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芳川豊史教授 |
みなさん こんにちは。 時の流れは早いもので、2023年9月で、私が名古屋大学呼吸器外科教授に就任させていただいてから、5年目に入りました。これまで、お世話になった方々に感謝するとともに、再度、気を引き締めて、名古屋大学呼吸器外科チームを率いていきたいと思っております。 まず、最初に、チームの最大の力となる医局員ですが、この4年間で26名の新しい仲間を迎えることができました。新しい仲間の先生だけでなく、勧誘や指導などに尽力された皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。 |
さらに、嬉しい情報ですが、2023年3月に、名古屋大学医学部附属病院は、正式に肺移植実施施設となりました。思い起こせば、2年前の2021年4月に、病院長に要望書を提出し、同年7月に、ワーキンググループが発足しました。約半年で申請書を作成し、2022年1月には肺移植関連学会協議会に正式に申請を行いました。書面審査終了後、2023年1月にサイトビジットを受け、2023年3月に肺移植実施施設として移植関係学会合同委員会にて認定されました。臓器移植ネットワークと連携し、同年8月より、脳死肺移植の登録評価入院を開始し、現在、3-5例目の登録患者さんの入院の準備をしているところです。
なお、肺移植の患者さんが、地元で安定して術前後の医療を受けられるように、院内の体制づくりや肺移植実施施設と連携した研修を、現在も継続的に行っております。名古屋大学で肺移植前後のフォローを定期的に行っている患者さんは、常に15名程おられ、呼吸器内科、循環器内科、小児科などと共に診させていただいております。脳死肺移植の平均待機期間は約900日と長いため、来るべき名大病院の1例目のための準備として、現在、教室員がウイーン大学(Clinical fellow:仲西慶太 病院助教)と京都大学(医員:梁泰基)に臨床留学しております。また、京都大学での1年間の医員生活を終えて、今村由人(医員大学院生)が名大医局に帰局し、実際の事務的作業を中心になって進めてくれています。このように、次世代を担う若手が中心になって名大の肺移植の土台を固めてくれていることは大変嬉しく思いますし、頼もしいと感じております。さらに、生体肺移植についても準備を進めております。
さて、名古屋大学呼吸器外科の使命は、臨床、教育、研究の3本柱です。我々は、東海・中部地方の核となる名古屋大学、そして名古屋大学病院として、高いレベルで、かつ、バランスよく、この3つの使命を全うできるように、日々励んでおります。
臨床面では、日々、手術症例に全力を注いでおります。総手術数も肺癌手術数も共に、毎年、前年を上回るペースで増加しております。2022年(1月から12月)は、461件の全身麻酔手術を行いました。このうち原発性肺癌は289例で過去最多でした。転移性肺癌は53例、縦隔腫瘍は35例でした。手術のアプローチは、約7割を内視鏡手術で行っており、詳しくは、胸腔鏡手術(VATS)180件、ロボット支援下手術(RATS)166件、通常開胸手術115件でした。RATSの累積症例数も600件を超え、2022年の肺癌に対するRATSは130件を超えるなど、本邦の呼吸器外科領域におけるロボット手術の中心的施設の一つとなりました。当院の特徴は、術者の資格を持っている者が多いということで、現在、8名の術者(1名のメンター、3名のプロクター)がおり、全員、コンスタントに手術行っております。また、VATSの中で、一つの孔で行う単孔式手術が導入され始めていますが、我々も症例を選んで行っております。
手術においては、低侵襲な内視鏡手術(VATSやRATS)での対応を常に考えますが、根治性や安全性を第一に、適宜、通常の開胸手術でのアプローチも行っております。もちろん、大学病院ならではの大きな手術も多く、拡大手術においては、同門である心臓外科教室との連携を武器に、大血管処置のいる縦隔腫瘍や肺癌の手術においても即座に対応できる体制をとっております。院内の連携もスムーズで、消化器一般外科や耳鼻科や整形外科との共同手術も行っております。昨今、呼吸器外科領域では、低侵襲手術が主役となり、若手呼吸器外科医の通常開胸症例が減っております。呼吸器外科専門医制度においても、開胸症例数を充足できない申請者が増えていることが問題になっていますが、通常開胸を学べる施設の一つとして、その役割を果たしていきたいと思っております。さらに、どのような呼吸器外科症例にも対応できる体制をこれまで通り維持しております。これもひとえに、当院の強みである呼吸器内科、放射線診断科・治療科との連携、関連病院を含む地域医療の先生方からの患者さんのご紹介の賜物と理解しております。
教育面では、外科医離れが進む流れの中で、呼吸器外科のプレゼンスを示すべく、名古屋大学の学生教育だけでなく、関連病院と一体となって、研修医および学生の教育や勧誘を進めております。名古屋大学は、東海・中部地区に多くの関連病院を有しており、大学から多くの医師を派遣しておりますが、未だ呼吸器外科医が不足しているというのが実情です。この問題を解消すべく、一人でも多くの若手医師が、我々のチームの一員になってくれることを望んでおります。なお、芳川が、名古屋大学医学部の臨床実習実施委員会の委員長をしていることもあり、学生教育にも積極的に関わっております。また、医学生だけでなく若手医師に対しても、定期的に、ドライラボ、ウエットラボなどの様々なトレーニングを企画するとともに、最新の呼吸器外科・内科に関するセミナーを企画しております。また、教室のホームページ(https://www.med.nagoya-u.ac.jp/kokyuukigeka/)の更新にも力を入れております。ぜひご覧ください。
研究面では、大学としての使命として、科学研究費やAMEDなどの競争的資金に積極的に応募しております。現在、数本の科研費(B、C、若手)を獲得し、忙しい日常臨床の合間を縫って研究を進めております。分子生物学的な研究だけでなく、実臨床に近い、外科手技に関係するような研究も積極的に行っております。教室の研究テーマの一つの柱である、変形シミュレーション研究では、情報学系の教室と連携し、手術操作や脱気による肺の変形に対応したアルゴリズムを開発し、将来的な手術ナビゲーションを目指すという研究を進めております。今後も、名大オリジナルの価値ある成果物を世に出せるよう継続して精進していく方針です。
さらに、本年は、4月に第303回東海外科学会を、6月に第141回日本結核・非結核性抗酸菌症学会東海支部学会、第123回日本呼吸器学会東海地方会、第26回日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会中部支部会の3学会合同地方会を、9月に第6回日本蛍光ガイド手術研究会を主催させていただきました。皆様のおかげで、全ての会を成功裡に終えることができました。この場を借りて御礼申し上げます。
最後になりましたが、本年も、名古屋大学呼吸器外科を中心として、20を超える関連病院の同門一同が力を合わせて、より良い呼吸器外科医療を確立すべく、日々努力していきたいと存じます。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
令和5年10月吉日
名古屋大学大学院医学研究科 呼吸器外科 教授・科長
芳川 豊史
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▸過去のごあいさつ(令和3年1月)
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資格
卒業年:1997年 京都大学医学部
略歴
1971年 | 華僑3世として、京都に出生(ちん とよふみ、Fengshi CHEN) 京都で育ち、洛星中学・高等学校を卒業後、京都大学に進学 |
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1997年5月 | 京都大学胸部疾患研究所 外科研修医 |
1998年4月 | 高知市立市民病院 呼吸器外科 |
2000年10月 | 静岡市立静岡病院 心臓血管外科・呼吸器外科 |
2003年4月 | 京都大学医学部附属病院 呼吸器外科 |
2004年4月 | 京都大学大学院(医学研究科呼吸器外科専攻)入学 (2006年4月から 学振院 特別研究員DC2) |
2007年1月 | 同 中退(2007年5月:京都大学 医学博士 取得) |
2007年2月 | 京都大学医学部 臓器機能保存学 助教 |
2008年7月 | カナダ国トロント大学 胸部外科 Clinical fellow |
2009年7月 | 京都大学医学部附属病院 呼吸器外科 助教 |
2014年1月 | 京都大学医学部附属病院 呼吸器外科 講師 |
2014年12月 | 日本国籍取得し、「芳川豊史(よしかわ とよふみ)」となる。 |
2019年1月 | 京都大学医学部附属病院 呼吸器外科 准教授 |
2019年9月 | 名古屋大学医学部附属病院 呼吸器外科 科長/教授 |
現在に至る
専門分野
呼吸器外科全般(肺癌、肺移植、縦隔腫瘍、胸膜中皮腫、肺再生など)の臨床と研究
手術シミュレーション
趣味・特技など
囲碁が好き(アマチュア5段)で、また時間をみつけて再開したいと思ってます