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新任教授のご紹介(人間拡張・手の外科学 山本 美知郎 教授)

ご挨拶

山本先生写真.jpg202321日付けで名古屋大学大学院医学系研究科 運動・形態外科学 人間拡張・手の外科学の教授を拝命いたしました山本美知郎(やまもとみちろう)と申します。ここに謹んでご挨拶申し上げます。

私は1998年に旭川医科大学を卒業し、名古屋掖済会病院で初期研修を開始し、2年目に名古屋大学整形外科に入局しました。医師になって最初の4年間を過ごした名古屋掖済会病院は、当時も現在も東海地方で最も数多くの四肢外傷治療を行っており、マイクロサージャリーを含む多種多様な治療経験を積むことができました。手外科が専門の木野義武部長からはatraumatic surgeryの真髄を見せて頂きました。その後、蒲郡市民病院(千葉晃泰副院長と荒尾和彦部長)と県立愛知病院(中西啓介部長と米川正洋部長)にて、それぞれ整形外科医として関節外科や脊椎外科、そして骨軟部腫瘍外科について学びました。2005年に名古屋大学手の外科の大学院に入学し、始めの1年間は中日病院整形外科・名古屋手外科センターで社会人大学院生として過ごしました。中日病院では初代の名古屋大学手の外科教授を退任されたばかりの中村蓼吾先生と私の2人常勤の体制でした。中村蓼吾先生からマンツーマンの指導を受け、手関節外科を中心に手外科医としての研鑽を積みました。

2006年から名古屋大学手の外科において2代目の平田仁教授のもと大学院生として基礎および臨床研究を行ってきました。基礎研究ではラットの坐骨神経癒着モデルを用いて癒着防止材を開発し学位を取得しています。臨床研究としては安全性を高めた次世代型関節鏡手術の開発を行ってきました。理化学研究所の画像情報処理研究チームの横田秀夫チームリーダーと共同研究を行う機会を得て、コンピュータシミュレーションや拡張現実(Augmented Reality)を用いたIntelligent healthcareの開発を2013年ころから開始し、現在も毎月ミーティングを行いInnovationを目指して努力しているところです。

外科的治療においてもエビデンスが求められています。20164月から1年間ミシガン大学手外科のKevin C Chung教授のもとに留学しました。Chung教授は手外科領域におけるアウトカム研究の第一人者です。多施設共同研究などでエビデンスを得るだけでなく、Cost Effectivenessなど政策決定に役立つ研究を推進していました。本邦においては社会の中の手外科といった俯瞰的な視点での解析は十分には行われておらず、課題の一つと考えています。

手の外科学講座は2020年から人間拡張・手の外科学に名称を変更しています。人間拡張とは人間の能力を補完・向上、または新たに獲得するための技術です。身体、感覚、認知、コミュニケーションなど4つの軸があります。要素技術としてロボット、センサー、通信、AIAR/VR、ハプティクスなどがあり、これらの技術を用いて人々に無限の可能性を与えるものです。私たちはRoboticsAIを専門としている理化学研究所知能行動制御連携ユニットの下田真吾リーダーとも共同研究を続けており、Disabilityに対する新たな解決策としての医工連携による研究を進めます。

世界に先駆けて超高齢社会に突入している我が国において、手の老化による障害や外傷が増加しています。手指の変形性関節症はこれまで"forgotten disease"と呼ばれ、治療法の開発が進んでいません。しかしブシャール結節に対する人工関節置換術はメタ解析の結果は良好であり、これから積極的に取り組んでいく治療法の一つです。

当教室からは米国や欧州へ複数のスタッフが留学し、精力的に海外での学会活動を行ってきました。海外からの多くの留学生も受け入れてきたことで、世界の手外科医とネットワークを形成しています。コロナにも慣れ、国際的な学術活動を再開する時期が到来しています。激動する世界情勢において困難な事態に直面することも少なからずあると思いますが、私たちは勇気ある知識人として挑戦を続ける教室を目指します。今後とも皆様にはご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

 

略歴

19983月 旭川医科大学卒業

19984月 名古屋掖済会病院で初期研修

20024月 蒲郡市民病院整形外科

20044月 県立愛知病院整形外科

20054月 名古屋大学大学院手の外科学(中日病院整形外科に初めの1年間勤務)

20124月 名古屋大学医学部附属病院救急科 病院助教

20138月 名古屋大学医学部附属病院手の外科学 講師

20164月 ミシガン大学留学

20174月 名古屋大学大学院医学系研究科個別化医療技術開発講座 特任講師

20221月 名古屋大学人間拡張・手の外科学 特任准教授

20232月 名古屋大学人間拡張・手の外科学 教授