シンポジウム / 体験記

名古屋からアデレードへ③

伊吉祥平(トヨタ記念病院 初期研修2年目)

滞在先 : アデレード大学 Experimental Haematology
期間 : 2016年10月10日〜10月22日






 

 トヨタ記念病院で研修をしている伊吉祥平と申します。2016年10月10日から10月22日まで、The University of Adelaideで開催された三大学国際共同学術シンポジウムに参加させていただきましたので、内容について報告させていただきます。

アデレード及びThe University of Adelaideについて
オーストラリアは6つの州と1つの準州、そして首都がある特別地域から成り立っていますが、アデレードはその中で最も乾燥した州といわれる南オーストラリア州の州都です。150万人の州人口のうち110万人が州都のアデレードに居住しているといわれ、人口としては名古屋の半分くらいですが、面積は名古屋の5−6倍あり、とてもゆったりとした、豊かな時間の流れる 街でした。名産であるワインもとてもおいしく、世界で最も住みやすい街ランキングの上位常連というのも納得でした。
The University of Adelaideは、オーストラリア版アイビーとも言われる「Group of Eight」の一角を占め、ピロリ菌でノーベル賞を受賞したロビン・ウォレンやX線結晶構造解析の祖・ブラック親子などが所属していた由緒ある大学です。
研究活動及びシンポジウムについて
癌の研究に興味があるとの希望を先方に伝え、受け入れていただいたのはFaculty of Health SciencesのAssociate Deanで骨髄腫の研究をしているProf. Andrew Zannettinoの研究室でした。 以前に名大に来たことのある博士課程の学生Kimが手とり足取り色々と教えてくれました。また、ちょうど同じ日から医学部の学生も一人research rotationとして実験を始めるところで、彼と共に研究室で用いられる研究手法のうち、基礎的な部分を教わりました。研究室があったのはSAHMRI(South Australian Health and Medical Research Institute) というチーズグレーターの様な形をした建物で、The University of AdelaideのみでなくFlinders UniversityやUniversity of South Australiaなどアデレードにある色々な大学や政府機関から研究者が集まっている研究機関でした。滞在日数が少なく、研究自体はほとんど何もできなかったに等しいですが、研究室の設計思想や研究への取り組み方の違いなどから学べることは多かったです。前者としては、共通機器として最新の研究設備を揃え、オープンラボ形式でコラボレーションを生む工夫が至る所になされていたのが印象的で、実際ラボミーティングにも別の研究室のメンバーが何人か参加し、活発にディスカッションしていました。Andrewも コラボレーションの重要性を繰り返し述べており、いかにそれを実現するかにとても注力しているとおっしゃっていました。研究への取り組みという面では、On-Offをはっきりわけ、メリハリのある働き方をしている人が多かったのが印象的でした。研究室には名大を訪れたことのあるメンバーが何人かおり、とてもフレンドリーに接してくれ、SAHMRIの近くにある美味しいお店に連れて行ってくれるなどとても大変良くしていただきました。医学生のBillも気さくな方で、オーストラリアの医学教育はアメリカともまた大きく違っており、 色々意見を交換できて良かったです。
シンポジウムでは、各大学の先生方から、密度の濃い話を聞くことが出来ました。Molecularな話から臨床医学、 衆衛生までとても幅広い内容で、ついていけない部分も多々ありましたが、エキサイティングな話が多く勉強になりました。個人的にはProf. Butlerが発表された、前立腺癌特異的な脂質プロファイルの変化を治療効果マーカーとして使うという話題などがとても興味深かったです。
シンポジウムの最終日には、Thesis competitionというイベントに参加させていただきました。これは、学生などが自分の研究分野を一般の聴衆にいかにわかりやすく説明できるかを競うcompetitionでオーストラリアの大学ではpopularなものとのことでした。実際、Youtubeなどで検索すると見ることができるのですが、全国大会などではまるでTEDかのような作り込まれたプレゼンテーションがなされており、とても刺激されました。現在基礎研究には従事していないため渡豪するまでは辞退しようと思っていたのですが、ぜひ挑戦してみたいと思い、医学生時代に行っていた研究についてスライドを準備し参加してみました。残念ながら景品のチョコレートはFreiburg Universityの方に持っていかれてしまいましたが、楽しんでプレゼンテーションをすることができました。
その他
レクレーションも色々と企画していただき、国立公園に行ってカンガルー・コアラと触れ合ったり、ワイナリーに行って美味しいワインを試飲したりと本当に楽しい時を過ごすことができました。色々とオーガナイズしてくれたThe University of AdelaideのEmma, Royはじめスタッフの方々、本当にありがとうございました。レクレーションを通してFreiburg Universityの方々とも仲良くなることが出来、最後はホテルのロビーで夜遅くまで語らいの時をもつこととなりました。アデレード最後の夜でしたが、とてもいい思い出です。
最後になりましたが、このような素晴らしい機会を与えていただいた、高橋雅英・医学系研究科長はじめ諸先生方、色々とサポートしていただいた粕谷先生、笠井さんはじめ国際連携室の皆様、およびお世話になったすべての方々にこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
 
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