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特発性拡張型心筋症に対する新規治療用機器 「テイラーメイド方式心臓形状矯正ネット」の多施設共同の探索的医師主導治験を開始

 この度、名古屋大学が橋渡し研究支援機関(注1)として研究支援を行い、全国5大学(名古屋大学、東京大学、東北大学、慈恵会医科大学、大阪大学)で国の指定難病である特発性拡張型心筋症(注2)に関する探索的医師主導治験(注3)「拡張型心筋症に対するテイラーメイド方式心臓形状矯正ネット(注4)の医師主導治験」を本年5月から開始しました。本治験では、治験調整医師を研究代表者である名古屋大学医学部附属病院・心臓外科の秋田利明 特任教授が、治験責任医師を同大学大学院医学系研究科・心臓外科学の六鹿雅登 准教授(同大学医学部附属病院・重症心不全治療センター長)が担当します。

ポイント

  • 今回の治験は、特発性拡張型心筋症における進行性心拡大防止のために開発した「テイラーメイド方式心臓形状矯正ネット」
    の探索的医師主導試験である。
  • 今回の治験に先行して行った3例の臨床研究においては、QOL(注5)、運動能が大幅に改善している。
  • 本治験は、全国5大学にわたる多施設共同で行われ、被験機器は患者ごとに設計製造される。
  • 本治験に用いる被験機器は、先駆け審査指定制度(注6)の選定品目である。

背景

 特発性拡張型心筋症は心拡大と心不全が同時に進行する難病で、中等度以上の心不全症状があり、難病指定(医療受給者証)を受けている患者は令和2年現在20,387人います。末期心不全になると心臓移植が唯一の治療法ですが、現時点ではドナー不足により毎年60名未満にしか適応されていません。そのため、広く適応できる治療法の開発が急務となっています。

関連する過去の研究結果

 今回の治験研究の代表者である秋田特任教授は、心不全悪化の最大の要因である進行性の心拡大(=心臓リモデリング(注7))を防止する「テイラーメイド方式心臓形状矯正ネット」を開発し、First in Human study(注8)となる特定臨床研究「拡張型心筋症に対するテイラーメイド方式心臓形状矯正ネットの臨床試験」を実施し、これまでに3名の方に参加いただきました。その結果、いずれの方においても、安全性に問題なく、運動耐容能(最大酸素摂取量、6分間歩行距離)の大幅な改善が得られ、活動的な日常生活を享受されています。

今後の展開

 今回、令和4年度日本医療開発研究機構(AMED)橋渡し研究シーズCの助成を受け、全国5大学(名古屋大学、東京大学、東北大学、慈恵会医科大学、大阪大学)にて探索的医師主導治験「拡張型心筋症に対するテイラーメイド方式心臓形状矯正ネットの医師主導治験(jRCT2042210157)」を本年5月より開始しました。このように多施設共同で治験を実施することで、精度の高い治験結果を得られることが期待されます。探索的医師主導治験で5名の方での安全性と有効性が確認できれば、製造販売承認を目指した検証的治験(12例~20例)を来年以降に行う予定です。
 今回の治験に用いる被験機器は、心不全患者の心臓画像から患者ごとに設計・製造されます。本被験機器は、令和2年度の先駆け審査指定制度の対象品目に選定されており、特発性拡張型心筋症患者の心不全進行を止めるだけでなく、QOLを改善する治療法として令和7年の実用化を目指しています。

用語説明

(注1) 橋渡し研究支援機関:

高度かつ先進性の高い基礎研究成果や臨床現場からのニーズに基づくシーズの発掘・育成及び非臨床試験から臨床試験への展開を通して、医療への実用化を最終目標とする研究(橋渡し研究)を支援する機能を有する大学等のうち、文部科学大臣が一定の要件を満たす機能を有するとして認定した機関。

(注2) 特発性拡張型心筋症:fig_1.png
心臓 (特に左心室)の筋肉の収縮する能力が低下し、左心室が拡張してしまう病気(右図)。国の指定難病57で、中等度以上の心不全症状がある指定難病医療受給者は令和2年現在20,387人が認定されている。適切な治療薬を行っていても進行性に心拡大と心不全が悪化することも多く、心臓移植症例の60%強が本疾患である。




(注3) 探索的医師主導治験:
First in Human Studyを実施した後に行う臨床試験を探索的治験という。医療機器の開発においては、安全性、有効性の検討と共に、手技の安定化、適切な対象の絞り込み、適切な主要評価項目の設定のための情報を取得し、次相の検証的治験の実施計画に反映させる目的がある。医師主導治験とは医師自らが治験を企画・立案し、治験計画届を提出し、準備から管理を実施する治験である。

(注4) テイラーメイド方式心臓形状矯正ネット:
心不全悪化の最大の要因である進行性心拡大(=心臓リモデリング)をメッシュ状の袋で防止する医療機器で、心不全患者のCTやMRIの心臓画像と心臓状態(左室拡張末期圧)から心機能を最適化するように設計され、コンピューター編み機で患者毎に製造される。
fig_2.png

(注5) QOL:
クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の略称で、「生活の質」や「人生の質」という意味。

(注6) 先駆け審査指定制度:
世界に先駆けて革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品を日本で早期に実用化すべく、世界に先駆けて開発され、早期の治験段階で著明な有効性が見込まれる医薬品等を指定し、各種支援による早期の実用化(例えば、医薬品・医療機器では通常の半分の6ヶ月間で承認)を目指す制度。

(注7) 心臓リモデリング:
心臓 (特に左心室)の筋肉の収縮力低下が心室の壁の拡大をもたらし、心臓の壁の拡大がさらなる収縮の低下をもたらす悪循環となり、本来砲弾型の形をした心臓がボールのように丸くなる現象。拡張型心筋症だけでなく心筋梗塞後にも起こる。

(注8) First in Human Study:
医薬品、医療機器等を世界で初めて人に用いる臨床研究。治験として実施する場合は第一相試験(Phase1)に相当する。

治験に関するお問い合わせ

名古屋大学医学部附属病院 心臓外科
特任教授 秋田 利明
TEL:052-744-2693  FAX:052-744-2693
e-mail:takita(at)icornet.jp
※e-mailは(at)を@に換えて送信してください。