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肺移植について

肺移植とは?

「息苦しさ」というものは、健康な人には想像しにくい深刻な苦しみです。内科的な治療を最大限に行っても病状が進行し、命に関わる場合があります。そんな重症患者の命を救う最後の選択肢のひとつが肺移植です。

肺移植では、患者(レシピエント)の機能が低下した肺を取り除き、提供者(ドナー)の健康な肺を移植します。これにより、呼吸が楽になり、健康な人と同じような日常生活を送れるようになる可能性があります。

しかし、肺移植には注意点もあります。そのひとつが拒絶反応です。移植した肺は元々自分のものではないため、体が「異物」とみなして拒絶することがあります。そのため、免疫抑制薬を一生飲み続ける必要があります。

肺移植の成功例は、1983年にカナダ・トロント大学のチームによって初めて報告されました。世界ではこれまでに6万人以上、日本では1998年に初めて行われ、令和5年(2023年)12月時点で1000人以上の患者が脳死もしくは生体肺移植を受けています。

肺移植には脳死肺移植生体肺移植の2種類があり、どちらも保険適用されています。脳死肺移植は、脳死と判定された方から肺を提供してもらう移植方法です。一方、生体肺移植は、健康な方から肺の一部を提供してもらい移植する方法です。現在、世界的には脳死肺移植が一般的ですが、日本ではドナー不足の観点から生体肺移植も行われています。

肺移植は、指定を受けた病院(肺移植実施施設、ガイドブック参照)でしか受けることができない医療です。現在のところ、中部地方では、名古屋大学と藤田医科大学の2か所が肺移植実施施設と認定されています。

肺移植が必要になるのはどんな人?

肺の病気が進行して、お薬や治療を続けても良くならず、余命が限られている場合、肺移植が必要になることがあります。肺移植が必要になる病気には、間質性肺炎、肺気腫、肺高血圧症、気管支拡張症、肺リンパ脈筋腫症などがあります。これらの病気が進むと、自分の肺だけでは十分に呼吸ができなくなり、酸素吸入が欠かせない状態になってしまいます(詳しくはガイドブックをご覧ください)。

ただし、肺移植はとても大きな手術なので、手術を乗り切るだけの体力が必要です。そのため、肺移植を受けるには、年齢や健康状態などの基準を満たしている必要があり、当院では登録前に全身を評価するため10日程の入院をしてもらっています。

**「肺移植を考えるタイミングはいつ?」**と思うかもしれませんが、それは病気の種類によって異なります。目安が決まっているので、詳しく知りたい方は専門の医師に相談するのが一番です。

当科では、芳川豊史教授をはじめとした移植認定医が中心に診療を行っています。教授は、前述のトロント大学(年間100件以上の肺移植を実施)で専門的な研修を受け、その後、京都大学医学部附属病院で10年以上勤務し、これまで海外で約100件、日本で200件以上の肺移植を経験しています。また同様に海外で肺移植のトレーニングを受けた医師、国内の肺移植実施施設で臨床医員として働いてきた医師が複数在籍しており、チームとして肺移植を行う体制が整っています。

現在、名古屋大学では1例目の肺移植が安全に行われるため誠意準備中です。中部地方の患者さんが十分な肺移植医療が受けられるように、適切なサポート体制を整えております。肺移植について詳しく知りたい方や相談したい方は、ぜひご来院ください。毎週月曜日の午後に専門外来を行っていますので、お気軽にご相談ください。

『肺移植のためのガイドブック(PDF)』 ダウンロード