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悪性脳腫瘍を対象とした 新規核酸医薬の医師主導治験を開始 ~予後が厳しい再発膠芽腫に対する新たな治療法~

【ポイント】
  • 悪性脳腫瘍(再発膠芽腫)は国内で年間2000例程度の希少・難治疾患となっている。現行の治療法である手術、放射線治療、全身化学療法による根治は難しく、予後は極めて不良である。
  • 新規核酸医薬である"antiTUG1製剤"の悪性脳腫瘍に対する医師主導第I相試験を開始する。
  • "antiTUG1製剤"はTUG1を標的とした新規核酸医薬であり、悪性脳腫瘍に対する新たな治療法となり得る。既存のがん治療法と作用機序が異なることから他の既存治療法を強化する新たな革新的治療戦略の開発に繋がる。
  • 治験は名古屋大学を中心に他2施設で実施予定としている。被験者の登録期間は20263月までとし、20293月に治験終了を予定している。
【概要】

 名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科学の齋藤 竜太(さいとう りゅうた)教授、腫瘍生物学の近藤 豊(こんどう ゆたか)教授らのグループは、再発膠芽腫に対し新規核酸医薬である"antiTUG1製剤"による医師主導治験(第Ⅰ相)を開始します。

 本治験は、2023年に独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験届を提出し、また、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業に採択されており、課題名「新規核酸治療薬を用いた膠芽腫に対する臨床試験に関する研究」で支援を受けて実施しています。

【詳細説明】

 本治験では、難治・進行性がんの革新的治療法となることを目指して近藤豊教授らが開発したTUG1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と新規のドラッグデリバリーシステム(DDS)であるYBC (Y-shaped Block Catiomer)を組み合わせた"antiTUG1製剤"(antiTUG1-ASO [TUG1 ASO LNAギャップマー]/bPEG-pOrn [YBCポリマー・GL2-800RN20] 複合体製剤)の医師主導第I相試験を実施致します。本薬剤は、腫瘍細胞の生存や薬剤抵抗性に関与する長鎖非翻訳RNAであるTUG1を標的とした新たな治療法であり、治療手段が限られ、予後が厳しい再発膠芽腫に対する革新的治療法となることが期待されます。

名古屋大学脳神経外科(齋藤竜太教授)を中心に他2施設の参加を得て多施設共同試験として実施致します。

 

TUG1とは?>

 名古屋大学大学院医学系研究科 腫瘍生物学 近藤豊教授らの研究グループは、タンパク質に翻訳されないRNA(長鎖非翻訳RNA)の一つであるTUG1が、がん細胞のDNAを損傷から保護し増殖を助ける分子機構を解明しました(図1)。そしてTUG1の働きを阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドにより腫瘍細胞のDNAが損傷し、細胞死が誘導されることを見出しました。さらにTUG1を高発現している膠芽腫細胞を用いた脳腫瘍モデルマウスで、TUG1を抑制する核酸医薬(antiTUG1製剤)と膠芽腫の標準治療薬テモゾロミドの併用治療を行った結果、顕著な抗腫瘍効果が得られました(図2)。この結果より、antiTUG1製剤は難治性のがんである膠芽腫において有効な治療薬となる可能性があります。

 

<"antiTUG1製剤"の安全性>

正常細胞にはTUG1が標的とするR-loopの蓄積はほぼありません。したがってTUG1-ASOの影響は万が一あっても限局的です。ラット及びサルで4週反復投与による毒性試験を実施し、安全性を確認しております。

 

<医師主導第I相試験>

核酸医薬antiTUG1製剤の最大耐用量の決定を主目的、抗腫瘍効果及び薬物動態を副次目的として、推奨用量を決定する単群非盲検第Ⅰ相試験として実施致します。外科手術後少なくとも1レジメンの化学療法を受けた初回再発・進行膠芽腫患者を対象とし、ASO換算で0.1mg/kg1.0mg/kgまでの4レベルを設定して、3+3デザインで各レベル36症例に投与する予定です。実際の投与は週1回、4回を1クールと致します。1クール終了時に安全性を確認後、主治医の判断により継続投与を可能とし、有効性も評価致します。主要評価項目は用量制限毒性及び有害事象、副次評価項目は奏効率、無増悪生存期間、薬物動態、全生存期間並びに奏効期間とし、推奨用量を決定致します。治験登録期間は20241月より20263月とし、最大24症例の登録を予定しております。

 

 

1 TUG1の作用機序

図1 TUG1の作用機序.png

 

2 antiTUG1製剤の有効性

図2 antiTUG1製剤の有効性.png

【問い合わせ先】

国立大学法人東海国立大学機構

名古屋大学 大学院医学系研究科 脳神経外科

(治験調整事務局:株式会社ファイブリングス)

TEL: 06-6358-7004      FAX06-6226-7122

Email: jimukyoku+TUG1ASO@fiverings.co.jp