和氣 弘明

令和元年11月1日付で名古屋大学大学院医学研究科機能形態学講座 分子細胞学 教授を拝命いたしました和氣弘明でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

私は名古屋市立大学医学部を卒業し、神経内科(小鹿幸生教授)に入局し神経疾患に対する臨床を行った後、大学院時に特別共同利用研究員として生理学研究所(鍋倉淳一教授)にて、神経障害時における抑制性神経伝達の興奮性獲得メカニズムの研究を行いました。
その後、同研究室にて、2光子顕微鏡を用いた生体イメージングを立ち上げる機会を頂き、そのシステムを用いて中枢神経系免疫細胞であるミクログリアの新規生理機能を明らかにしました。

それまでミクログリアは病態時における形態変化に着目した重要な研究が行われてきましたが、技術的な要因からその生理機能は明らかではなく、in vivo2光子顕微鏡を用いてミクログリアを可視化することにより、この命題を解くことに成功しました。
さらにその後、米国国立衛生研究所(NIH)にVisiting fellowとして着任し、顕微鏡技術のさらなる技術を取得するとともに、in vitroの系を用いて神経活動依存性髄鞘化の分子メカニズムを明らかにしました。帰国後、さらなるグリアの新規生理機能を解明することに取り組んでおります。

また、このグリアの新規生理機能を阻害した動物の行動中の神経細胞活動を可視化することによって、グリアの生理機能がどのように神経回路活動に寄与するかを明らかにすることを試みております。
これらの知見から、グリアの生理機能が破綻することによって生じる精神・神経疾患群を考察し、それぞれの症状に対応する神経回路活動の異常を検索しております。
また個体の免疫機能がどのように神経回路活動に影響するかを免疫細胞のダイナミックな変化と神経回路活動を相関させることにより検証しております。
今後はこれらの研究をさらに発展させ、新たな視点から神経・精神疾患を考察していきたいと考えております。

また、これらの研究をより発展させるために、現在神戸大学大学院システム情報学研究科・理学研究科・工学研究科の先生方と共同でホログラフィック顕微鏡の構築、イメージング画像の解析技術の構築を行っております。

このような異分野連携・国際共同研究を強く推進し、若手研究者の育成に努めて参りたいと思います
教育面におきましては、学部学生には解剖学の講義・実習を行い、また基礎配属実習などでの交流を通して生理学の面白さ・奥深さを味わっていただきたいと思います。
今後、様々な分野における先生方との交流を通して研究を発展させていただきたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

教授 和氣 弘明