名古屋大学希少性・難治性がん解析研究講座がスタート ~新しい診断法実用化に向け臨床研究加速~ - ニュース&イベント | 名古屋大学大学院医学系研究科・医学部医学科

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名古屋大学希少性・難治性がん解析研究講座がスタート ~新しい診断法実用化に向け臨床研究加速~

 名古屋大学大学院医学系研究科は、2020年1月に希少性・難治性がん解析研究講座(産学共同研究講座)(特任教授 檜 顕成)を新たに設置しました。本研究講座は、尿中腫瘍マーカーを用いて、従来検査が困難であった希少性・難治性がんの新しい診断技術を開発することを主な目的としています。
がんは国民の2人に1人が罹患すると言われ、これまで種々の画像診断法が開発されてきました。この中で、成人で使用する画像診断法の使用が難しい小児がんや、体の深部にある臓器のため画像診断法では発見が難しい膵臓がんや胆道がんでは、新しい簡易検査法が切望されています。
 この目的のために、血液中のmiRNA検査に代表されるリキッドバイオプシーの研究が世界で活発に行われています。これは、特にがん領域で、血液などの体液を用いて診断や治療効果予測を行う技術です。しかし、これらの方法では今までに正確にがんの診断がまだできていないこと、被験者に負担のある血液を使用する方法が多いこと、などの課題があります。
 これまで本学大学院医学系研究科小児外科学の内田 広夫教授は株式会社日立製作所研究開発グループ基礎研究センタ(以下、日立)と、尿中腫瘍マーカーによるがん検査の研究を2017年から行ってきました。これは、がんが増殖する際に必要とする大量の細胞の高分子化合物が血液中に一部放出されることを踏まえて、尿中における代謝物の存在量の変化として捉える方法です。その結果、尿中代謝物の網羅的解析、尿中腫瘍マーカーの抽出を踏まえたがん検査モデルにより、複数のがん腫においてがん患者と健常者を識別できることがわかりました。加えて、最近では、複数の尿中腫瘍マーカーによる代謝物パネル検査法という独自の方法を開発し、良性腫瘍をも抽出できる可能性を見出しました。これは、将来、過剰な検査、診断を低減することにつながると考えています。

ポイント

○尿中腫瘍マーカーによる希少性・難治性がん検査のための研究講座設置
○臨床研究加速のための多様な医療機関連携体制推進
○がんの早期診断と患者のQoLを両立させる新しい社会の構築に向けた取り組み

1.今後の展開

 検査法確立に向けて臨床的評価を行うためには、もともと患者数が少ない希少性がん・難治性がん患者の尿検体を多数収集することは、一病院だけでは困難な状態にありました。
今回、研究講座を設けることで、名古屋大学を中心とした全国の拠点病院とのネットワーク(京都府立医科大学、国立成育医療研究センター、さいたま県立小児医療センター、国立がん研究センター東病院など)を構築して多数の尿検体を集め、臨床研究を加速して早期の実用化を目指すことを考えています。
 名古屋大学大学院医学系研究科は、この新しい取り組みを通して、がんの早期診断と患者のQoLを両立させる新しい社会の構築を目指します。

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図 希少性・難治性がん解析研究講座位置づけ(2018年4月の日立新聞発表資料をもとに、名大が追記)

2.用語説明

希少性がん:小児がんなど、難治性がん:膵臓がん、胆道がんなど
尿中腫瘍マーカー:がんの進行とともに増減する尿中代謝物