病院からのお知らせ

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他家脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いたIgA腎症に対する医師主導治験開始に関するお知らせについて

名古屋大学医学部附属病院は春日井市民病院と共に、IgA腎症に対する他家脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた医師主導治験の準備を進めて参りました。このたび、IgA腎症を対象疾患とした他家脂肪組織由来間葉系幹細胞製品「ADR-001」の細胞を用いた医師主導治験において、1例目の投与が開始されましたのでお知らせいたします。

IgA腎症は腎炎徴候を示唆する尿所見(糸球体性の血尿、尿タンパク陽性)を呈し、糸球体に優位なIgA沈着が認められ、その原因となり得る基礎疾患が認められないものであります。我が国における発症率は10万人あたり3.9~4.5人/年と推計されており、指定難病のひとつで、20年腎生存率は60.3%とする報告があります。IgA腎症に対してはステロイドパルス治療やステロイドパルス+扁桃腺摘出術等が広く行われています、海外臨床試験の報告から治療の可能性が残されたものの、主に感染症による重篤な有害事象の観点で課題があることから、IgA腎症に対する副作用の少ない新規治療法が望まれています。IgA腎症に対する再生医療の開発は世界で初めての試みとなります。

 ADR-001は、ロート製薬株式会社が開発を進めている他家脂肪組織由来幹細胞を構成細胞とする細胞製剤です。動物由来のウイルス感染のリスクを考え動物由来原料を含有せず、脂肪由来幹細胞の能力を最大限に引き出す独自の無血清培地で脂肪組織に含まれる幹細胞を培養しています。脂肪組織は組織中に多くの間葉系幹細胞を含み、採取時の侵襲性が比較的低く、手術時など余剰組織となるケースもあることから、比較的入手が容易であり、他家脂肪細胞による同種移植のため、必要な患者に迅速に提供できるメリットがあります。現在までに、非代償性肝硬変患者及び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症肺炎患者を対象とした治験が実施されています。

 これまで名古屋大学医学部附属病院の丸山彰一教授らのグループは腎炎モデル動物を用いた評価において、ADR-001を複数回静脈内投与する事で、腎炎症状が改善される効果を確認したことから、ADR-001はIgA腎症の新たな治療選択肢になり得ると考えています。

 【臨床試験(医師主導治験)の概要】
    対象疾患:IgA腎症
    目的:IgA腎症患者において、ADR-001を1及び2回静脈内投与(点滴静注)した時の安全性及び忍容性を評価する。