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研究について

名古屋大学での研究「Now」:芳川 豊史

 みなさん、こんにちは。

 現在、名古屋大学で行われている研究で、私、芳川豊史が中心となって関与しているものをいくつか紹介したいと思います。

 

1.肺の変形に着目した手術シミュレーション研究

 近年、呼吸器外科領域では、術前にとったCTから3次元CT画像を作成し、術前に手術計画を立てることが増えてきました。私は、数年来、富士フィルムのSynapse Vincentを愛用し、手術計画を立ててきましたが、3次元CT画像を作れば作るほど、より実際の手術に近い、3次元CT画像を作りたいという欲望にかられました。

つまり、現在の3次元CT画像は、「静的な画像」で、手術操作や脱気による変形に対応していないのです。そこで、「動的な画像」を作るというコンセプトを基に、AMEDシーズAやAMED ACT-Mなどの公的資金を獲得して研究を行ってきました(https://www.amed.go.jp/koubo/02/02/0202C_00104.html)。

現在、これまでの京都大学呼吸器外科と情報学研究科のチームと、名古屋大学呼吸器外科のチームが共同で、同じ方向性をもって、より精度の高い手術シミュレーションを開発するという課題に挑戦しています。

研究成果の一部は、これまでに、アメリカ胸部外科学会で口演発表し(論文1.)、アメリカ胸部外科学会の機関誌であるJ TCVSの表紙にも掲載されました(図1)。

呼吸器外科における世界初の手術ナビゲーションを目指しております。手術シミュレーションに興味のある方は、ぜひ、一緒に研究を進めましょう。

 

2.肺移植における慢性拒絶に対する新規免疫抑制療法の開発

 肺移植患者さんの約半数が、移植後に、いわゆる「慢性拒絶」に陥るといわれています。他人の臓器を移植するため、拒絶反応を抑えるべく、移植患者さんは、複数の免疫抑制剤を一生内服しますが、免疫抑制剤の副作用は、感染、腎障害、悪性腫瘍など多岐にわたります。したがって、その副作用が少しでも少なくなるような新規免疫抑制剤の開発を、科学研究費などの公的資金を獲得して、行ってきました。

 その成果の一部は、世界の一流雑誌に掲載されております(論文2)。今後も継続して研究を進めていく予定ですので、興味のる方は、ぜひ、お声掛けください。

 

3.肺移植の次の治療法としての肺再生療法

 肺移植における大きな問題点の一つに、ドナー不足があります。日本では、現在、脳死肺移植登録された患者さんの約4割が肺移植まで到達できないという事実があります。

そこで、ドナー不足に影響されない新規治療法の開発を、これまでに、科学研究費などの公的資金を獲得して行ってきました。

その一つとして、オルガノイド研究で世界をリードする東京医科歯科大学武部貴則教授との共同研究があり、その成果の一部は、世界の一流雑誌に掲載されております(論文3)。今後も継続して研究を進めていく予定ですので、興味のる方は、ぜひ、一緒に夢を追いかけましょう。

 

 

論文1:独自に開発して切除プロセスマップというアルゴリズムを、世界で初めて、呼吸器外科手術に応用しました。(J Thorac Cardiovasc Surg)

論文2:抗がん剤であるMEK阻害剤が、自然免疫を抑制しない免疫抑制剤となりうることを、小動物肺移植モデルで確認しました。(Am J Respir Cell Mol Biol)

論文3:胎仔肺を傷害肺に移植することで、肺機能が改善することを確認しました。(Eur J Catdiothorac Surg)

図1:JTCVSの表紙