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本研究科 髙橋 雅英 教授が「高松宮妃癌研究基金学術賞」を受賞しました

 令和2年2月21日に、名古屋大学理事・副総長であり、本医学系研究科の髙橋雅英教授が高松宮妃癌研究基金学術賞を受賞されました。
 高松宮妃癌研究基金学術賞は昭和43年(1968年)から続く賞で、がん領域において特に優れた業績を挙げた学者・研究者に対し、毎年原則2名に贈呈されています。今回、髙橋雅英教授は「がん細胞の浸潤・転移に関わるGirdinファミリー分子の発見と機能に関する研究」というテーマで受賞されました。
 髙橋雅英教授は遺伝子再構成によって活性化される新規がん遺伝子RETを発見し、RETタンパクによって活性化される細胞内シグナル伝達系を詳細に解析し、細胞がん化のメカニズムの解明に貢献してきました。一連の研究過程で、RETを含む受容体型チロシンキナーゼのシグナル伝達に重要な酵素Aktキナーゼの役割に注目して解析を行い、Aktの新規基質としてGirdinと名付けた新たな分子を発見しました。Girdinは増殖因子刺激に伴って活性化されるAktによりリン酸化を受けると、細胞内のアクチン細胞骨格の構造変化を引き起こし、がん細胞の浸潤・転移に重要な役割を果たすことを明らかにしました。AktによるGirdinのリン酸化はがん細胞が動きやすくなるように細胞の先端部の構造変化を引き起こすこと、ヒト乳がん細胞においてGirdinの発現をノックダウンすると、マウスに移植した腫瘍の転移能が著しく低下することを示し、Girdinのがん転移における重要性を明らかにしました。
また、Girdinファミリー分子であるDapleがWntシグナルの下流で働き、細胞運動に重要な役割を果たすことが知られているRac活性を制御し、がん細胞や線維芽細胞の運動に関与していることも明らかにしました。胃がん細胞のマウスへの移植系を用いて、DapleがWntシグナルを介した胃がん細胞の浸潤、転移に重要な役割を果たしていることを証明しました。今後、GirdinやDapleを標的とした新たながんの治療法の開発が期待されます。

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