名大病院の活動について

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名大病院・血管外科、弓部大動脈疾患に対する「分枝付き胸部大動脈ステントグラフト(TBE)」の保険診療を開始~ 2025年10月2日に第1例目の手術を実施し、成功 ~

 名古屋大学医学部附属病院 血管外科は、分枝付き胸部大動脈ステントグラフト(以下、TBE)が20259月より保険適用となったことを受け、同月より臨床での提供を開始いたしました。 また、本保険適用下の第1例目となる手術を102日(木)に実施し、合併症なく無事に終了したことをご報告いたします。

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背景と意義
 心臓から出てすぐのカーブした部分に生じる「弓部大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離など)」の治療は、従来、人工心肺を用いた開胸手術(弓部全置換術)や、頸部の切開を伴うバイパス術を併施するステントグラフト内挿術が主流でした。しかし、これらの手術は身体への負担(侵襲)が極めて大きく、ご高齢の患者さんや重篤な併存疾患を持つ患者さんにとっては、手術そのものが困難なケースが少なくありませんでした。 今回導入した「TBEThoracic Branch Endoprosthesis)」は、こうした課題を解決するために開発された最新のデバイスであり、弓部大動脈疾患に対して「胸を切らず」「首も切らない」完全な血管内治療を可能にします。

新規治療「TBE」の特徴
1.低侵襲な血管内治療:脚の付け根などの小さな傷からカテーテルを用いて治療を行うため、従来の開胸手術や頸部バイパス術に比べて出血量や術後の痛みが大幅に少なく、早期の社会復帰が期待されます。
2.分枝(ブランチ)を持つ特殊構造:脳や腕へ血液を送る重要な動脈(左鎖骨下動脈等)を確保するための「枝(ブランチ)」があらかじめ備わっています。これにより、弓部という複雑な解剖学的条件を持つ患者さんに対しても、血流を維持しながら動脈瘤を治療することが可能となりました。
3.保険適用による負担軽減20259月の保険収載により、これまで特注品(カスタムメイド)等でしか対応できなかった症例に対し、既製品として迅速かつ標準的な治療として提供できる環境が整いました。

今後の展望と体制
 当院血管外科では、本治療の実施にあたり、専門医を含む多職種による厳重な安全管理体制を構築しています 。患者さんおよびご家族に対して十分な説明を行い、同意をいただいた上で、個々の病状に合わせた最適な治療方針を決定してまいります。
 今回の第1例目の成功を皮切りに、これまで侵襲度の高さから治療を諦めざるを得なかった患者さんへも、安全かつ有効な治療の選択肢を提供し、地域医療への貢献に努めてまいります