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健康増進医学(協力)健康栄養医学

研究室概要

健康栄養医学研究室では、栄養素の消化吸収の生理を、細胞・分子レベルで研究している。主要テーマは、"膵臓の重炭酸イオン(HCO3-)分泌メカニズム"である。膵液中のHCO3-は、膵管の上皮細胞から分泌され、小腸内で胃酸を中和するだけでなく、腺房細胞から分泌された消化酵素が膵管腔内で沈殿するのを防いでいる。難治性の膵臓疾患である嚢胞性線維症と慢性膵炎では、膵HCO3-分泌の低下により膵管がprotein plugで閉塞するため、膵外分泌機能が徐々に障害され、消化栄養不良をきたす。当研究室は、多角的にこれらの病態の分子生理の解明に取り組んでおり、特に、単離した小膵管を用いたHCO3-の上皮膜輸送の解析を得意としている。また、2015年に難病に指定された嚢胞性線維症の遺伝子診断、機能診断、事務局を担当している。

研究プロジェクト

1.膵臓の重炭酸イオン分泌メカニズムの研究

粘膜上皮表面の保湿とアルカリ化は、生体防御と消化吸収に必須である。当研究室では、生体で最も高濃度の重炭酸イオン(HCO3-)を分泌する膵臓の導管を標本として用いて、粘膜上皮細胞のHCO3-輸送メカニズムを研究している。膵臓は、インスリンなどの消化管ホルモンを分泌する内分泌組織と、外分泌組織から構成される。外分泌組織はさらに、消化酵素を産生し分泌する腺房細胞と、HCO3-と水を分泌する導管細胞に分けられる。当研究室では、小動物の膵臓から単離した小膵管(径~100μm)を使い、管腔を人工膵液で灌流して生体内の環境を再現した状態で、HCO3-輸送のメカニズムを解析している(図1)。細胞内外の微小空間の各種イオン濃度の変化、容積、膜電位をモニターすることにより、細胞レベルのHCO3-と水の輸送を測定する。図2は、当研究室に蓄積されたデータを元に作成した、膵HCO3-分泌モデルである。様々なイオンチャネル/トランスポータが基底側膜(basolateral membrane)および管腔膜(apical membrane)に配置され、HCO3-のベクトル輸送が実現する。最も重要な役割を果たしているのが、apical membraneに局在するCFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)アニオンチャネルであり、嚢胞性線維症(cystic fibrosis)の原因分子である。

2.嚢胞性線維症及びその関連疾患に関する研究

嚢胞性線維症(cystic fibrosis)は、CFTRの遺伝子変異によって発症する常染色体劣性遺伝性疾患であり、気道、腸管、膵管、胆管、汗管、輸精管のイオン・水輸送が障害されるため、多臓器に病変が生じる(図3)。管腔内の粘液/分泌液が過度に粘稠となり、管腔が閉塞したり感染し易くなる。典型例では、新生児期に胎便性イレウスを起こし、膵臓が萎縮して膵外分泌機能不全による消化成長不良をきたし、その後、気道感染症を繰り返して徐々に呼吸不全に移行する。嚢胞性線維症は、ヨーロッパ人種の最も頻度の高い遺伝病であり、日本人を含むアジア人種では稀である。当研究室は、嚢胞性線維症の遺伝子診断、登録制度および全国疫学調査の事務局を担当している。当研究室と家族会の連携による地道な活動により、国内における嚢胞性線維症の認知度が高まり、小児慢性特定疾患に加え、2015年に指定難病となった。また、遺伝子変異/多型によるCFTR機能低下は、慢性膵炎、男性不妊症、びまん性汎細気管支炎、慢性副鼻腔炎の発症リスクになるとされており、当研究室では、慢性膵炎のリスクになるCFTR遺伝子多型を調べている。

3.小腸における脂肪酸受容体の研究

食物中の長鎖脂肪酸が十二指腸や上部小腸に入ると、腸管内分泌細胞(EEC)であるI細胞からコレシストキニン(CCK)が血液中に分泌される(図4)。CCKは、消化管ホルモンとしてあるいは迷走神経の求心路を介して作用し、効率的な脂質の消化吸収を担ったり、満腹中枢を刺激し食欲をコントロールしている。これら多様なCCKの生理作用の機序についてはかなり解明が進んでいるが、小腸管腔内の脂肪酸を、如何にしてI細胞が感知するのかという脂質消化の最初のプロセスについては、最近までほとんど研究が進んでいなかった。最近、オーファン受容体として報告されていたGPR40が脂肪酸と結合することが明らかになった。GPR40はC12からC 16の飽和脂肪酸とC18 からC22までの不飽和脂肪酸という広い範囲の脂肪酸に結合するとされ、生理的な脂肪酸受容体である可能性が高い。当研究室では、GPR40に着目し、I細胞の脂肪酸センシングメカニズムを明らかにすることを目的とし、研究を行っている。

教員

構成員名役職所属
石黒 洋 教授 健康栄養医学
山本 明子 准教授 健康栄養医学

研究実績

  • 2016年
    1. Mochimaru Y, Yamamoto A, Nakakuki M, Yamaguchi M, Taniguchi I, Ishiguro H, Caffeine inhibits fluid secretion by interlobular ducts from guinea-pig pancreas. Pancreas, 2016 (in press)
    2. Ito T, Ishiguro H, Ohara H, Kamisawa T, Sakagami J, Sata N, Takeyama Y, Hirota M, Miyakawa H, Igarashi H, Lee L, Fujiyama T, Hijioka M, Ueda K, Tachibana Y, Sogame Y, Yasuda H, Kato R, Kataoka K, Shiratori K, Sugiyama M, Okazaki K, Kawa S, Tando Y, Kinoshita Y, Watanabe M, Shimosegawa T. Evidence-based clinical practice guidelines for chronic pancreatitis 2015. J Gastroenterol, 2016; 51: 85-92.
  • 2015年
    1. Kondo S, Fujiki K, Ko SB, Yamamoto A, Nakakuki M, Ito Y, Shcheynikov N, Kitagawa M, Naruse S, Ishiguro H, Functional characteristics of L1156F-CFTR associated with alcoholic chronic pancreatitis in Japanese. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol, 2015; 309: G260-9.
  • 2014年
    1. Ishiguro H. HCO3- secretion by SLC26A3 and mucosal defence in the colon. Acta Physiol (Oxf), 2014; 211: 17-9.
  • 2013年
    1. Ko SB, Azuma S, Yokoyama Y, Yamamoto A, Kyokane K, Niida S, Ishiguro H, Ko MS. Inflammation increases cells expressing ZSCAN4 and progenitor-cell markers in the adult pancreas. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol, 2013; 304: G1103-16.
  • 2012年
    1. Nakakuki M, Fujiki K, Yamamoto A, Ko SB, Yi L, Ishiguro M, Yamaguchi M, Kondo S, Maruyama S, Yanagimoto K, Naruse S, Ishiguro H. Detection of a large heterozygous deletion and a splicing defect in the CFTR transcripts from nasal swab of a Japanese case of cystic fibrosis. J Hum Genet, 2012; 57: 427-33.
    2. Song Y, Yamamoto A, Steward MC, Ko SB, Stewart AK, Soleimani M, Liu BC, Kondo T, Jin CX, Ishiguro H. Deletion of Slc26a6 alters the stoichiometry of apical Cl-/HCO3- exchange in mouse pancreatic duct. Am J Physiol Cell Physiol, 2012; 303: C815-24.
    3. Ishiguro H, Yamamoto A, Nakakuki M, Yi L, Ishiguro M, Yamaguchi M, Kondo S, Mochimaru Y. Physiology and pathophysiology of bicarbonate secretion by pancreatic duct epithelium. Nagoya J Med Sci, 2012; 74: 1-18.
  • 2011年
    1. Ishiguro H, Steward MC, Yamamoto A. Microperfusion and micropuncture analysis of ductal secretion. In: The Pancreapedia Exocrine Pancreas Knowledge Base 2011. University of Michigan Library. (DOI: 10.3998/panc.2011.16)
  • 2010年
    1. Ko SB, Mizuno N, Yatabe Y, Yoshikawa T, Ishiguro H, Yamamoto A, Azuma S, Naruse S, Yamao K, Muallem S, Goto H. Corticosteroids correct aberrant CFTR localization in the duct and regenerate acinar cells in autoimmune pancreatitis. Gastroenterology, 2010; 138: 1988-96.
  • 2009年
    1. Ishiguro H, Steward MC, Naruse S, Ko SB, Goto H, Case RM, Kondo T, Yamamoto A. CFTR functions as a bicarbonate channel in pancreatic duct cells. J Gen Physiol, 2009; 133: 315-26.
    2. Steward MC, Ishiguro H. Molecular and cellular regulation of pancreatic duct cell function. Curr Opin Gastroenterol, 2009; 25: 447-53.

研究キーワード

上皮膜の重炭酸イオン輸送、嚢胞性線維症とその関連疾患、小腸における脂肪酸受容体

大学院生募集

健康栄養医学研究室は、健康増進医学講座の1分野であり、総合保健体育科学センター(東山キャンパス)の保健科学部の教員(石黒洋教授、山本明子准教授)が担当しています。研究室は、鶴舞キャンパスの基礎研究棟2階にあります。医学部以外の卒業生も歓迎します。研究テーマは各人の希望にできるかぎり沿うようにしています。また、特にobligationとなる事項はないので、研究時間は十分にあります。