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新任教授のご紹介(分子腫瘍学 鈴木 洋 教授)

 ご挨拶

 hp_suzukihiroshi202005.jpeg令和2年5月1日付で、髙橋隆先生(分子腫瘍学)の後任として附属神経疾患・腫瘍分子医学研究センター 分子腫瘍学 教授を拝命しました鈴木洋と申します。新しく研究室を始めるにあたり、これまでの研究のバックグラウンドと抱負を紹介し、教授就任の挨拶とさせていただきたいと思います。

 私は2004年に東京大学医学部医学科を卒業し、3年間の臨床研修(初期臨床研修および血液・腫瘍内科での研修)を行いました。血液・腫瘍内科は、がん・免疫・再生医学・細胞療法といった領域のBench-to-Bedside、Bedside-to-Benchが交錯する奥深い分野であり、ここで大きな、しかし、現実的な展望をもった基礎研究の重要性を痛感しました。2007年に東京大学大学院(分子病理学)に進学し、宮園浩平教授のもとで大学院生として新しいテーマにチャレンジする機会をいただき、古典的なセントラルドグマの外側で遺伝子を制御するマイクロRNAの研究を行ってきました。マイクロRNAは前任の髙橋隆先生が重要な発見をされてきた分野でもあります。

 大学院卒業後、引き続き、分子病理学と情報科学を統合することでマイクロRNAとがんの関係を探索し、2014年からマサチューセッツ工科大学(MIT)コークがん総合研究所のPhillip A. Sharp教授(Institute Professor、1993年ノーベル生理学・医学賞)のもとで6年間研究を行いました。

 MITでは、バイオインフォマティクス・次世代シーケンサー・ゲノム編集などの技術躍進に基づく大規模データ群の統合的解析から、ゲノム・転写・RNAネットワークの関係性を多層的・定量的に解釈し、遺伝子制御の作動原理や疾患のメカニズムを探索する幅広い研究を推進してきました。MITやPhillip A. Sharpの思い出は簡単には語り尽くせないものですが、折に触れて紹介できればと考えています。ボストン、いや、アメリカの生命科学の支柱の1人であるPhillip A. Sharpの精神性・人間性を間近に勉強できたことは大きな経験であり、これから、さらに新しい道を開拓していきたいと考えています。

 当研究室では、これから、分子と腫瘍、「遺伝子(ゲノムとRNA)の制御」と「がん」の研究を推進していく予定です。取り扱う項目はゲノム、エピゲノム(スーパーエンハンサー)、ゲノム3次元構造、非コードRNA、トランスクリプトーム、機能ゲノミクス、相分離と多岐にわたりますが、これまで培ってきた経験をもとに、基礎医学、社会医学、臨床医学教室と協力して、学内外・国内外の研究交流にも積極的に貢献していきたいと考えています。

 研究室の大きな使命は、学問・研究を探求すること、世界に挑戦すること、病める人・世界に資することですが、より重要な使命は、これらを体現する人材を世界に羽ばたかせることです。これらを通じて、公共財である教育・研究・医療に貢献したいと考えております。皆様には、今後とも一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

 なお、今回の私の着任は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下での着任となり、この場を借りて、お世話になりました関係の皆様に心より感謝申し上げます。また、COVID-19対応と日常診療の両立に尽力されている医学部附属病院の皆様にも心より感謝申し上げます。

 最後に、学生のみなさんにも挨拶をさせていただきたいと思います。COVID-19は学生のみなさんにも大きな影響を与えています。みなさんが現在学んでいる医学は、疾病(感染症)・戦争・差別・貧困といったさまざまな不条理や制約が常に存在する中で、これらに屈することなく人類が考えることを止めずに少しずつ積み上げてきたそもそも苦心の業績です。みなさんはそれらを学び、忍耐と勇気をもって新たに寄与しようとしています。そうであるならば、この状況においてもみなさんの医学に対する志や情熱は簡単にゆらぐものではないだろうと思っており、それにこたえる責任を痛感しているところです。みなさんとさまざまな形でともに勉強できることを楽しみにしています。

略歴

2004年                     東京大学医学部医学科 卒業
2004年-2006年     東京大学医学部附属病院 臨床研修医
2006年-2007年     東京大学医学部附属病院 後期研修医(血液・腫瘍内科)
2007年-2010年     東京大学大学院医学系研究科 分子病理学 博士課程(早期修了)
        (指導教官:宮園浩平教授)
        (2008年-2010年 日本学術振興会特別研究員(DC1))
2010年-2014年     東京大学大学院医学系研究科 分子病理学 特任助教
2014年-2019年     マサチューセッツ工科大学 コークがん総合研究所 客員研究員
        (Phillip A. Sharp研究室)
2019年-2020年     同上 リサーチサイエンティスト
2020年 5月            名古屋大学大学院医学系研究科 附属神経疾患・腫瘍分子医学研究センター 分子腫瘍学 教授