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交換留学経験者からのメッセージ 2011年

Johns Hopkins 大学留学報告

奥野 泰史(Johns Hopkins大学)

私は2011年3月から約3ヶ月間、Johns Hopkins Hospitalにて実習をさせて頂きました。今、帰国の飛行機の中でこうやって体験記を書き始めると、ようやくこの長くて、思い出深い経験が終わろうとしているのだなあと、しみじみ感じます。この留学のために努力してきた日々を思い出し、少し寂しいような気分にもなります。この飛行機を降りた時には、しっかり心を切り替え、次の目標に向かえるよう、ここでこの報告書を書き終えようと思います。

振り返れば、出発までの英語や医学との戦い、実習中の様々な困難や壁、それを乗り越える中で味わった達成感、留学のおかげで出会えた多くの人たち、仲間との楽しい思い出、挙げればキリがないほどに色んなことが頭をよぎります。まさに自分の大学生活の集大成とも言えるような、素晴らしい時間を過ごせたことに、今とても大きな達成感と感謝の気持ちを感じています。

1ヶ月目の実習は麻酔科で実習を行いました。麻酔科では、1人のResidentの下について、そのResidentの仕事を手伝いながら、学んでいきます。基本的には見学がメインで、あとは雑用といった感じでしたが、オペでは、日本のポリクリ同様、IV、A-line、気管挿管から、Ventilationの管理や血圧管理まで、様々な手技を実際にやらせてもらえました。初めは、指示がうまく聞き取れず、薬剤や機材の調達でさえ手間取ってしまったりしていましたが、次第に仕事の流れを覚えていき、徐々にスタッフとして機能できるようになってきている気がして、とても楽しかったです。そのほかに、当直を2度経験させて頂いたり、オペで一緒になった教授のラボを2日にわたって見学させて頂いたりと本当に充実した実習を行うことが出来ました。また、毎日様々な分野の最先端の手術を見学することができ、そういった面でもとても良かったと思います。

2ヶ月目は血液内科で実習を行いました。血液内科では毎朝の病棟回診に始まり、昼はカンファレンスとコンサルト、夕方はコンサルトの回診とAttendingによるショートレクチャーというスケジュールでした。血液内科の実習では、言語面でも知識面でもかなり苦労しました。最初は中々仕事も与えられず、見学ばかりになっていましたが、一緒に実習を始めた現地学生の協力もあって、徐々にコンサルトや病棟患者さんを割り当ててもらえるようになりました。カンファやレクチャーを通して多くの知識を培い、また実践的な経験も積むことが出来た実習でしたが、なによりも、この学生と1ヶ月間共に実習できたことは、自分にとって非常に大きな刺激となりました。

3ヶ月目の最後の実習は救命救急で行いました。 日々のシフトでは、平均して2,3人の患者さんを任せて頂き、問診と診察をして、アセスメントプランを考え、担当のResidentにプレゼンし、フィードバックを受け、再びResidentと一緒に患者さんの診察に向かいました。知識も用いる英語も、経験がそのまま実力に繋がっていくため、毎日成長を感じながら実習を行うことが出来ました。それ以外にも現地学生と共に講義や実習を受けたり、救急車に乗ったりしました。実習の最後には、パワーポイントを使って症例発表も行わせて頂きました。また、数自体は多くないものの、IVや血ガス、縫合などの手技も経験させて頂き、本当に多くのことを学べた一ヶ月間でした。

実習以外の時間には、アメリカでご活躍されている先生方のもとを訪れ、色んなお話を聞かせて頂いたり、留学の仲間とアメリカ中を旅行したり、仲間の留学先を訪問したり、他の留学生と遊んだりと、充実していない日がありませんでした。

3ヶ月間という短い期間ではありましたが、本当に濃密で、Challengingで、充実した経験になりました。共に留学した仲間をはじめ、留学先や日本で出会った多くの友人達、先生方、そして国際交流室の先生方やスタッフの皆さん、私のこの留学を支えてくれた全ての人に、心からお礼を言いたいです。そして、今後多くの後輩が、この素晴らしい経験にチャレンジしてくれることを祈りながら、この報告書を締めさせて頂きたいと思います。

Pennsylvania大学留学報告

金井 美緒(Pennsylvania大学)

私は2011年の3月より2ヶ月間アメリカのPhiladelphiaにあるPennsylvania大学のChildren's Hospital of Philadelphia (CHOP)で実習をさせて頂きました。

CHOPは全米No.1の小児病院で、小児神経、血液、感染、循環器、CICU、NICU、PICUなどと細分化されており、小児科の施設が整っている病院でした。また、Pennsylvania大学は教育大学としての誇りを持っている大学で非常に教育熱心な先生ばかりでした。

実習は1ヶ月目に小児血液、2ヶ月目に小児循環器を回らせて頂きました。最初の小児血液では、学生は基本的にコンサルトチームに所属し自分の担当患者さんの身体診察や問診を行いカルテの情報をもとに、プレゼンをしました。

プレゼンはAssesment/Planまでまずはfellowにし、午後にはattendingにするということを行っていました。Fellowの先生方は忙しいはずなのですが、丁寧に私のプレゼンをチェックして下さいました。また同じ時期にペンシルバニア大学の女学生が一緒に実習をしていたのですが、非常に優秀でモチベーションも高かったので刺激的でした。実習の終わりには症例発表を30人程の先生の前で行いました。非常に興味深い症例でしたので、PubMedなどで論文を検索していくつか読みまとめました。緊張はしましたが、非常に勉強になりました。

二つ目の実習は小児循環器で、一週目は外来、二週目はコンサルト、三週目四週目は病棟というカリキュラムでした。外来では心雑音、小児の心電図、チアノーゼなどの講義をして頂きながら身体診察を先生と一緒に行いました。非常に教育熱心な先生が多く、私がすべてを理解するまで徹底的に教え込むという先生もいらっしゃいました。熱心に教えて下さる先生の期待に答えたいと思う反面、自分の知識の無さ、理解力の無さに悔しい思いをする毎日でした。コンサルトでは小児血液の時と同じように患者さんを診てプレゼンをattendingの先生にするということを繰り返しました。三、四週目の病棟では自分の担当患者さんの所へ朝の回診の前に行き、毎朝回診でプレゼンしました。朝の回診には病棟担当の医師5、6人に加え看護士が2、3人、患者さんの親も参加していましたので、間違ったことは絶対に言えないですし堂々とプレゼンしないといけないと思ったので非常に緊張しました。プレゼンの際attendingに課題を与えられ、明日までに調べてきてという言われることもしばしばありました。またこれらとは別に、心疾患をひとつ選び、発生学から治療法までと現在論文などで議論されている内容について調べ45分のプレゼンをせよという課題を与えられていたので、最後の2週間半はその準備に追われて必死でした。このプレゼンは黒板に書きながら先生や学生に講義をするという形式でしたので話すことを丸暗記せねばならず、45分の長さということもあり、とても不安で準備期間中は常に緊張していました。なんとか無事発表し終わり、先生にexcellentと言われた時は、飛び上がるほど嬉しかったのを覚えています。

実習以外ではペンシルバニア大学の学生達や寮の友達と飲んだり踊ったり食べに行き、非常に楽しかったです。寮に帰ると一階で皆が踊っていた時は驚きましたが、アメリカらしいなと感じながら私も参加しました。またCHOPで働いてらっしゃる西崎先生やNYで働いてらっしゃる兼井先生のホームパーティにも参加させて頂きました。アメリカで働かれている日本人の先生のお話が直接聞けて大変貴重な体験となりました。

このような貴重な経験を医学生としてさせて頂いたことに大変感謝しています。この経験で感じたこと、学んだことはすべて私の人生の宝となると思います。この場をお借りして、国際交流室の皆様、名古屋大学の先生方、Pennsylvania大学の先生方、様々な情報を教えて下さった先輩方、そして精神面で支えてくれた共に留学した同級生、両親に心から感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

Tulane / Vienna留学体験記

森 健太郎(Tulane大学)

日本へ帰国し数日を経た今でも、まだ異国の地で3カ月感じ続けた興奮状態から冷めきっていないような気がします。私は四、五月の二カ月間アメリカのチュレーン大学、六月の一カ月間オーストリアのウィーン医科大学へ留学させて頂く機会を得ました。この留学を志したのは、アメリカの質の高い医療を見たいという漠然とした思いと、ヨーロッパの総合診療への興味があったからです。

チュレーン大学での一ヶ月目は内分泌内科。具体的にはfellowの外来見学、入院している担当患者さんのフォローアップでした。また週に2回クリニックへ行き外来患者さんに対し問診、身体診察から、鑑別診断まで含めたattendingへのプレゼンまで行いました。また担当患者さんの病室へ行くと多くの場合に他の科の先生がおられ、一人の患者さんが多くの専門医からフォローされていることに驚きました。

二か月にローテートした神経内科。ここではstroke teamに配属され、担当した脳卒中後の患者さん数人を毎日フォローアップしていく、というものでした。ここでは全身管理が求められるため神経診察だけでなくバイタル、ラボデータから全身の身体診察、場合によっては薬物血中濃度まで把握しなければならず、慣れるのに必死でした。また筆記体で読みにくい紙カルテから情報を拾わねばならず、時間を要するため朝5時に病棟へ行きresidentとのpre-roundまでにプレゼンの準備をしていました。その後attendingとのroundを行い新患が出ればその場でERへ行く、という時間に追われた実習でした。しかし医学生としてチームに加わり、時間のあるときにresidentから症例についてあれこれ教育を受けることは非常に充実感を感じるものでした。

この2カ月の実習に医学生として参加したことで学んだ事が二つあります。一つ目はアメリカの医療です。一人の患者さんに対し分化した多くの専門医が各々の専門領域を同時にフォローしていく医療は、その点のみ見れば確かに質の高い医療を提供しているのかもしれません。しかし現状では分化が進むことで医師の人件費、検査費などがかさみ医療費増大につながり、無保険者の医療へのアクセスはさらに遠のいています。比較的裕福な集団に高度な高価な医療を提供する一方で保険に入れない貧しい集団に十分な医療を提供できないアメリカの現状に驚きました。二つ目はアメリカの医学教育についてです。医学生をresidentが教育し、residentをattendingが教育するという徹底された教育システムが確立されていることには一目置く価値があると思います。また教育の中でも医学生やresidentがプレゼンした症例に対しattendingがフィードバックする際論文に言及しEBMを大切にしながら周囲を説得していく点も印象的でした。

三ヶ月目はウィーン医科大学での総合診療科。ここでは病棟ではなくオーストリア郊外の開業医の先生方の所でホームステイしながら24時間開業医生活に浸るというものでした。先生は一日50~80人ほど患者さんを診察し、さらに身体上の問題でクリニックへ来ることが難しい患者さんに対しては機敏に往診されていました。驚いたことに先生は村の人すべての既往歴や家族背景を把握しており、私は正直な所、住民の健康に対し強い責任感を感じていくその姿に圧倒されました。この経験から様々な患者さんの様々な訴えや問題に対し素早く対応する力は、責任感から生まれるのではないかとさえ考えるようになりました。

この3カ月通して最も学ぶ意義が大きかったこと、それは医療のシステムは各々の国で違いはあれど良い医師を図る尺度は別に存在するということです。僕はこの留学で本当に数多くの医師と出会う事が出来ました。その中にはチュレーン大学の先生方、オーストリアの開業医の先生方だけでなく海外で臨床医として働く日本人の先生方、国連や研究を通し医療に貢献していく医師もいます。そのような方々との出会いを経て、良い医師とは人々の健康に対する強い責任感を持つ者ではないか、という考えに至りました。海外で働く医師と出会いそのような結論を出せた事は本当に貴重な経験だと思います。

最後に、この交換留学プログラムを通して私を支えて下さった皆様、特にお忙しい中にも関わらず何度も相談に乗って下さった粕谷先生、山崎さんをはじめ国際交流室の皆様、講義をして下さった先生方、そして留学中共に励まし合った友人達に心から感謝の意を述べたいと思います。ありがとうございました。

Warwick大学臨床留学報告

黒澤舞子(Warwick大学)

癌で亡くなる方が3分の1を占める日本において腫瘍内科を目指している私は、癌患者さんにどのような医療を提供して最期の時までサポートするか、にとても興味を持っている。英国はホスピス発祥の地で、腫瘍内科の歴史も半世紀以上と長い。またNHSという統一システムの中、誰でも無料で医療が受けられるという。今年の春、英国Warwick 大学病院にて7週間の臨床実習を行う機会を得た私は、"無料で医療を提供しているNHSの仕組みを理解すること。"と、"癌患者さんの診断から治療、最期の緩和ケアまでどのような医療が提供されているか理解すること。"の2点を目標に英国に向かった。

実習は5週間を腫瘍内科と緩和ケアで行い、2週間を血液内科で行った。英国では癌治療における化学療法と放射線治療は腫瘍内科医が担当する。その為癌患者さんの治療にあたるときも常に外科医、内科医、腫瘍内科医が協力して治療にあたることになり、治療方針等は更に放射線科医や病理医、専門看護師等を加えた多職種会議によって決められる。会議で、各患者さんに合わせた最適な医療について各専門家の立場から活発に意見が交わされていたのが印象的であった。

最初の5週間でお世話になったフランクス先生は緩和ケアの資格も持つ腫瘍内科医という少し特別な医師であった。根治不可能な患者さんに日々接している先生の医療面接では、厳しい現実の中にも常に希望を見出すことのできる言葉が織り交ぜられ、深い悲しみを包み込むような優しさがあった。毎回鳥肌が立つほどの感動を覚えていたが、一方で先生が各患者さんとの面談に長い時間(時に1時間くらいかかることも)をかけられるほど、医師もスタッフの数も充実していることに医療環境の違いを感じた。

また最初に癌患者さんの治療から終末期医療にまで興味があることを伝えた私に、フランクス先生は5週間を通して様々な職種の人に会い、その仕事を見る機会を与えてくれた。具体的には、成人用や子供用ホスピスで働く医師、呼吸器内科の医師、医療現場で働く牧師、癌病棟で働くcomplementary therapist、癌患者さんのサポート専門のmacmillan nurse、肺癌専門看護師、終末期医療専門看護師、dressing専門看護師、放射線技師、緩和ケアを専門薬剤師、胸部外科の外科医等である。専門性に富んだコメディカルの多さや医師の横断的な繋がりの密さに驚くと同時に、役割がきちんと分担され癌患者さんの精神面を含めて最後までサポートする体制が整い、それらが無料で提供されていることに改めて感銘を受けた。また地域医療との連携も密で、末期の患者さんを自宅に帰す際には、終末期医療専門看護師と家族、患者さんで話し合い、ニーズに合わせて地域の医者、看護師などが手配される。更に医療機器、介護用ベット、ヘルパー等や、急変に備えて24時間付き添いを置くサービスまで無料で提供され、自宅療養がサポートされていた。

血液内科では外来や病棟での一連の流れを医師に同行して学び、その中で身体所見を取ったり問診したりする機会が与えられ、それを担当医師にプレゼンして質疑応答を行った。また研修医向けの勉強会に参加して血液像から病気の診断を行なったり、こちらの学生向けの授業に参加したりした。郊外で行われたセミナーに同行した際には日頃ゆっくりと話せない先生方と、日本と英国医療の相違点から文化・宗教などの相違点についてまで様々なことを車中で話すことが出来た。また一番お世話になったジャクソン先生に、最後の週末ホームパーティーに誘って頂き、その後先生が日頃通われている教会にてヘンデルのメシアを通しで聴いたことはとても良い思い出となっている。

刺激的で充実した7週間はあっという間だったが、これからの日本の医療、特に癌治療や終末期治療を考えていく上で本当に沢山のヒントを学んだ。最後にこのような素晴らしい機会を与え、常に支えてくれた国際交流室の先生方や留学係の皆様を初めとする関係各位に感謝の意を表したい。ありがとうございました。