名古屋大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科の吉田忠雄准教授らの研究グループは、このたび突発性難聴などを代表とする一側性聴覚障害(片方の耳だけの高度な難聴)の患者さんに対して、適切に評価されてこなかった方向感や雑音下の聞き取りの評価法の標準化とリハビリテーション手法の開発を目指す臨床研究を開始しました。
本研究では、一側性聴覚障害の患者さんが抱える聞き取りの障害の程度の評価を標準化された検査を用いて行い、適切な介入・支援につなげることを目的としています。また、方向感の喪失や雑音下の聞き取りにくさを改善するためのリハビリテーション法を開発し、全国の一側性聴覚障害の患者さんの聞き取りの悩みを解決することが期待されます。
本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)障害者対策総合研究開発事業感覚器障害分野の支援を受けて行われる臨床試験です。また、他に分担研究機関として全国14施設の協力を得て行われます。
・一側性聴覚障害では音の方向感や雑音下の聞き取りが障害されている。
・現在までに、標準化された評価法がなく、新たに適切な評価法を開発する。
・評価をもとに、方向感や雑音下の聞き取り改善を目指したリハビリテーション手法を開発する。
本邦では一側性聴覚障害に対するハンディキャップの意識が低く、騒音下や多人数での会話において聞き取りが不自由であるにも関わらず、医療、教育、社会的支援に目が向けられてこられませんでした。一側性聴覚障害では、静寂下での会話で支障がなくても雑音下の聞き取りや方向定位の困難さが認められることが多く他者からは意識されにくい障害です。現在、ほとんどの一側性聴覚障害者は特段の補聴手段を使用せず困難を抱えたまま生活しているのが実情で、リハビリテーションは確立されていません。
本研究では、一側性聴覚障害の聴覚障害(方向感や雑音下の聞き取り)の程度を正確に把握し、適切な介入・支援を通じてリハビリテーションを確立することを目的としています。現在、方向定位検査や雑音下語音聴取検査は標準化された方法やリハビリテーションの手法は確立されておらず、オールジャパン体制の本研究でこの課題に取り組む予定です。
東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科学
准教授 吉田 忠雄(よしだ ただお)
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