名大病院では入院患者さんが口から安全に食事がとれるように、スペシャリストからなる嚥下チームが活動しています。
その活動内容や展望について、チームの皆さんにお聞きしました。
高度急性期病院である当院には、難病や複雑な症状を抱えた多くの患者さんが入院しています。手術や治療のために入院生活を送る中で問題の一つとなるのが、食べ物を飲み込む嚥下機能の低下です。嚥下機能が衰えると食事そのものが困難になり、体力の低下や基本的な治療に影響を与えます。しかも、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあります。
こうした事態を防ぐために活動しているのが、リハビリテーション科の医師、摂食嚥下障害看護認定看護師、言語聴覚士からなる嚥下チームです。15年程前に発足し、現在は栄養管理を行う栄養サポートチーム(NST)の一員として、全病棟の入院患者さんを対象に活動を展開しています。
嚥下チームは飲み込みに問題がある患者さんに対応するため、定期的に各病棟を回診しています。口腔内の状態の評価、内視鏡・造影剤による嚥下機能検査の結果をもとに、誤嚥のリスクやとろみ食など適切な食事の形態を判断します。こうした情報は病棟看護師や病棟担当・NSTの管理栄養士とも共有され、入院中の給食に反映。管理栄養士は栄養面から必要であれば補助食品を追加するなど、できる限りその方が好んで食べやすい献立にしています。
一方で、必要な患者さんには言語聴覚士が飲み込みのための筋力トレーニングを実施、食事の時の適切な姿勢や飲み込むタイミングなどをご本人と一緒に練習し、口から安全に食べられるようサポートしています。その後も都度、患者さんの状態に合わせてどの形態であれば食べられるのかを試し、とろみの濃度の調整やゼリー食への変更などのフォローもしています。
入院中の嚥下の問題に関して、病棟看護師が嚥下チームとすぐに連携できる体制が整っているのが当院の強みです。近年高齢社会となり、主たる疾患の治療を終えても嚥下機能の低下により誤嚥性肺炎を起こして亡くなる方が増えています。そのため患者さんの退院時には、ご自宅や施設でも安全に食事がとれるよう食事の形態や調理の工夫について情報を提供し、ご家族にはご自宅でのケア方法などもお伝えしています。
今後、嚥下チームではリスクの高い患者さんを中心にチームでの回診を増やすなど、活動の充実を検討しています。また、当院には希少な症例のデータが蓄積しており、全国で活用いただけるように情報を発信したいとも考えています。あらゆる患者さんの誤嚥を少しでも減らすことが目標です。
よくむせるなど嚥下の状態が気になる場合は、入院患者さんは病棟の看護師へ、外来患者さんは耳鼻いんこう科の嚥下外来へご相談ください。
▲嚥下チームの皆さんとNSTの管理栄養士 ▲嚥下チームによる回診の様子。内視鏡を使って液体の嚥下状態を
数㏄の単位で丁寧に評価していく。
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「名大病院かわらばん」134号 PDFファイル・目次
<目次>
・安全に食べて飲み込める毎日を 専門の嚥下チームがサポートします。
・医師の働き方改革へのご理解とご協力のお願い
・新任のご挨拶
・名大病院臨床研修医のご紹介
・診療科レポート「呼吸器内科」
・鶴舞公開講座
・ナディック通信
・特定基金 医学部附属病院支援事業へのご協力のお願い
・かわらばんHP のご案内
「名大病院かわらばん」について
当院では、病院の活動を広く院内外にお知らせするために『名大病院かわらばん』を発行しており、以下のURLからご覧いただけます。
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/hospital/outline/publish/
※『名大病院かわらばん』は、当院における積極的な取組事項等を中心に掲載した季刊誌です。
※上記ホームページには、第58号(2006年1月発行)分から掲載しております。