名大病院の活動について

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名古屋大学医学部附属病院が肺移植実施施設(国内11施設目)に認定されました ~8月初旬より名大病院で適応評価、待機登録、肺移植手術が可能になります~

 名古屋大学医学部附属病院は、2023320日に肺移植実施施設に認定されました。このたび、待機登録に係る日本臓器移植ネットワークへの諸手続きが完了し、 8月より肺移植認定施設として肺移植適応評価と日本臓器移植ネットワークへの待機登録および肺移植手術を実施することが可能になります。それにあわせて、毎週月曜日の午後2時から、肺移植外来を設置します。

 肺移植施設としての認定は、国内で11施設目となります(心肺同時移植のみの国立循環器病研究センターを除く)。中部地方では、202012月に藤田医科大学病院が認定されましたが、それに続き、中部地方では2施設目の認定となります。これまでに、当院では、10名を越える肺移植患者さんの術前や術後管理を、他の肺移植実施施設と連携して行ってきました。これからは、これまでの術前や術後の管理に加え、肺移植適応評価から適応検討申請、脳死肺移植登録、さらに実際の肺移植手術までを、一貫して当院で行うことができるようになります。

 肺移植手術は、1998年の国内での第1例目からこれまでに、国内で約1000例が行われてきました。手術数は年々増加し、年間の手術数も2022年には100件を越えましたが、まだまだ欧米と比べるとかなり少ない数です。当院では、カナダトロント大学と京都大学で、200例以上の脳死肺移植と100例以上の生体肺移植に携わってきた呼吸器外科の芳川豊史教授を中心に、国内外で肺移植を経験した医師が複数人在籍しております。また、現在も複数の医師が、国内外で肺移植の研修を行っており、看護師やメディカルスタッフにおいても、継続して肺移植のトレーニングを行っております。

 今回の肺移植実施施設認定により、名古屋大学医学部附属病院において、肺移植医療の全てを継ぎ目なく行えるようになりました。名古屋大学肺移植チームとして、より良い肺移植医療が安全に行えるように継続的に取り組んでまいりたいと存じます。なお、まずは、脳死肺移植を行う予定ですが、生体肺移植の準備も並行して進めております。

【ポイント】

○ 名古屋大学医学部附属病院が、中部地方の2施設目の肺移植実施施設として認定されました。

○ これまでに、10名を越える肺移植の術前および術後患者さんの地元のかかりつけ医として診療してきましたが、これからは、肺移植の実施施設として、さらに、肺移植適応評価から適応検討申請、脳死肺移植登録、そして実際の肺移植手術を行います。

○ 中部地方の患者さんが、地元で、継ぎ目なく、肺移植医療を完結できることを目指します。

背景

 2019年に芳川豊史教授が呼吸器外科学教授に着任後、肺癌を含めた呼吸器外科手術数の大幅な増加など、呼吸器外科の臨床医療が充実しました。同時に、肺移植実施施設でないにもかかわらず、肺移植適応患者の評価のための診察や肺移植患者の術後管理の紹介も増加しました。現在、常に10名以上の肺移植患者さんを診療することになり、名古屋大学医学部附属病院として、中部地方における肺移植医療の充実の必要性を感じるようになりました。

 そこで、2021年より、当院内で、肺移植実施のためのワーキンググループを設置し、国内最大の肺移植実施施設である京都大学医学部附属病院との連携のもと、医師だけでなく看護師などのメディカルスタッフの研修を継続的に行い、肺移植実施のための準備を進めてきました。この度、20233月に、晴れて肺移植実施施設として認定され、中部地方における2施設目の肺移植実施施設となりました。当院として、患者さんが、地元で肺移植を完結できることの意義を重視し、肺移植医療に取り組んでまいりたいと存じます。

成果

 名古屋大学医学部附属病院では、20233月に肺移植実施施設に認定され、その後日本臓器移植ネットワークへ待機登録のための諸手続きを進めてまいりました。このたび、この手続きが完了し、 8月より肺移植認定施設として、肺移植適応評価、日本臓器移植ネットワークへの待機登録および肺移植手術が可能になりました。

 まずは、当院における肺移植適応患者の評価入院などを始める予定です。なお、これまで通り、肺移植術前や術後の患者さんの定期フォローも続けていきます。

 また、名古屋大学医学部附属病院として、30を超える関係各科や各部署と大きな肺移植チームを形成し、肺移植医療にあたります。当院では、腎臓や肝臓移植だけでなく、既に、同じ胸部領域として、中部地方唯一の心臓移植チームも存在し、お互いに連携して肺移植を進めていきます。加えて、当院は、中部地方最多、全国でも有数の関連病院数を持つ大学病院であり、関連病院との連携を保ちながら肺移植医療を推進していきたいと思います。

 このたび、肺移植実施施設として認定されたことで、本院における肺移植医療が、術前から術後まで、継ぎ目なく医療を行うことができるようになったことで、より患者さんやご家族の方に寄り添ってサポートできるようになりました。今後も中部地方をはじめ皆様に貢献できるよう努めてまいります。

今後の展開

 2023年8月より、脳死肺移植適応評価のための患者さんの評価入院を開始します。毎週月曜日の午後に(14時から)、肺移植外来を設置しますので、初診の方は、そちらにご紹介いただければと思います。肺移植の適応と思われる慢性呼吸不全の患者さんがおられましたら、お気兼ねなくご紹介いただければ幸いです。

 外来では、診察以外に、肺移植について様々な話をさせていただきます。患者さんや家族の方の様々な疑問にもお答えいたします。診察の結果、肺移植の適応があると判断された場合には、当院に約2週間入院し、評価を行います。その後、中央肺移植検討委員会で審査を受け、適応があると判断された方は、脳死肺移植登録を行い、待機していただくことになります。待期期間は、現在約900日と長いですが、適合するドナー肺が現れた際には、当院で脳死肺移植を受けていただき、その後、名古屋大学肺移植チームで末永く管理させていただきます。

 なお、この度、名古屋大学医学部附属病院では、脳死肺移植を行う体制が整いましたので、まずは脳死肺移植から開始しますが、芳川豊史教授は生体肺移植の経験も豊富なため、今後、生体肺移植も行えるように準備を進めてまいります。