挨拶
我々、名古屋大学の老年医学教室は、1979年に開設された我が国有数の歴史を持つ老年医学教室です。当教室は、伝統的に多様なバックグラウンドをもつ人たちが集まり切磋琢磨をしながら、1)全人的な高齢者医療の実践、2)老年医学の進歩のための研究、3)地域における高齢者医療のリーダーとなる人材の育成を行っています。
現代医学では、大規模なRandomized control studyの結果がエビデンスとして最重要視されます。臓器横断的かつ包括的に高齢者を診療するためには、様々なエビデンスについての幅広い「知識」が必要です。しかし、我々が日頃診療しているのは、より高齢で、身体機能・認知機能・臓器機能が低下し、多病を併存してもったフレイルな方々です。こうした背景の方々は、大規模なRandomized control studyからは多くの場合、除外されています。我々の診療の現場においては、そうした研究から得られたエビデンスをそのまま適応してよいかどうか常に多面的な検討をして判断することが求められます。エビデンスを単に知るのみでなく、エビデンスの成り立ちや目的とともに、その限界までを理解した深い「知識」をもったうえで、それをどのように診療に生かしいくのかを常に「考える」ことが求められます。さらに、多病が併存し、多くの問題も持たれた方の包括的な診療にあたっては、その方の生き方、その人らしさを考慮して、治療に優先順位をつけることも求められることも珍しくなく、やはり「考える」力が求められます。また、高齢者の治療や介護を行う上では、エビデンスとは異なる、経験に基づいた様々な「知恵」が求められることも多いと思います。我々の教室では、「知識」と「知恵」と「考える力」を持った老年内科医を多く育てていきたいと考えています。
また、老年医学にはまだまだ解決しなければならない問題が山積しています。医療面のみならず多領域の力を結集して、問題解決のために研究成果をあげていくことが求められている分野です。世界に先駆けて高齢化が進んでいる日本の老年医学教室として、この分野の進歩のために、研究成果を世界に発信していくことも我々の教室の使命です。もちろん、研究は研究に終わるのではなく、得られた知見を日頃の診療の現場に還元することも重要です。
是非、多くの方に我々の教室を知っていただき、仲間に加わっていただいて、診療を通して老年医学の醍醐味を味わっていただくとともに、老年医学の進歩のための研究成果を世界に発信していく経験をしていただきたいと思います。
名古屋大学大学院医学系研究科
地域在宅医療学・老年科学(老年内科)
科長・教授梅垣 宏行
教授プロフィール
氏名 | 梅垣 宏行 |
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役職 | 名古屋大学大学院医学系研究科 地域在宅医療学・老年科学(老年内科) 科長・教授 |
略歴
1990年3月 | 名古屋大学医学部卒業 |
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1990年5月 | 市立四日市病院 |
1993年4月 | 名古屋大学医学部大学院 |
1995年3月 | 米国国立衛生研究所、老化研究所 |
1998年3月 | 名古屋大学医学部大学院卒業、医学博士取得 |
2002年5月 | 名古屋大学老年科助手 |
2007年4月 | 名古屋大学老年内科助教 |
2012年10月 | 名古屋大学老年内科講師 |
2017年1月 | 名古屋大学老年内科准教授 |
2023年1月 | 名古屋大学老年内科教授 |