▽研究テーマ

I) ヒト肺癌の分子病態の解明を目指して:

iv) ゲノム不安定性の獲得

癌は、多くの遺伝子に異常が蓄積して発生します。これは、DNA複製から細胞分裂に至る複数の過程においてゲノムの安定性を維持するための機能に、癌細胞では異常が生じているためであり、その結果徐々にゲノムに突然変異が蓄積した結果であると考えられています。癌細胞の持つこの特性は、正常細胞が発癌に至る原因となります。また、癌が転移先の微小環境への適応力を獲得する原動力にもなります。
 私たちは癌細胞の持つこの特性を明らかにし、最終的に治療に結びつける段階まで発展させることを目指して、ゲノム安定性の維持機構異常の観点からも癌研究を進めています。その結果、この10年ほどの間にヒト肺癌における複数の細胞周期チェックポイント異常の存在を明らかにしてきています。最近では、DNAの複製と修復を担いゲノム安定性の維持に密接に関わるDNAポリメラーゼデルタの構成分子のPOLD4が、ヒト肺小細胞癌において異常な発現低下を示すことを発見しました。今後も、様々な観点から肺癌の発生・進展におけるゲノム維持機構の役割解明を進めていこうと考えています。