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健康増進医学(協力)精神病理学・精神療法学(精神健康医学)

研究室概要

精神健康医学教室は、1991年に高橋俊彦先生が教授として教室の統率を始め、2004年の高橋先生の退官後は小川豊昭先生が教授として、2019年の小川先生の退職後は古橋忠晃が准教授として統率を引き継いでいる。高橋先生は妄想研究などを精神病理学の立場から築き上げ、小川先生は精神分析学を実践する第一人者である。
実際に精神健康医学教室は英語表記ではつまりPsychopathology & Psychotherapy「精神病理学と精神療法学」となっている。人間の精神現象を記述する精神病理学が人間相互の精神の関わりを持つ精神療法なくしてあり得ないし、反対に、精神療法が精神現象を記述する学問なしで行われるなら関わりを持つことはできてもそれを記述して伝達することができなくなってしまう。精神健康医学教室で研究する院生にとっては、自身の個人的な臨床経験が最も重要であるが、その記述の方法についてある程度はもちろん指導を受けることができるものの、その要の部分は個人で身につける必要がある。

研究プロジェクト

  1. 日仏ひきこもり比較共同研究(古橋忠晃)
  2. リエゾン・コンサルテーション精神医学(長島渉)

教員

構成員名役職所属
古橋 忠晃 准教授 精神健康医学
長島 渉 助教 精神健康医学
横井 綾 特任助教 精神健康医学

研究キーワード

精神医学、精神病理学、精神分析、精神療法、社会文化精神医学、思春期精神医学、統合失調症・気分障害・倒錯・神経症・ひきこもりなどの研究

私(古橋)の場合

私が現在の教室に教員として入ったのは2005年である。それ以前は大学病院や市中の病院で精神科医としての臨床の研鑽を積んできた。その時代から、教室の紹介で書いたような高橋俊彦先生や小川豊昭先生が、さらには名古屋大学医学部精神科の精神病理の研究グループのなかには大御所の先生方がいらっしゃってとても恵まれた環境であった。それゆえに、私の方法論としては、精神病理学と精神療法学の両方である。研究テーマとしては、以前はジェンダー関係の精神医学の諸問題、現在は、青年や近年では中高年までその年齢層が広がりさらには出現地域も日本から海外に広がった(とりわけフランスへの広がりが私の関心の対象でもある)「ひきこもり」である。

研究で重要なことは、どんな分野にも言えることであるが、まだ誰だれにも開拓されていない領域に踏み込むことや誰にも発見されていないことを発見することである。しかも、精神医学の場合は、他の科よりもはるかに時代の変化を受けやすく、現時点では全て研究され尽くしているように見えても、現在進行形で新しい現象が次々と起きてくるので、対象になる領域には事欠かない。例えば、インターネットなどが人間の精神に大きな影響を与えたことは周知の通りであり、精神の不具合に与えた影響も無視できず、このあたりの研究をしたい人がいれば精神健康医学教室が最も適していると思われる。私の場合は、もともと、フランスの精神医学や精神分析を勉強してきたこともあって、そのフランスにしばしば滞在しているうちに、フランスにも普段名古屋大学で診療している社会的退却をする若者(つまり「ひきこもり」)を見いだし彼らに対してひきこもりという言葉でより説明できることを示すようになった。フランスには以前から社会的に退却する若者が存在していたにもかかわらず彼らを指し示す言葉がなかったのである。今は定期的にフォローしているフランスのひきこもりも存在するし、フランス各地や最近ではフランス以外のヨーロッパ諸国(イギリス、オランダ、スウェーデンなど)でも講演を依頼されることもある。それはさておき、それがどのような新しい現象であるのかを学問的に記述するのも、やはりある種の既存の精神医学の伝統的な素地が必要なのである。そこで精神病理学と精神療法学の両方の素地があることは極めて恵まれていると言えるだろう。

大学院入学案内

当教室は、古橋准教授は、長島助教と共に学生のメンタルヘルスの仕事をしており、広く思春期青年期の病理の研究を行っている。研究の基盤は精神病理学や精神分析である。また、科学研究費から助成を受け、ひきこもりの日仏共同研究も行っており、国内外の研究者に幅広い人脈を持っている。研究室にはフランス人研究者が時折滞在し共同で研究を行っている。大学院生にも親切で、人柄はとても親しみやすい。

長島助教は、古橋准教授と共に学生のメンタルヘルスの仕事をしている。研究テーマはリエゾン・コンサルテーション精神医学である。慢性身体疾患を持つ患者の精神医学的問題に取り組んでおり、特に緩和医療、精神腫瘍学、口腔心身症を専門としている。