病院からのお知らせ

病院からのお知らせ

もどる


男性腹圧性尿失禁治療に関する医療機器の国内承認取得のお知らせ

                                                                                                                                                                    2022年29

サイトリ・セラピューティクス株式会社
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

男性腹圧性尿失禁治療に関する医療機器の国内承認取得のお知らせ

 サイトリ・セラピューティクス株式会社(以下「サイトリ」)は、昨日、サイトリが開発した
高度管理医療機器であるセルーション セルセラピーキット SUIについて、男性腹圧性尿失禁治療
のための医療機器として、国内製造販売承認を取得しましたのでお知らせいたします。今後、保
険診療下で治療を提供できるよう保険適用に向けた手続きを行います。

 2015年9月より、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学医学部附属病院泌尿器科の後藤百万
教授(治験当時、現在:独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 病院長)が治験調整医師
となり、男性腹圧性尿失禁の患者に対する日本で初めて脂肪組織由来再生(幹)細胞(Adipose
Derived Regenerative Cells
、 以下「ADRCs」)を用いた再生医療の医師主導治験(以下「本治験」)
を実施しました。この治験は、金沢大学附属病院、信州大学医学部附属病院、獨協医科大学病院と
の多施設共同治験で、201911月に終了しました。本治験では、尿失禁量が中等度以下で、行動
療法および薬物療法が無効または効果不十分、あるいは薬物療法が実施困難で、尿失禁が術後1
以上継続する男性腹圧性尿失禁患者において、ADRCs、並びに脂肪組織とADRCsを混和したものを
経尿道的内視鏡下で単回傍尿道周囲へ投与した時の有効性および安全性を確認しました。その結果、
安全性が確認され、有効性については、予め設定していた基準を達成致しました。その結果に基づき
201912月に厚生労働省に製造販売承認申請を行いました。日本は、ADRCsを用いた男性腹圧性尿
失禁治療に対し、「セルーション セルセラピーキット SUI」の製造販売承認を取得した初めての国
となります。

 後藤百万名古屋大学名誉教授は、次のように述べています。「私共は名古屋大学医学部附属病院
泌尿器科において、名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部の支援を受け、脂肪由来幹細胞を用
いた再生医療の開発を目指し、基礎研究から臨床開発まで約10年間にわたるTranslational research
を精力的に行ってきました。本治療は、吸引採取した腹部脂肪組織からセルーション セルセラピー
キット SUIを用いてADRCsを抽出し、経尿道的に尿道括約筋部に注入するものであります。この治療
は、自己組織由来の細胞を用いること、体外での細胞培養操作を必要としないこと、脂肪吸引・
ADRCs抽出・尿道注入までを3時間程度の一連の操作で実施できることから、低侵襲、かつ短時間で
実施できる有望な治療法と考えています。本法は日本発・世界初の治療となりますが、本治験が成功
し、今回治療機器として承認が得られたことは関係者にとって大きな喜びです。今後は、可及的早期
に保険適用を得て、尿失禁に悩む患者さんに本治療を提供できるようさらに努力を重ねたいと思いま
す。」


製品概要

販売名:セルーション セルセラピーキット SUI
医療機器承認番号:30400BZX00029000
一般的名称:脂肪組織分離キット


腹圧性尿失禁について

 腹圧性尿失禁は、尿道括約筋機能の障害により、腹圧負荷時に尿が漏れるものです。女性において
は妊娠・出産・加齢による骨盤底筋群の脆弱化や婦人科的手術による括約筋障害に起因し、日本では
400万人の患者がいると推定されています。また、男性においては前立腺肥大症、前立腺癌の手術
における括約筋障害により引き起こされるケースが多くみられ、女性に比べれば頻度は低いものの
数十万人の罹患者がいると推定されています。腹圧性尿失禁は直接生命にかかわることは稀であり
ますが、日常生活の多くの領域で支障を及ぼし、生活の質(Quality of LifeQOL)を著しく障害する
疾患です。特に男性の腹圧性尿失禁は、前立腺肥大症、前立腺癌手術後の罹患率が非常に高く、QOL
を障害するものであること、また低侵襲で治療効果の高い治療法が現存しないことから、新規治療法
の開発が急務とされています。1
   1後藤百万:自己脂肪組織由来幹細胞を用いた新たな尿失禁治療.泌尿器外科.2016;29(1):3-7.

脂肪組織由来再生(幹)細胞(ADRCs)を用いた腹圧性尿失禁治療
 麻酔下に約250mL程度の皮下脂肪吸引を行い、吸引脂肪組織からサイトリが開発したセルーション
セル セラピーキット SUIおよびセルーション遠心分離器を用いてADRCsを抽出します。本治療では脂
肪組織と抽出したADRCsを混合し尿道括約筋部粘膜下に注入、並びにADRCs単独を外尿道括約筋部に
注入することで、尿道が物理的に閉塞され、腹圧性尿失禁が改善されます。また、ADRCsを混合する
ことにより、脂肪組織の長期的な生着が促進されます。脂肪吸引、ADRCs抽出、尿道注入までを約3
間程度の一連の操作で実施することができます。


実施した医師主導治験 

 本治験では、尿失禁量が中等度以下で、行動療法及び薬物療法が無効又は効果不十分、あるいは薬物
療法が実施困難で、術後1年以上継続する腹圧性尿失禁に罹患している男性患者を対象としました。患者
自身から採取した皮下脂肪組織から、サイトリが開発した細胞分離装置(セルーション セルセラピーキ
ット SUI)を用いて分離されたADRCs、並びに脂肪組織とADRCsを混和したものを経尿道的内視鏡下で
単回傍尿道周囲へ投与した後、有効性及び安全性を評価しました。
 なお、本治験は、厚生労働科学研究費補助金(難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業、医療
技術実用化総合研究事業及び早期探索的・国際水準臨床研究事業)、日本医療研究開発機構の早期探索的
・国際水準臨床研究事業及び再生医療実用化研究事業、並びに名古屋大学医学部附属病院先端医療開発経
費の支援を受け、実施しました。
 臨床試験デザインや臨床試験成績は、以下をご参照ください。この治験に参加された全ての患者さん、
並びに治験の実施に協力された各医療機関の皆さんに感謝申し上げます。
Int J Urol. 27(10): 859-865, 2020
BMC Urol. 17(1): 89, 2017
UMIN試験IDUMIN000017901ClinicalTrials.gov IdentifierNCT02529865


サイトリについて

 サイトリ・セラピューティクス株式会社は、多様な疾患治療を目的とした自己ヒト皮下脂肪組織から
採取した非培養脂肪組織由来再生(幹)細胞「Adipose Derived Regenerative CellsADRCs)」を用い
た細胞治療を開発しているセルセラピー企業です。各種前臨床試験の論文において、ADRCsが血管新生、
抗炎症および繊維化の改善に関与していることが示唆されています。詳しくは、https://www.cytori-jp.com
をご覧ください。