4. 脂肪滴の各組織細胞での機能

哺乳動物細胞、酵母、植物に至るまで、細胞はエネルギーや膜構成因子として重要な脂質(脂肪酸、ステロールなど)を、分解されにくい中性脂質(トリグリセリド、ステロールエステル)の塊=脂肪滴の形で細胞質に保存しています。脂肪滴は肥満における脂肪細胞や脂肪肝などで顕著な構造ですが、神経細胞を含むほとんどの組織の細胞に存在し、脂質の貯蔵と必要に応じた分解によるエネルギー産生、脂質合成、熱産生、タンパク質分解系などに関与します。また、ヒトC型肝炎ウイルスなどの病原体増殖、脳・神経変性疾患(もやもや病、遺伝性痙性対麻痺)など、多くの疾患への関与も明らかになりつつあります (Ohsaki et al., 2013 ; Suzuki et al., 2012 ; Ohsaki et al., 2008 ; Ohsaki et al., 2006)。

さらに肝細胞などでは核の中にも脂肪滴が形成され、脂質合成の場として重要であることが分かり (Soltysik et al., 2019 ; Ohsaki et al., 2016)、新たな核内構造体として多様な機能を持つことが期待されます。

肝由来細胞や神経系細胞内でのストレス応答・細胞生存における脂肪滴の機能を、生化学的手法、電子顕微鏡、超解像光学顕微鏡などの形態学的手法により細胞レベル/組織レベルで解明しようとしております。