名大病院の活動について

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名大病院における11年間の温室効果ガス排出量の追跡と 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響 ―大規模病院における世界初の長期にわたる計測と分析-

 名古屋大学医学部附属病院(名大病院)山本尚範(やまもと たかのり)救急科長(講師)、諸岡光(もろおか ひかる)元医員(現ノルウェー科学技術大学 公衆衛生学博士課程)、同大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 丸山彰一(まるやま しょういち)教授らの研究グループは、世界で初めて大規模な医療機関(名大病院と同大学大学院医学系研究科)における2010年度から2020年度までの11年間にわたる温室効果ガスの排出量を、詳細なデータに基づいて報告しました。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが温室効果ガス排出量に与えた影響も分析しました。先行研究では主に手術室や透析室といった部署単位、かつ数ヶ月という短期間における温室効果ガスの排出量が推定されていましたが、本研究では大規模な医療機関における長期間にわたる同様の研究を行いました。
 本研究成果では、電力供給時の省エネ化や再生可能エネルギーの活用により、電気による温室効果ガスの排出量は減っていることが判明しました。一方、医薬品や医療材料の消費量増加により、全体としては温室効果ガスの排出量が2010年度から2020年度までの11年間で26%増加したことが分かりました。
 新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響は2020年4月から見られ、感染性廃棄物が大幅に増えただけでなく、医薬品や医療材料の消費量が増したことから、入院1回あたりの温室効果ガス排出量は増加しました。しかし、新型コロナウイルス感染症以外の患者の受診数が減ったため、全体としては温室効果ガスの排出量は減少しました。
 国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26) で採択されたパリ協定は、人類の生存圏を維持するため、温室効果ガスの排出量を削減し、産業革命以前と比較し、地球の平均気温が2.0℃以下、できる限り1.5℃以下の上昇に抑えることを求めています。それに伴い、日本政府は2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言しています。先行研究において、経済指標に基づいた医療業界の温室効果ガス排出量は社会全体の5〜10%を排出していると言われてきました。

 今回の研究に基づけば、世界で高齢化に伴う医療負担が増加すると、医療業界による温室効果ガス排出量は増える可能性があります。このような事態を防ぐために、公衆衛生的な観点から疾患の予防と早期発見を進めることの重要性がより明らかになりました。
 本研究成果は「Globalization and Health」(2022年11月7日電子版)に掲載されました。

◆詳細(プレスリリース本文)は下記URLよりご覧ください。
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/Glo_221124.pdf