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新任教授のご紹介(乳腺・内分泌外科学 増田 慎三 教授)

ご挨拶

Norikazu_Masuda.jpg このたび、令和3年10月1日付けで、名古屋大学大学院医学系研究科 病態外科学講座 乳腺・内分泌外科学の教授を拝命いたしました。ここに謹んでご挨拶申し上げます。

 私は平成5年に大阪大学医学部を卒業ののち、関連病院での研修期間に、診断から手術・薬物療法と幅広く、そして一人の患者さんと長くお付き合いできる乳癌診療に深く興味を持ち、乳腺専門医を志しました。大学院では、ホルマリン固定標本中のmRNAの構造変化の解析とその固定組織からの効率的な抽出法に関する基礎研究に加え、その臨床応用(腋窩リンパ節微小転移の臨床学的意義に関する研究)により学位を取得いたしました。手術病理標本を用いた遺伝子発現解析による治療個別化治療の実践が進んでいますがその礎となりました。

 学位取得後、2001年から市立堺病院の勤務では乳腺センターのチーム医療を立ち上げ、2003年から国立病院機構大阪医療センターで、臨床の最前線で、乳癌診療を担うとともに、患者さんによりよい新しい治療法の開発を目指し、臨床試験や新薬開発治験などの臨床研究に注力してまいりました。術前薬物療法の効果に応じた個別化治療を主テーマに多くの臨床試験、また、医師主導治験の責任医師を経験し、我が国における新薬の適応拡大にも携わりました。

 臨床研究の推進には多施設での協働が欠かせません。前任の大阪医療センターでは、JCOG, JBCRG(Japan Breast Cancer Research Group)などの全国組織、近畿地区におけるKBCSG-TR(Kinki Breast Cancer Research Group - Translational Research)の地域での活動の中心役割を担ってまいりました。今後は、名古屋東海地区の名大関連病院の先生方のご協力を得ながら、名古屋発の新しいエビデンスの創出をめざしていきたいと考えています。

 乳癌は女性の癌罹患の中で第1位であり、好発年齢が40-60歳代であることからも、社会的にも注目度の高い疾患です。一方、治療法の進歩により5年生存率は優に90%を超え、治療成績は向上してまいりました。治療のescalation de-escalationの視点から、手術と薬物療法のバランスを個々に考え、より個別化そして最適な治療を提供することが期待されており、臨床研究と基礎研究の融合からその実現をめざすことが現在取り組むべき優先課題と考えております。手術では根治性を高めつつ、センチネルリンパ節生検による低侵襲手術、形成外科との協働で整容性を高めるOncoplastic surgeryや一期・二期再建術にも積極的に取り組んでいます。また、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の診断や治療、そして予防医療を通して、乳癌100%克服を目指します。

 また、甲状腺・副腎・副甲状腺などの内分泌疾患の外科的治療も名古屋東海圏の中核基幹病院としてその責務を担っております。より低侵襲、安全な手術のために、常に新たな医療技術の開発に取り組んでいます。また、当科では、長年にわたり、代表的な遺伝性腫瘍症候群である多発性内分泌腫瘍症12型の治療を多数手がけており、豊富な経験を有しています。遺伝性腫瘍においても、遺伝学的な知識が正しい治療方針決定のために非常に重要です。また、近年では遺伝性乳癌卵巣癌症候群の診断・治療にも積極的に取り組んでいます。

 患者さんと共に考え、笑顔と寄り添う気持ちで、患者さん中心の診療を中心に、引き続き最先端の医療、教育、研究を実践し、将来を担う優秀な乳腺・内分泌外科医の育成に励んでいく所存です。皆様のご厚誼とご指導ご鞭撻を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

略歴

19933月 大阪大学医学部 卒業
19936月 大阪大学医学部附属病院 第二外科 研修医
19946月 大阪逓信病院外科(NTT西日本大阪病院)
19974月 大阪大学大学院医学系研究科臓器制御医学病態制御外科学講座
20013月 大阪大学大学院医学系研究科卒業 医学博士
20014月 市立堺病院 外科医長
20035月 国立病院機構 大阪医療センター 外科 医師
20134月 国立病院機構 大阪医療センター 外科 医長・乳腺外科 科長
   2008年~大阪大学大学院乳腺内分泌外科臨床准教授、2014年から同臨床教授兼任
2021年10月 名古屋大学大学院医学系研究科 病態外科学講座 乳腺・内分泌外科学 教授