先生はサインします。オペが終わるのは夕方6時から午前1時の間ですが、その後1時間回診をして帰宅になります。帰宅後は先生に課された論文だったりレポートだったりを次の日までに終わらせなければならないので、寝るのはだいたい10時から1時の間でした。

2か月目の循環器内科ではコンサルトチームにいました。コンサルトチームでは毎日朝から学生たちにコンサルトの患者さんが振り分けられ、僕も含め学生たちが病院中に散らばって診察に行きます。カルテを見て、問診と身体診察に行き、HPI/PMH/FH/SH/vital sign/medications/physical examination/blood test/SOAPなどをconsult sheetに記入し(もちろん先生が目を通しますがこれが正式な記録になります)、すべて終えたらポケベルで先生を呼びます。先生にプレゼンを終えると主に投薬に関するdiscussionが始まり、治験に関する論文の話になり、診察という流れになります。ちなみにその日話題になった論文は次の日までに家で各自自主的に読みます。循環器内科では外科より忙しくない分、症例に関して勉強する時間が多くあったのでとても充実していました。また現地の学生とも友情を深める時間も多々あり、とても楽しい日々を過ごさせていただきました。

3か月目は肥満内科でした。肥満内科はまさにアメリカ特有の科です。国民の3分の1以上がBMI30以上のこの国では肥満は見逃せません。業務は主にクリニックで患者さんの減量を指導することです。クリニックでは患者さんを診察しますが、前述の2つの科よりコミュニケーションが重視される科だと言えます。僕が生活歴を深く掘り下げて患者さんと一緒にどこを改善するかを議論し、指導します(これが若い僕には本当に難しいのですが)。場合によっては胃の手術になるのでそのクリニックもさせていただきました。その後先生にプレゼンし、先生とどうmotivateしていくか、もしくはオペに関する議論をします。日本には最近「お医者さんと禁煙しよう」がありますが、こちらでは「お医者さんと減量しよう」です。そういうわけで患者さんと接する時間はここが一番長かったのでとても充実していました。また最終日に45分のパワーポイントプレゼンをする機会もいただき、とても楽しく実習させて頂きました。

最後になりましたが、Dukeでの日々はとても楽しく、このような素晴らしい機会を与えて下さった粕谷先生、名古屋大学の先生方、秘書の長縄さん、山崎さん、事務の青木さん、西尾さん、事前研修に来てくださった先生方、留学に携わって頂いたすべての方に御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

Tulane大学での神経内科臨床実習プログラムを終えて

藤野 悟央

派遣留学生として、Tulane大学の神経内科臨床実習プログラムに参加する機会を得ました。Tulane大学は1834年にルイジアナ医学校としてニューオーリンズに設立された、アメリカ南部有数の名門大学として知られています。Tulane大学のプログラムは実際に実習する病院がいくつか用意されており、各医学生は希望の病院を選択し、事務的に割り振られるという臨床実習システムになっていました。私は多様な症例を勉強できるということで、ニューオーリンズ市内の中核病院の一つであるルイジアナ州立大学メディカルセンターを希望し、そこで実習をさせていただくことになりました。 名古屋大学での事前研修や英会話教室で、英語の問診、診察、症例プレゼンテーションを何度も練習してきましたので、今回の実習初日はどこまで自分の英語が通用するのかの挑戦でもありました。初日はTulane大学での神経学的所見や神経疾患についての講義でした。先生の質問に対して積極的に答える現地の学生に刺激を受け、私もできるだけ積極的に発言するように努めました。講義の内容を100%理解することは困難でしたが、講義中でも自分の疑問を自由に質問でき、また講師からの質問に対する自分の応答が間違っていてもそれは決して恥ずかしいことではない、という講義の雰囲気はとても好感がもて、一種の安心感を得ることができました。

実習2日目から、神経内科コンサルトチームの一員として、実習に加わりました。本チームは、アテンディング1名、レジデント1~3名、私を含めた学生3名という構成。実習内容は、(1)病棟内実習、(2)院外クリニックでの外来実習、(3)シミュレーターを用いた実習、(4)症例検討会、という4つの内容でした。病棟内実習では、入院日の前日の夜または入院日当日の早朝に学生はレジデントから携帯電話で連絡を受け、担当する患者さんを紹介されます。そこで、病歴、身体所見などをとり、カルテに記載後、レジデントにプレゼンテーションし、その内容についてディスカッションをします。次に、アテンディングに対しプレゼンテーションし、症例について調べた論文や学習事項を発表した後、チームで回診を行います。回診ではアテンディングが患者さんの所見をとり、明確な所見が見られた時は、学生全員に所見をとらせてくれます。回診後は、レジデントが臨床所見や治療法に関して、学生に質問を交えての講義。体力的にも精神的にもタフネスさを要求されましたが、充実した実習となりました。

今回のTulane大学での神経内科臨床実習プログラムについて、特に印象が強かった点を紹介します。(1)実習の目的、習得すべき学習項目・手技、成績評価の方法などが明確であること。(2)実習中は現地の学生と同じ扱いであったこと。(3)所見の取り方やカルテの記載方法など基本的な指導内容が充実していること。(4)指導医が担当患者さんを学生に積極的に紹介し、豊富な症例を経験させること。(5)毎日プレゼンテーションとその内容についてカンファレンスでディスカッションし、フィードバックがあること。(6)担当症例に関連した論文や学習内容をカンファレンスで紹介する機会を豊富に与えられたこと。(7)実習の最後にまとめの筆記試験と身体診察の試験があり、学生が実習期間中から熱心に実習と勉強に励んでいたこと、です。また、留学先の大学との実習内容に関する交渉や宿泊施設に関する諸手続き、現地での生活基盤の確保、日常的なトラブルの対処、周囲とのコミュニケーションなど、実習以外にも多くのことを経験し、学ぶことができました。

今回の留学は私にとって大変貴重で大きな収穫となりました。さいごに、留学の機会を与えてくださった国際交流室の坂本純一先生、粕谷英樹先生、留学手続きにおきましてご助力いただきました山崎由実様ならびに学務の皆様、事前研修でご指導いただきました先生方に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

Tulane / Vienna留学体験記

森 健太郎

日本へ帰国し数日を経た今でも、まだ異国の地で3カ月感じ続けた興奮状態から冷めきっていないような気がします。私は四、五月の二カ月間アメリカのチュレーン大学、六月の一カ月間オーストリアのウィーン医科大学へ留学させて頂く機会を得ました。この留学を志したのは、アメリカの質の高い医療を見たいという漠然とした思いと、ヨーロッパの総合診療への興味があったからです。

チュレーン大学での一ヶ月目は内分泌内科。具体的にはfellowの外来見学、入院している担当患者さんのフォローアップでした。また週に2回クリニックへ行き外来患者さんに対し問診、身体診察から、鑑別診断まで含めたattendingへのプレゼンまで行いました。また担当患者さんの病室へ行くと多くの場合に他の科の先生がおられ、一人の患者さんが多くの専門医からフォローされていることに驚きました。

二か月にローテートした神経内科。ここではstroke teamに配属され、担当した脳卒中後の患者さん数人を毎日フォローアップしていく、というものでした。ここでは全身管理が求められるため神経診察だけでなくバイタル、ラボデータから全身の身体診察、場合によっては薬物血中濃度まで把握しなければならず、慣れるのに必死でした。また筆記体で読みにくい紙カルテから情報を拾わねばならず、時間を要するため朝5時に病棟へ行きresidentとのpre-roundまでにプレゼンの準備をしていました。その後attendingとのroundを行い新患が出ればその場でERへ行く、という時間に追われた実習でした。しかし医学生としてチームに加わり、時間のあるときにresidentから症例についてあれこれ教育を受けることは非常に充実感を感じるものでした。

この2カ月の実習に医学生として参加したことで学んだ事が二つあります。一つ目はアメリカの医療です。一人の患者さんに対し分化した多くの専門医が各々の専門領域を同時にフォローしていく医療は、その点のみ見れば確かに質の高い医療を提供しているのかもしれません。しかし現状では分化が進むことで医師の人件費、検査費などがかさみ医療費増大につながり、無保険者の医療へのアクセスはさらに遠のいています。比較的裕福な集団に高度な高価な医療を提供する一方で保険に入れない貧しい集団に十分な医療を提供できないアメリカの現状に驚きました。二つ目はアメリカの医学教育についてです。医学生をresidentが教育し、residentをattendingが教育するという徹底された教育システムが確立されていることには一目置く価値があると思います。また教育の中でも医学生やresidentがプレゼンした症例に対しattendingがフィードバックする際論文に言及しEBMを大切にしながら周囲を説得していく点も印象的でした。

三ヶ月目はウィーン医科大学での総合診療科。ここでは病棟ではなくオーストリア郊外の開業医の先生方の所でホームステイしながら24時間開業医生活に浸るというものでした。先生は一日50~80人ほど患者さんを診察し、さらに身体上の問題でクリニックへ来ることが難しい患者さんに対しては機敏に往診されていました。驚いたことに先生は村の人すべての既往歴や家族背景を把握しており、私は正直な所、住民の健康に対し強い責任感を感じていくその姿に圧倒されました。この経験から様々な患者さんの様々な訴えや問題に対し素早く対応する力は、責任感から生まれるのではないかとさえ考えるようになりました。

この3カ月通して最も学ぶ意義が大きかったこと、それは医療のシステムは各々の国で違いはあれど良い医師を図る尺度は別に存在するということです。僕はこの留学で本当に数多くの医師と出会う事が出来ました。その中にはチュレーン大学の先生方、オーストリアの開業医の先生方だけでなく海外で臨床医として働く日本人の先生方、国連や研究を通し医療に貢献していく医師もいます。そのような方々との出会いを経て、良い医師とは人々の健康に対する強い責任感を持つ者ではないか、という考えに至りました。海外で働く医師と出会いそのような結論を出せた事は本当に貴重な経験だと思います。

最後に、この交換留学プログラムを通して私を支えて下さった皆様、特にお忙しい中にも関わらず何度も相談に乗って下さった粕谷先生、山崎さんをはじめ国際交流室の皆様、講義をして下さった先生方、そして留学中共に励まし合った友人達に心から感謝の意を述べたいと思います。ありがとうございました。

Warwick大学留学報告

白木 杏奈

私はイギリスのウォーリック大学にて13週間勉強する機会をいただきました。私にとって長期間異国に滞在するというのは初めてだったので、日本を発つ前は正直不安でいっぱいでしたが、過ぎ去ってみるとあっという間で、日本にいたら気がつくことのなかったであろう多くのことを学ばせていただきました。伝えたいこと全部はとても書ききれませんが、ここに私の滞在について記したいと思います。

イギリスでは、A&E (Acute & Emergency: 救急科)、ICU、GP (General Practitioner)、Palliative care & Oncology (緩和ケア・腫瘍内科)、Cardiology (循環器科)、Paediatric Endocrinology (小児内分泌科)の計6つの診療科を見学させていただきました。小児科の実習をさせていただいたBirmingham Children’s Hospital (BCH)は小児の診療において中核を担っており、West Midlandsの地域の他、遠くはフランス、さらにはEU圏外の国々からも珍しい疾患を抱えた患者さんが多く集まっていたため、一般の小児科ローテートよりも刺激が強かったように思います。イギリスで行った実習内容は日本のポリクリとそう大差ないようにも思いますが、医学的知識の習得の他、イギリスと日本の医療システムの違い、コ・メディカルスタッフの職種の多様さ、文化的背景の違いなどを垣間見ることができ、非常に充実した実習でした。

イギリスでは、NHSの医療機関を受診する限り、無料で医療行為を受けることができます。全ての国民は、GPに登録しておく必要があり、医者にかかりたいときは、緊急のケースを除いて、患者さんはまずこのGPの予約をとって診療していただくことになっています。このGPというのは日本の開業医とも少し形態が異なり、卒後3年目以降GPを専門としてトレーニングを受けた複数人の医師が運営しています。そして、この診療所には胸部X線の機械すらありません。以前、医師にかかるまでに長いと1週間くらい待たなければならないなど、長い待ち時間が問題になっていると耳にしたことがあったので心配していましたが、彼らは緊急の症例を見逃さないよう、様々な努力を行っていました。例えば、on-call doctorを配置して急を要する患者を見つけ出したり、がんが疑われるような症状を見つけた場合は特別のルールにのっとって24時間以内に病院と連絡をとり、病院が2週間以内にその患者さんを診察開始したりしています。これらのシステムによって待ち時間は短くなってきていますが、それでもまだ、一部の患者さんはその影響を受けているように見受けられました。

日本よりも多くのコ・メディカルの職種を目にし、また彼らが日本では医師の行っているような仕事まで受け持っていることにびっくりしました。キャリアをこなしながら特別なコースを受講していくことで、彼らは一部の医師の仕事の肩代わりをすることができるようになります。例えば、トレーニングを受けたNurse Practitionerは、独自の外来をもって一人で患者さんを診察・処方したり、子宮頸がんのsmear検査をしたり、何が必要か考えて赤ちゃんや海外渡航者の予防接種を打ったりといったことを行います。また、小児糖尿病専門看護師は、患者さんから血糖コントロールに関する相談を受け、その値を元にインスリン量を自分で変更します。結果として医師の負担は減り、その分臨床研究や治療法の考察などに時間を割くことができます。医療を行っていく中で医師の役割は何であるのか、深く考えさせられました。

医療の現場に置いて、人々の文化や慣習にも触れることができました。ある日私はホスピスで実習を行い、衝撃的な事実を耳にしました。ホスピスももちろん無料で、その総運営費の3分の1はNHSでカバーされているそうですが、他3分の2にあたる600万ポンドは全てチャリティーで賄われているということです。例えば、チャリティーの一環としてマラソンが開かれると、参加者は家族や友人に、このレースに参加するから自分に寄付してくれ、とお願いしてお金を集め、自分の寄付と集まったお金を合わせてレースの日に寄付を行うそうです。さらに、この系列のホスピスグループでは900人を超える方々がボランティアとして働いるそうです。あるボランティアの方は、「父がホスピスで亡くなって以来、私は苦しんでいる人々の役に立つことがしたいと思うようになった」とおっしゃっていました。義務や計算ではなく、心からのサポートによって成り立っているこの体制が本当に素晴らしいと思いました。

今回の経験を通して、成し遂げたいという強い気持ちと出来る限りの努力をもってすれば、どんなことでも達成することが出来るのではないかと感じました。実際に私は英語でのコミュニケーションに戸惑いを隠せませんでしたが、予想していた以上のとても貴重な経験をさせていただくことができました。私を支えてくださった皆様方、特に国際交流室の粕谷先生、山崎さん、学務の西尾さん、ウォーリック大学とBCHでお世話していただいた医師やスタッフの方々、留学前の事前研修でサポートしてくださった先生方や先輩方、一緒に勉強に励んだ派遣留学生のみんな、そして家族に、この場をお借りして感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

Warwick大学臨床留学報告

黒澤 舞子

癌で亡くなる方が3分の1を占める日本において腫瘍内科を目指している私は、癌患者さんにどのような医療を提供して最期の時までサポートするか、にとても興味を持っている。英国はホスピス発祥の地で、腫瘍内科の歴史も半世紀以上と長い。またNHSという統一システムの中、誰でも無料で医療が受けられるという。今年の春、英国Warwick 大学病院にて7週間の臨床実習を行う機会を得た私は、 “無料で医療を提供しているNHSの仕組みを理解すること。”と、“癌患者さんの診断から治療、最期の緩和ケアまでどのような医療が提供されているか理解すること。”の2点を目標に英国に向かった。 実習は5週間を腫瘍内科と緩和ケアで行い、2週間を血液内科で行った。英国では癌治療における化学療法と放射線治療は腫瘍内科医が担当する。その為癌患者さんの治療にあたるときも常に外科医、内科医、腫瘍内科医が協力して治療にあたることになり、治療方針等は更に放射線科医や病理医、専門看護師等を加えた多職種会議によって決められる。会議で、各患者さんに合わせた最適な医療について各専門家の立場から活発に意見が交わされていたのが印象的であった。

最初の5週間でお世話になったフランクス先生は緩和ケアの資格も持つ腫瘍内科医という少し特別な医師であった。根治不可能な患者さんに日々接している先生の医療面接では、厳しい現実の中にも常に希望を見出すことのできる言葉が織り交ぜられ、深い悲しみを包み込むような優しさがあった。毎回鳥肌が立つほどの感動を覚えていたが、一方で先生が各患者さんとの面談に長い時間(時に1時間くらいかかることも)をかけられるほど、医師もスタッフの数も充実していることに医療環境の違いを感じた。

また最初に癌患者さんの治療から終末期医療にまで興味があることを伝えた私に、フランクス先生は5週間を通して様々な職種の人に会い、その仕事を見る機会を与えてくれた。具体的には、成人用や子供用ホスピスで働く医師、呼吸器内科の医師、医療現場で働く牧師、癌病棟で働くcomplementary therapist、癌患者さんのサポート専門のmacmillan nurse、肺癌専門看護師、終末期医療専門看護師、dressing専門看護師、放射線技師、緩和ケアを専門薬剤師、胸部外科の外科医等である。専門性に富んだコメディカルの多さや医師の横断的な繋がりの密さに驚くと同時に、役割がきちんと分担され癌患者さんの精神面を含めて最後までサポートする体制が整い、それらが無料で提供されていることに改めて感銘を受けた。また地域医療との連携も密で、末期の患者さんを自宅に帰す際には、終末期医療専門看護師と家族、患者さんで話し合い、ニーズに合わせて地域の医者、看護師などが手配される。更に医療機器、介護用ベット、ヘルパー等や、急変に備えて24時間付き添いを置くサービスまで無料で提供され、自宅療養がサポートされていた。 血液内科では外来や病棟での一連の流れを医師に同行して学び、その中で身体所見を取ったり問診したりする機会が与えられ、それを担当医師にプレゼンして質疑応答を行った。また研修医向けの勉強会に参加して血液像から病気の診断を行なったり、こちらの学生向けの授業に参加したりした。郊外で行われたセミナーに同行した際には日頃ゆっくりと話せない先生方と、日本と英国医療の相違点から文化・宗教などの相違点についてまで様々なことを車中で話すことが出来た。また一番お世話になったジャクソン先生に、最後の週末ホームパーティーに誘って頂き、その後先生が日頃通われている教会にてヘンデルのメシアを通しで聴いたことはとても良い思い出となっている。

刺激的で充実した7週間はあっという間だったが、これからの日本の医療、特に癌治療や終末期治療を考えていく上で本当に沢山のヒントを学んだ。最後にこのような素晴らしい機会を与え、常に支えてくれた国際交流室の先生方や留学係の皆様を初めとする関係各位に感謝の意を表したい。ありがとうございました。

上海交通大学医学院附属仁済医院 留学体験記

滝 奉樹

私は2011年の4月中旬から5月中旬までの一ヶ月を上海交通大学医学院附属仁済医院にて留学させていただきました。名古屋大学から上海交通大学へ海外ポリクリとして留学するのは今年が初めてということで、前例がないため右も左も分からぬ状態で不安もたくさんあり、さらには尖閣諸島問題で中国の過激派が日本人や日本企業を襲うといったニュースで世間も騒がれており、無事に帰ってこられるのだろうかという思いもありましたが、中国の医療を見る機会はおそらく二度とないだろうと思い、また、ニュースで報道される中国の姿はごく一部で、実際の中国人の方々は、日本のことをどう思っているのだろうかということが気になり、上海交通大学への留学を決意しました。具体的な診療科としては救急に2週間、神経内科に2週間という形で実習させて頂きました。

救急科

私が所属したチームは、教授1人、主任1人、レジデント4人の6人で、ICU9ベット、一般病棟8ベットを管理していました。救急科としては、他にもまだチームがあり、これらに加え、37ベットもあるとのことでした。回診は朝8:30からと15:00からの2回で、朝の回診に付いてまわり、そこで主任の先生から英語で患者の様態やら病気について説明してもらいました。主任の王先生とレジデントの仲敏先生のお二人が英語が堪能だったので、主にこの二人に相手をしてもらいました。

中国の救急は病棟を持っており、色々な疾患を抱えていて一つの科で診られない患者や、他科の病棟に空きが出るまで待っている患者、ICU管理が必要な重症患者などが入院していました。各病棟にはヘルパーさんが1人ずついて患者の身の回りの世話をしていました。病棟の他に救急には廊下に所狭しと、可動式のベットが並んでおり、そこには長期入院でもう回復があまり見込めない患者が大勢みえました。上海という人口密度の大きい都市では、患者が多すぎて、治る見込みや退院出来る見込みのある患者を診るだけでも医者が足りないくらいで、もう回復の見込みのない患者は病棟にも入れず、廊下に寝かされ、医者の手がそこまでまわっていないといった様子でした。しかし、今この状況を改善するために新しく内科病棟を増設中で、来年にはもっと状況は良くなっていくとのことでした。

神経内科

私が所属したチームは、主任1人、副主任1人、レジデント2人、現地の学生1人の5人のチームでした。基本的にレジデントが5人ずつの患者を担当して、月水木が副主任以下で回診を行い、火金が主任も含めた全員で回診を行い、レジデントの方針や診断が正しいかどうかをチェックしているという形でした。ここでも救急のところで述べたように、重症患者は救急で管理されているので、基本的には退院できる見込みのある軽症例ばかりで、日本の神経内科よりも病棟は明るい印象をうけました。この科で学生は、主にレジデントの指示に従って処方箋を書いたり、検査の同意書を書いたり、ガーゼの交換をしたりなど、事務的な仕事をしていました。

上海児童医学中心

仁済医院では小児科専門の病院を他の科とは別に持っており、ここでは小児心臓外科の手術件数が世界一であるとのことで、見学させてもらえるよう試みたのですが、当時は時期的に忙しく、留学生を受け入れるのは無理でしたが、幸いにも現地の学生に案内してもらえました。この病院は最近建てられ、アメリカの設計士が建築に携わったので、アメリカの小児病棟にとても似ていました。NICUにも最新の設備が備え付けられており、医療水準はかなり高いのではないかという印象を受けました。一人っ子政策のため、親は1人の子供を宝物のように大切に育てているので、小児科医のプレッシャーはとても大きいとの事でした。

現地の学生との交流

現地での宿泊先は仁済医院の寮だったのですが、ここには現地の学生も同じ寮に住んでいて、晩ご飯を共に食べたり、実習が終わった後皆で談笑したりしました。中国では日本のアニメ、ゲーム、ドラマ、小説が人気で、それをきっかけに日本語を学ぶ学生が多くいました。また、医学部の成績がその後の病院の就職に関わってくるようで、皆勉強に必死になっているようでした。田舎と都会とでは医療の格差が想像以上にあるようで、上海などの都会で、先端医療を学ぶためにはすごい競争率の中で戦わなければならないとの事で将来を杞憂する様子も伺えました。また、中国では、医者の待遇がとても悪く、内科医にいたっては労働時間が長い割に一般の人よりも給料が安い状況で約半分の医学生が医者になるのを辞めて一般企業に就職するとのことでした。

最後になりましたが、行く前の不安とは裏腹に、想像以上に充実した研修となりました。坂本先生、粕谷先生をはじめ、国際交流室の皆様、学務科の皆様、同級生のみんな、そしてこのような機会を伝統的に続けてきて下さったFrontier会の皆様に、この場を借りて深く感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。