マウントサイナイ医科大学との共同研究論文がNatureに採択されました。

Negative feedback control of neuronal activity by microglia

ミクログリアによるニューロン活動の負のフィードバック制御

ミクログリアは脳に常在するマクロファージであり、死にかけているニューロンを取り除き、機能していないシナプスを剪定し、ニューロンの生存を支える因子を産生することで、脳機能の調節を助けている。今回我々は、ミクログリアがマウスの神経活動や、関連する行動反応の重要な調節因子でもあることを示す。ミクログリアは神経活動に応答し、ニューロンの活動を抑制する。ミクログリアを除去すると神経活動とその同期性が上昇し、てんかん発作が引き起こされる。ミクログリアによるニューロン活動の抑制は、非常に脳領域特異的に起こり、細胞外ATP(神経活動に応じて、ニューロンやアストロサイトから放出される)を感知して異化するミクログリアの能力に依存している。ATPはミクログリア突起を誘導し、ATP/ADPを加水分解するミクログリアの細胞表面酵素CD39によりAMPに変換される。その後、ミクログリアや脳の他の細胞上にも発現するCD73によって、AMPはアデノシンへと変換される。ミクログリアによるATPの感知と、続いて起こるミクログリア依存的なアデノシン産生、およびそれが神経細胞のアデノシン受容体A1Rに結合することによる神経活動の抑制は、ニューロンの活動と動物の行動の制御に不可欠である。我々の知見は、ミクログリアにより駆動されるネガティブフィードバック機構は、抑制性ニューロンと同様の働きを持ち、健康と疾患において過剰な活性化から脳を保護するために不可欠であることを示唆している。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32999463/