深津先生おめでとうございます!
https://doi.org/10.1016/j.crmeth.2026.101615
1.背景と概要
2光子カルシウムイメージングは、生きた動物の脳深部で多数の細胞活動を低侵襲に観察可能な技術であり、神経科学研究の中核として広く用いられています。神経活動に伴う細胞内カルシウム濃度の変化を、カルシウムインジケーター(注10)の蛍光シグナルとして捉えます。近年では、一度に数万個の細胞を撮影する大規模イメージングや数百Hz以上の超高速撮影が実現し、得られるデータ量は飛躍的に増大しています。 膨大なデータから個々の細胞の活動を取り出すため、Suite2pやCaImAn(注11)などの自動解析ツールが開発されてきました。このような解析ツールは画像から細胞と思われる部分(ROI)を自動検出できますが、ROIが真の細胞かノイズであるかを検証する作業や、撮影日が異なる画像間で同一の細胞を追跡する作業は、統合的なツールが十分整備されておらず、依然として多くを手作業に頼っているのが現状でした。既存の追跡ツールであるCellRegやTrackMateも、ROI形状の変動への対応や日付間の空間的ずれの補正に課題があり、長期観察に十分には対応できていませんでした。加えて、形態の複雑なアストロサイトや活発に動き回るミクログリアといったグリア細胞を含む、多様な細胞種に対応できる汎用的な解析ツールの開発も求められていました。 そこで本研究では、これらの課題を解決するため、汎用的な画像位置合わせ技術と先端的な細胞追跡アルゴリズムを組み合わせ、直感的な画面操作(GUI)を可能とした包括的ソフトウェアツールキット「OPTIC」を開発しました。
2.研究成果
本研究では、カルシウムイメージング解析に必要な一連の作業をまとめて行える包括的なソフトウェア「OPTIC」を開発しました。OPTICは、まず画像から検出された細胞の候補を分類し(図1③)、画像の位置の重ね合わせ(図1④)を行います。そのうえで、最適輸送理論によるROIの対応付け(図1⑤)や、グラフ理論による複数の日にわたる情報の統合(図1⑥)を経て、同じ細胞の長期間にわたる変化の追跡・解析を実現します。 これら一連の工程は、用途に応じた3つの専用GUIアプリケーションとして実装されています。マウスの2光子イメージングデータを用いた検証では、神経細胞、軸索ボタン、アストロサイト、ミクログリアのすべての細胞種で、既存ツールであるCellRegおよびTrackMateを大幅に上回る追跡精度を達成しました。


