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健康増進医学(協力)精神病理学・精神療法学(精神健康医学)

研究室概要

<本研究室の歴史>

本研究室の歴史は、19914月に名古屋大学総合保健体育科学センターに教授として着任した高橋俊彦教授が「精神健康医学」講座を主導したことに始まる。高橋教授が20043月に定年退官した後は、小川豊昭教授が研究室の名称を「精神病理学・精神療法学Psychopathology and Psychotherapy」講座へと変更し、本研究室の運営を継承してきた。小川教授が20193月に定年退任した後は、古橋忠晃准教授が小川特任教授とともに本研究室の運営を担ってきた。20243月に小川教授が特任教授の任を終えた後、20244月に総合保健体育科学センターに教授として着任した岡田暁宜が小川名誉教授と古橋准教授と長島助教ともに本研究室の運営を担うことになった。

高橋先生は、精神科医であり、妄想研究の第一人者の精神病理学者でもある。小川先生は、精神科医であり、日本と仏国で精神病理学を学び、日本と英国で精神分析の訓練を受けた訓練精神分析家である。古橋先生は、精神科医であり、日仏におけるひきこもり研究の第一人者の精神病理学者である。長島渉先生は、精神科医であり、リエゾン・コンサルテーション精神医学に造詣が深い。

本研究室は、名古屋大学大学院医学系研究科の基礎医学領域の協力講座である健康増進医学の一つであり、所属する教員は名古屋大学総合保健体育科学センター保健管理室において、それぞれの専門性を大学の教職員あるいは学生のメンタルヘルスケアに携わっている。

<精神病理学とは>

名古屋大学名誉教授である笠原嘉先生によれば、精神病理学とは、精神医学における方法論の一つで、精神病ならびにその他の精神障害を心理学的側面から捉えるための学問である。精神病理学には、精神症状の記述、分類、命名や疾患単位、臨床単位の類型化を主な目的として、患者が呈する症状をできるだけ主観や理論を交えずに記述する「記述的精神病理学」(ICDDSMなど)、人間の心に無意識を想定する精神分析理論に基づいて人間の心の内的世界に光をあてる「力動的精神病理学」(精神分析学)、人間とは何かという問いを基盤に患者の病的体験や病理を理解する「人間学的精神病理学」、先入観や判断を保留にして意識に表れる現象に注目する現象学的な方法によって患者の症状の主観的体験の理解する「現象学的精神病理学」などがある。

<精神療法学とは>

精神療法学とは、精神医学や臨床心理学において専門的・職業的な訓練を受けた専門家によって行われる心理的な治療を指す精神療法に関する学問である。日本では、医師によって行われる場合には精神療法、心理職によって行われる場合には心理療法と呼ぶ慣習があるが、本質的に同じです。伝統的に作用機序から、表現的精神療法、支持的精神療法、洞察的精神療法などに分けられるが、今日ではさまざまな種類の精神療法がある。治療期間によって短期精神療法や長期精神療法など、治療対象によって個人精神療法、集団精神療法、家族療法、夫婦療法など、治療設定によって外来精神療法や入院精神療法などに分けられる。日本精神神経学会では、専門医制度研修プログラムにおいて、支持的精神療法を施行できること、認知行動療法、精神力動的精神療法、森田療法・内観療法のいずれかについて、指導者の下で経験することを要件にしている。一方、精神分析理論に基づく個人療法の方法は、精神分析、精神分析的精神療法、精神力動的精神療法、さらに力動的アプローチなどに広がりを見せている。

研究プロジェクト

岡田 暁宜

私は心身症臨床に携わる過程で生物心理社会的医学モデルbio-psycho-social medical modelEngel, G,1977)や心身医学について学び、社会医学において産業精神保健や学校精神保健について学んだ後、これまで大学保健管理室で精神科産業医および精神科学校医としての実践経験を積んできた。並行して、精神科病院や精神科診療所において力動精神医学や青年期精神医学を実践し、日本精神分析学会で精神分析的精神療法の訓練を受けて、日本精神分析協会で精神分析の訓練を受けた。私の研究上の関心は、さまざまな医療、産業、教育、福祉などの領域における精神分析的理解に基づく症例/事例研究や実践研究であり、それらは自然科学と人文社会学の間の学際性を主な特徴としている。

古橋 忠晃

私の場合は、もともと、フランスの精神医学や精神分析を勉強してきたこともあって、フランスにしばしば滞在しているうちに、私はフランスにも普段名古屋大学で診療している社会的退却をする若者(つまり「ひきこもり」)を見いだし彼らに対してひきこもりという言葉でより説明できることを示してきた。フランスには以前から社会的に退却する若者が存在していたにもかかわらず彼らを指し示す言葉がなかったのである。今は定期的にフォローしているフランスのひきこもりも多く存在するし、フランス各地で専門家向けや市民講座などの講演を依頼される。それがどのような新しい現象であるのかを学問的に記述するのも、やはりある種の既存の精神医学の伝統的な素地が必要なのである。そこで精神病理学と精神療法学の両方の素地があることは極めて恵まれていると言えるだろう。

長島 渉

私の専門はコンサルテーション・リエゾン精神医学です。主な研究領域は、精神腫瘍学、HIV診療チームと精医療チームの連携、口腔顔面痛に対する歯科医師との治療連携です。大学の学生相談においても多部門連携を行っています

教員

構成員名役職所属
岡田 暁宜 教授 精神病理学・精神療法学
古橋 忠晃 准教授 精神病理学・精神療法学
長島 渉 助教 精神病理学・精神療法学

研究キーワード

精神医学、精神病理学、力動精神医学、精神分析、精神療法、社会・文化精神医学、青年期精神医学、心身医学、病跡学、大学精神保健、産業精神保健、精神病、うつ病、神経症、倒錯、自閉スペクトラム、ひきこもり

大学院入学案内

本研究室はいわゆる実験系の生物学研究を行う研究室ではない。そのため精神病理学であれ、精神療法学であれ、本研究室で研究を行う教員、大学院生、研究生は、それぞれの臨床経験や臨床実践に基づいて、自らの研究領域と研究対象を探すことが求められる。つまり自分自身で研究対象と研究領域を確保する必要があります。