臓器移植とは

腎臓移植ドナーについて

腎臓の機能が低下し、体内に老廃物や水の蓄積が起こってきた状態が末期腎不全です。この末期腎不全の治療方法として腎移植があります。腎移植は他人(ドナー)の腎臓を手術により自分の体内へ移植するために、本来の腎臓の機能がほぼ回復し、透析療法に比べ患者さんの生活の質を向上させると考えられています。

腎移植の種類として、ご家族から提供していただく生体腎移植と亡くなられた方から頂く献腎移植があります。

日本においては約8割が生体腎移植です。生体腎移植において、以前は親、兄弟の肉親が提供者となることが多かったのですが近年は血液型の異なる腎移植、特に夫婦の間の腎移植が増加しています。現在では腎提供者(ドナー)と移植を受ける人(レシピエント)が違う血液型であっても特別な処置を行えば安全に移植を行うことが可能です。

名古屋大学泌尿器科グループでは1973年に腎臓移植を開始して以来、2013年末まで約1000例の腎臓移植を行ってきました。

名古屋大学泌尿器科グループにおける生体腎移植生着率

  •   5年 10年 20年
    2003-2012 95% 88%  
    1993-2002 90% 71% 53%
    1983-1992 75% 52% 32%
    1978-1982 53% 44% 25%

    ◯日本全体での生体腎移植成績(移植学会HPより)

      5年 10年
    2000年以降(2588) 91%  
    1990-1999(4045) 82% 68%
    1983-1989(2561) 79% 60%
    1982以前(961) 69% 58%
連絡先:
名古屋大学医学部付属病院:052-741-2111(代表)→移植連携室
社会保険中京病院:052-691-7151(代表)→泌尿器科
小牧市民病院:0568-76-4131(代表)→泌尿器科
岡崎市民病院:0564-21-8111(代表)→泌尿器科

生体腎移植

生体腎移植の腎提供者は両親や兄弟など血縁からの腎提供が以前は多かった時期もありますが、最近では夫婦間での腎移植が増えてきています。また、提供者と移植を受ける人が違う血液型であっても特別な処置を行えば安全に移植を行うことが可能となっています。名古屋大学泌尿器科グループでは2012年度行われた生体腎移植のうち約6割が血液型の異なる組み合わせで行われています。

日本移植学会では、その倫理指針の中で生体腎移植のドナーとなりうる方は配偶者と親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)に限定しています。配偶者や親族に該当しない場合は移植施設の倫理委員会、日本移植学会の審議を経て始めてドナーとなることができます。

血液型適合および不適合腎移植

腎臓提供に際しては、原則個人の自発的かつ自由で強い意思の下に行われることが保障されなければなりません。よってドナーは適切な自己判断能力を持つ者であることが必要になります。

●血液型適合の場合

近年でも約半分が血液型適合の組み合わせです。名古屋大学附属病院では通常金曜日に手術が行われているのでその週の月曜日に入院して準備を始めます。血液型不一致の場合も同様です。

血液型不一致の組み合わせ
ドナー(腎提供者)→レシピエント(移植を受ける人)
O型からA型または B 型またはAB型
A型からAB型
B型からAB型
●血液型不適合の場合

以前は移植できないとされていましたが、移植技術の進歩と薬剤の開発により近年では血液型一致の場合と同等の結果が得られるとされています。通常移植前2週間の間に特別な処置を行ってから移植に望んでいます。当グループでも1999年から開始され、最初に移植された患者さんは現在でも移植腎生着中です。

血液型不適合の組み合わせ
ドナー(腎提供者)→レシピエント(移植を受ける人)
A型からB型またはO型
B型からA型またはO型
AB型からA型または B 型またはO型
名古屋大学泌尿器科グループにおける血液型不適合生体腎移植の割合

夫婦間での腎臓移植

先に述べたように近年は夫婦の間での生体腎移植が増加しています。この一因として血液型の異なる組み合わせでの生体腎移植が普及してきたことが大きく影響していると思われます。現状ではお元気な方であれば特に年齢制限をつけていません。

先行的腎移植(PEKT)

透析導入前でも腎移植は可能であり、これを先行的腎移植(preemptive kidney transplantation)と呼びます。先行的腎移植は透析後の移植と比較して生着率や生存率において優れているとされています。その理由としては,末期腎不全期における免疫の低下により拒絶反応が少ない可能性やCKD患者さんに必発である動脈硬化の進展が少ないことなどがあげられています.名古屋大学泌尿器科グループでも2012年度に生体腎移植を受けられた方の約3割の方が先行的腎移植でした。

献腎移植

献腎移植のドナーは現在では大きく分けて、心臓死でなくなられた方と脳死になられた方の2つに分けられます。脳死ドナーは脳死と判定されてから、心臓死ドナーは心臓が停止し死亡されてから腎臓の摘出が行われます。特別な理由のない限り、どちらの場合でも一人のドナーから2個の腎臓が提供され、2人のレシピエントに腎臓移植がなされます。
これら献腎移植は臓器移植法のもと、日本臓器移植ネットワークにより厳格に管理されており、レシピエントを希望する人は各県などで献腎移植登録が必要となり(登録場所などは各県などにより異なります)、一般には登録された施設で移植手術が行われます。まずは日本臓器移植ネットワークでの登録が必要となります

愛知腎臓財団HPより

  • ◯名古屋大学泌尿器科グループにおける
    献腎腎移植生着率

(Death-censored 移植腎生着率)

インタビュー

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腎臓移植のメリット・デメリット

メリット

長生きできる:いろいろな報告がありますが、一般に腎移植を受けたほうが透析を受けるよりも長生きできるといわれています。また腎移植では旅行や出張の制限もなく、生活の質がよいとされています。

医療に拘束される時間が短い: 透析では週に3日毎回約4時間を透析病院で過ごさなければならないのに対し、腎移植後安定期に入れば1か月から2か月に一回の通院が必要となるだけです。

合併症の回避:透析で出現しやすいアミロイドの沈着や骨代謝異常、皮膚の色素沈着、血圧低下、全身のかゆみなどの合併症は腎移植ではほとんど見られなくなります。心筋梗塞や心不全・脳梗塞の合併も透析に比べ少なくなります。

飲水・食事制限:透析では飲水量が制限され、食事内容もカリウムやリンなどの摂取が厳しく制限されますが、腎移植では飲水制限はなく、食事の制限も比較的軽くすみます。

妊娠・出産:閉経前女性では腎移植後月経が回復するだけでなく、移植腎機能がよければ妊娠・出産が可能となります。

デメリット

ドナー 腎移植では腎臓を提供する人が必要です。
免疫抑制剤 生涯内服が必要な免疫抑制剤による副作用があります
移植腎機能 一回の腎移植のみで生涯腎機能が保たれる保障はありません。
感染 感染に対する抵抗力が弱くなりますが安定期に入ればほぼ以前と同じような生活が可能です
手術 腎移植を行うためには、手術を受けることが必要です。
発癌 移植後およそ10年を過ぎると通常の方より癌のriskが高くなることが報告されています。